防衛省、陸自用汎用無人機開発へ
清谷信一(防衛ジャーナリスト)
【まとめ】
・防衛省は2025年度から垂直に離着陸ができる無人機の研究・開発を始める。
・1つの基本型をベースにして攻撃や輸送偵察、監視といった多用途で使用する。
・主たる開発目的は無人機の共通化に係る技術の確立、及び他国への技術的優位性の確保。
防衛省は2025年度から垂直に離着陸ができる無人機の研究・開発を始める。VTOL垂直離着陸型の無人機は陸上自衛隊の部隊による利用を想定する。航続距離や物資などの搭載可能重量は今後の設計で定める。
研究費として25〜27年度分の予算46億円を25年度予算案に計上した。27〜28年度に防衛装備庁や部隊で試験に取り組み、その成果を検証する。検証予算は別途要求される。成果により量産を検討する。
陸上自衛隊の部隊運用上の需要が見込まれる重量150kg未満のVOTL開発・試作する無人機にオープンアーキテクチャ技術、モジュール設計技術及びDX3化(※)による迅速設計、製造技術、並びにこれらの技術をインテグレーションし無人機システムに実装する技術(無人機の共通化に係る技術)を確立し、他国への技術的優位性を確保する、とされている。
※3 DX(Digital Transformation):デジタルトランスフォーメーション
1つの基本型をベースにして攻撃や輸送偵察、監視といった多用途で使用する。無人機は用途が決まっていることが多いが、装備を組み替えて使う。
図)運用構想図
運用は中隊以下の前線部隊を想定しており、ミッションペイロードは30キロ程度、機体は固定翼タイプのVTOL機を想定しており、推進方法は航続距離と静粛性の兼ね合いの観点からエンジンとバッテリーのハイブリッドが有望ではないかと担当者は述べている。
また主たる開発目的は機体よりむしろ、オープンアーキテクチャ技術、モジュール設計技術及びDX3化による迅速設計、製造技術、並びにこれらの技術をインテグレーションし無人機システムに実装する技術(無人機の共通化に係る技術)を確立し、他国への技術的優位性を確保する。
多くの種類の無人機が運用されると、個別に操縦や運用、兵站の負担が大きくなる。できるだけ機体や操作方法、ソフトウェアを共用化して訓練や兵站を極小化することを主眼においていると、担当者は説明する。
トップ写真)米国ElroyAir 社が開発した中型のUAV VTOL 型無人機 CHAPARRAL (防衛省が開発している無人機とは関係ありません。イメージ)
引用)防衛省陸上自衛隊X
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この記事を書いた人
清谷信一防衛ジャーナリスト
防衛ジャーナリスト、作家。1962年生。東海大学工学部卒。軍事関係の専門誌を中心に、総合誌や経済誌、新聞、テレビなどにも寄稿、出演、コメントを行う。08年まで英防衛専門誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー(Jane’s Defence Weekly) 日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関「Kanwa Information Center 」上級顧問。執筆記事はコチラ。
・日本ペンクラブ会員
・東京防衛航空宇宙時評 発行人(Tokyo Defence & Aerospace Review)http://www.tokyo-dar.com/
・European Securty Defence 日本特派員
<著作>
●国防の死角(PHP)
●専守防衛 日本を支配する幻想(祥伝社新書)
●防衛破綻「ガラパゴス化」する自衛隊装備(中公新書ラクレ)
●ル・オタク フランスおたく物語(講談社文庫)
●自衛隊、そして日本の非常識(河出書房新社)
●弱者のための喧嘩術(幻冬舎、アウトロー文庫)
●こんな自衛隊に誰がした!―戦えない「軍隊」を徹底解剖(廣済堂)
●不思議の国の自衛隊―誰がための自衛隊なのか!?(KKベストセラーズ)
●Le OTAKU―フランスおたく(KKベストセラーズ)
など、多数。
<共著>
●軍事を知らずして平和を語るな・石破 茂(KKベストセラーズ)
●すぐわかる国防学 ・林 信吾(角川書店)
●アメリカの落日―「戦争と正義」の正体・日下 公人(廣済堂)
●ポスト団塊世代の日本再建計画・林 信吾(中央公論)
●世界の戦闘機・攻撃機カタログ・日本兵器研究会(三修社)
●現代戦車のテクノロジー ・日本兵器研究会 (三修社)
●間違いだらけの自衛隊兵器カタログ・日本兵器研究会(三修社)
●達人のロンドン案内 ・林 信吾、宮原 克美、友成 純一(徳間書店)
●真・大東亜戦争(全17巻)・林信吾(KKベストセラーズ)
●熱砂の旭日旗―パレスチナ挺身作戦(全2巻)・林信吾(経済界)
その他多数。
<監訳>
●ボーイングvsエアバス―旅客機メーカーの栄光と挫折・マシュー・リーン(三修社)
●SASセキュリティ・ハンドブック・アンドルー ケイン、ネイル ハンソン(原書房)
●太平洋大戦争―開戦16年前に書かれた驚異の架空戦記・H.C. バイウォーター(コスミックインターナショナル)
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