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.国際,IT/メディア  投稿日:2015/6/30

[朴斗鎮]【知っているようで知らない池上彰氏】~ネトウヨ並みの主張垂れ流し~


朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

執筆記事プロフィール

6月5日に放送されたフジテレビの金曜プレミアム「池上彰緊急スペシャル!」での韓国人の街頭インタビューで、実際の発言とはまったく異なる内容の字幕がつけられていた問題でフジテレビが謝罪した。制作側の問題点については、Japan In-depth編集長の安倍宏行氏が6月29日付で的確に指摘したとおりだ。

しかし、池上彰氏には問題がなかったのか。池上氏は朝日新聞の取材に「私の名前がついた番組のなかで起きたことであり、申し訳ないことだと責任を感じています。番組スタッフ全体でのチェックが不十分でした」と話したというが、その内容についてはあまり反省していないようだ。この番組での池上氏の主張は、韓国に対する研究がずさんなだけでなく反韓感情もにじみ出ていた。

たとえば、「日本が何かするたびに韓国が抗議をする」「日本をすごく意識している。それは意識している。すごく意識している。一挙手一投足を意識して何かを言ってくる」などと語り、節々で反韓を煽っていた。

そして「なぜ日韓首脳会談が行われていないのか」と問いかけ、「朴槿恵大統領は政権が代わってすぐにこんなことをいった」「日本と韓国の加害者と被害者という歴史的立場は1000年の歴史が流れても変わることはない」と。この朴大統領の言葉を紹介した後、それをあげつらい「だったら仲良くなれないじゃないの」とたたみかけ「就任当初は親日と思われていたが実は反日だ」と決めつけ、日韓関係悪化の責任がすべて朴槿恵大統領にあるかのように語った。はたしてそうだったのか?

池上氏は朴大統領のこの発言がどのような経緯で出てきたのかについては関心すら寄せていない。だからこの発言のキッカケとなる朴槿恵大統領就任式時における麻生太郎副総理の非礼発言については触れないのだ。

2013年2月25日に麻生副総理は朴大統領と面会した。この面会では挨拶の言葉を交わした後、朴大統領が先にこう述べた。「韓日間の真の友好関係構築のために歴史を直視し、過去の傷がこれ以上悪化せず治癒するようお互い努力しましよう」と。

すると、麻生副総理が突然、米国の南北戦争を取り上げた。「米国を見てほしい。米国は南と北が分かれて激しく戦った。しかし南北戦争をめぐり北部の学校では相変わらず“市民戦争”と表現するところがある一方、南部では“北部の侵略”と教える。このように同じ国、民族でも歴史認識は一致しないものだ。異なる国の間ではなおさらそうだ。日韓関係も同じだ。それを前提に歴史認識を論じるべきではないだろうか」と。

奴隷制廃止をめぐり繰り広げた内戦と植民地支配のための侵略行為を同一視する詭弁だった。その瞬間、朴大統領の表情は険しくなったという。麻生副総理がお祝いを述べる席でなぜこうした発言を行ったのか、その意図はわからない。通常の日本の慣習では考えられないことだ。

韓国政府当局者は「麻生副総理は就任祝賀使節ではなく、あたかも『日本の歴史観は韓国とは違うということを韓国が先に認めてこそ、対話も可能だ』と訓戒しに来たようだ」と伝えた(2013年04月23日中央日報日本語版)。

朴大統領を不快にさせた出来事はそれだけではない。朴大統領就任式参加直前の2月21日、麻生副総理はわざわざ靖国を参拝したのである。就任式のお祝いに行く直前に麻生氏が相手が嫌がるこうした行為になぜ出たのか?これも分からない。この参拝は朴大統領に不快感を与えていたが、麻生氏の「米国の南北戦争発言」でそれは決定的となった。これで朴大統領の「歴史認識で妥協しない」との決意が固まったという。そしてこのことが、貫例となっていた「訪日取り消しに繋がる決定的な理由になった」(韓日情報筋)のである。朴大統領が就任した日から韓日関係は最初のボタンを掛け違えたといえる。

これに対するリアクションは、その後の年3月1日に起きた。日本植民地時代の1919年に韓国で起きた「3・1独立運動」の記念式典での演説で朴大統領は、「加害者と被害者という歴史的立場は1000年の歴史が流れても変わることはない」との演説を行い、歴史認識問題での非妥協的立場を表明したのである。物事の流れに一方的なものはない。その正否はさておき、日韓関係にかかわる重大事を語るならば、少なくとも日本側の韓国に対する「非礼」にも言及すべきではないだろうか。

池上氏の“語り”を聞いていると「博学」で滑らかなようだが「知っているようで知らない」ことが多い。例えば過去にも「大韓航空爆破事件」で1983年のソ連戦闘機による撃墜事件と1987年の「金賢姫による爆破事件」を混同していたことがある。それ以外にも不正確な事例は多くある。

私もテレビ局の要請で、何度か彼の北朝鮮部門の台本を監修したことがあるが、正確さに欠けていた。それだから「韓国は自ら戦って国をつくったのではなくて、日本が戦争に負けて、朝鮮半島から引き揚げた後に、国がつくられたわけでしょ。ある種、棚からボタモチ式に国ができちゃった」なというネット右翼が語る主張を平気で公共の電波に流すことになる。

(記事内に貼られているリンクを見るには http://japan-indepth.jp 上でお読みください)

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