[Japan In-depth 編集部]【届け、施設・里親家庭出身者の声】~日米若者8人が自らの経験語る~
Japan In-depth 編集部 (Emi)
虐待や貧困などによって実の親のもとで暮らすことが出来ず、施設や里親の家庭で育つ子どもたちのことを、社会はどう見るだろうか?実際にそういった環境で育った若者たちは、自分たちに「レッテル」が貼られていると感じるという。そのレッテルとは、日本では「かわいそうな子」、そしてアメリカでは「悪い子」。そんなイメージを変えていきたいと、日本とアメリカの若者たちが共に活動を始めている。6日、東京都新宿区で開かれた、アメリカのNPO団体・IFCA (International Foster Care Alliance:イフカ)のイベントには、児童福祉に携わる人々など70人が集まった。IFCAとは、児童福祉システムの向上の為に当事者の声を発信している団体で、東京とワシントン州シアトルに事務所を置き、日米両国の児童福祉に関する情報交換など様々な活動に取り組んでいる。この日は、アメリカと日本からそれぞれ4人ずつ、施設や里親家庭で育った経験を持つ若者たちが参加し、自らの体験や制度の問題点などについて発表した。
アメリカの里親家庭で育ったバレリー・スケルトンさんは、里親家庭や施設に入る子どもたちがどのような感情を抱えているのか考えて欲しいと、参加者とアクティビティーに臨んだ。まず、小さな紙に「子どもの頃大事にしていたもの」と「誰にも知られたくない秘密」を書く。そしてそれらを丸め、携帯電話や時計など今身に付けている貴重品と一緒に黒いゴミ袋に入れて会場のスタッフに手渡す。
当然、多くの人が不安感や怒りを抱くが、それはバレリーさんが13歳の時、突然里親家庭に入居した時の状況を想像させるものだ。大切な物や自分に関する情報を、何の説明もなく奪われることが、子どもの心にどのような傷を残すのか・・・それを想像し、実の親の家庭がどのような状況であっても、子どもたちは出来るだけ苦痛のない方法で保護されるべきだと訴えた。
日本の若者たちも、「渡米プロジェクト」に参加するなどして、アメリカの児童擁護について学んでいる。この団体に参加して2年になるという星子良枝さんは、アメリカで導入されている里親家庭支援の仕組みについて語った。ベテランの里親を中心に地域の複数の里親家庭が支え合うというシステムは、「日本でも取り入れられる」と力を込めた。そんな星子さんも、施設や里親家庭で育ち、実の両親のことを知らない。自分の生い立ちをオープンに話し、同じ境遇の子ども達の為に活動に参加しようと思うまでには時間が掛かったという。「ここでこんな風に話していることも数年前は信じられなかった」と胸の内を明かした。
このほか会場では、日本の児童福祉の問題点として、施設を出る18歳から成人するまでの間の「空白の2年」が挙げられた。日本の若者が「保証人がおらず、クレジットカードが作れなかった」「部屋を借りる時に困った」などといった体験を語った一方、アメリカの若者たちからは、当事者らが声をあげ、施設を出た後の支援制度が改正されたことが紹介された。
IFCAでは今後、厚生労働省などに児童福祉に関する提案を盛り込んだ要望書を提出することも予定している。自身が社会的擁護を受けてきた「当事者」の声は、日本の児童福祉を子どもたちにとってより良いものにしていく為の、大きな力になるはずだ。
文中画像上:バレリー・スケルトンさん/下:星子良枝さん