[Japan In-depthチャンネルニコ生公式放送リポート]【安保法案成立、メディアの報道ぶりを徹底検証!】~日本報道検証機構代表理事楊井人文氏に聞く~
Japan In-depth 編集部(Sana)
今月19日、参院本会議で安全保障関連法案が可決・成立した。国会前のデモの様子がメディアにより大きく取り上げられた一方で、国会での議論は深まったとは言えない。今回のJapan In-depthと日本報道検証機構(GoHoo)とのコラボ企画では、安保法案に関する各メディアの報道ぶりを振り返りながら、従来の憲法9条を巡る議論との整合性などについて、代表理事の楊井人文氏と共に考えた。まずは各メディアによる本法案の取り上げ方についての話題になった。楊井氏は、東京新聞が、野党民主党議員の「本法案は日本の『先制攻撃』を容認するものなのではないか」という指摘を念頭に「先制攻撃戦略が飛び出した」と報じたことを例にあげ、「政治家の賛成/反対意見の中で自分たちの都合のいい文言を、とにかく引用していたのではないか」と指摘した。
6月の衆院憲法審査会において招致された3人の憲法学者が揃って、安保法制が違憲であるという見解を示したことは記憶に新しいが、憲法学者の多くが本法案に反対しているのは事実である。朝日デジタル公表のデータに基づいてGoHooが調査したところ、実名を公表した憲法学者85人のなかで、72人が本法案を違憲である、及び違憲の可能性があると指摘しているという。
ではなぜ憲法学者は本法案を違憲とみなしているのか。本アンケートでは、「自衛隊が違憲かどうか」という質問も問われているが、上記の85人のうち42人が、「自衛隊は違憲である」と述べていることがわかった。
「確かに、多くの憲法学者は安保法案に反対だった。しかし彼らの大半は『そもそも自衛隊は違憲である』と考え、『自衛隊は合憲』とする学者の間では安保法案に対する考え方が割れている。今回の法案が熟議されなかった要因は、なぜこのような様々な立場の違いがあるのかを理解した上で、どの立場を支持するのかという議論が、国会や国民の間でなされてなかったからなのではないか」と楊井氏は述べ、より多面的な議論を行うための材料を提供しなかったメディアの姿勢を批判した。
警察予備隊の発足時や、湾岸戦争における国連平和維持活動への自衛隊の参画(PKO法)、周辺事態法・新ガイドラインの成立時など、憲法9条に関わる審議はこれまでも幾度となく行われてきた。日本の憲法が世界でも稀有なものとされる理由は、憲法9条第2項において「陸海空軍その他戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と、「戦力」を持つことを禁じているところにある。これまでの政府見解では、自衛隊は「Self Defense Force」とされ、「戦力ではない」と言われてきた。「では自衛隊は何者なのか、ということがわからない」とサブMCの小林は発言した。
今回の安保法案に反対する意見で多かったのは「従来の政府見解と異なる解釈をしている」、「解釈改憲である」、「集団的自衛権はよろしくない」というものであり、「憲法9条2項の下で、自衛隊と個別的自衛権を容認する解釈改憲の是非」に関しては、法案に反対するメディアでさえ触れなかった。「国会審議も不明瞭で、国民の間でも今ひとつ明快な議論が行われなかったように感じるが、議論の核心部分を示さなかったメディアの報道の仕方に問題があったのではないか」と安倍編集長は述べた。
(この記事は、ニコ生【Japan In-depthチャンネル】2015年9月23日放送を要約したものです。ニコ生【Japan In-depthチャンネル】))