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.JID,.政治  投稿日:2015/11/6

[Japan In-depthチャンネルニコ生公式放送リポート]【「安保法案、違憲問題を考える」】~法哲学者井上達夫東大教授に聞く~


 

2015年10月21日放送

Japan In-depth 編集部(Sana)

Japan In-depthチャンネルでも人気の日本報道検証機構(GoHoo)とのコラボ企画。今回は、機構代表楊井人文氏と、法哲学者であり、東京大学大学院法学政治学研究科教授の井上達夫氏をゲストに、安保法案はどうして違憲なのか、また繰り返される「解釈改憲」をどう捉えるべきなのかについて議論した。

前回のGoHooとのコラボ放送では、「安保法案に賛成か反対か」という一面的な報道しか行わなかったメディアのあり方が問題として挙げられ、安保法案を違憲と考える人々のなかでも、違憲とする理由に違いがあるという事実を意識し、より多面的な議論をするべきであると結ばれた。

安倍編集長から前回の放送内容についての考えを聞かれた井上氏は、朝日新聞が行った200人の憲法学者へのアンケートについて触れ、「『自衛隊や安保法案は、専守防衛のためであったとしても違憲である』と考える“原理主義的護憲派”を安保法案反対派から除いた上で、『自衛隊・安保法案は専守防衛の枠内なら合憲』という“修正主義的護憲派”19人のうち、今回の安保法案は(集団的自衛権を解禁にするという点で)違憲だ」と考える人が8人だったという事実を、メディアが伝えるべきだった。『非武装中立』という非現実的な違憲を掲げる“原理主義的護憲派”を、安保法案反対の母数に入れること自体が、集団的自衛権を憲法の観点から是認するべきかどうかという議論を妨げることにつながった」と話した。

井上氏は、20年来「9条削除」を訴えている。その真意について、井上氏は「非武装中立で居続けるのか、集団的自衛権の行使を認めるのかという安全保障の基本戦略は、憲法で完結してしまってはいけない。それらは、仮に民主的プロセスを踏んで一度結論が出たとしても、時々の情勢に応じて再吟味されるべき問題であり、民主主義的な立法過程を踏んで行うべき議論だ。安全保障に関して憲法に入れるべきことは、『戦力は文民統制のもとで保持すること』、『開戦は、国会の承認を必要とすること』など、条件付き制約である。最も恐るべきことは、自衛隊という紛れもない戦力を持ちながら、世界最大の軍事力を持つアメリカと同盟を結びながら、『非武装』を唱える9条は変えず、憲法外で自衛隊と日米安保同盟の問題が肥大化することである」と述べた。

なぜ憲法の形骸化が進むのか。楊井氏は「護憲派=平和主義者、改憲派=軍国主義者というレッテルを貼って互いに敵視する構造になっていて、安全保障に関する意見で双方に大きな違いはないはずなのに両者が敵味方と意識して対話をしようとしない。また解釈改憲という手段を政権が選択した理由を問われた高村正彦自民党副総裁が、「(国民投票によって国民に憲法改正の真意を問うには)まだ機が熟していない」と答えたように、政権が国民を信用していない。メディアも 両論併記するだけで直接討論の場を提供しない」と述べた。

楊井氏の意見を受け、井上氏も「政治が極めて敵対的で妥協をしない」ことが大きな問題であると述べ、「確実に自分たちの都合にあった結果が出ることが見込めない限り、国民投票に踏み切らない。勝つためのプロセスしか考えない。これでは、フェアな政治的闘争とは言えない。立憲主義・法の支配のもと、ルールに則って負けるリスクを負うことも考え、政治は行われなければならない」と見解を述べた。

今後、安全保障・憲法改正についてどのように考えていくべきか。井上氏は「戦力を持っている以上、改憲はされるべきだ。本物の立憲主義を育てるためにも、国民は主権者として、政治家になおざりにされている現状に危機感を持つべきであり、また徴兵制という縛りをかけることで、安全保障が自衛隊の問題でなく、自分たちの身に迫る問題であるということを自覚するべきだ」と国民が考え方を変えるべきであることを指摘した。

また楊井氏が「憲法96条により、改憲のハードルが高すぎるから、現実味をもった論議が深まらないという指摘もあるが」と憲法改正要件について問題提起したところ、井上氏は「民主的なプロセスを保証する原理に加え、構造的なマイノリティの人権を護るための人権規定は、都合のいいように変えてはいけない。しかし安全保障など民主的プロセスを一度踏んだとしても、再検討されるべき問題に関しては、憲法マターから外すべきだ」」と答えた。

放送の最後に井上氏は、「これだけは言いたい」と断った上で、「非核三原則というが、これは核をもつアメリカの軍事的傘下に日本がいたからだ。極端な例かもしれないが、佐藤首相が核武装の交渉を試みたと言われているように、安全保障対策を巡って、日本は政治的に交渉しようとする意識を持たなくてはいけない。地理的には、日本は常に軍事攻撃の危険に晒されている」と締めくくった。

(この記事は2015年10月21日放送 を要約したものです。ニコ生【Japan In-depthチャンネル】

※トップ画像:ⓒJapan In-depth 編集部

 

前回のGoHooとのコラボ放送の要約はこちら

[Japan In-depthチャンネルニコ生公式放送リポート]【安保法案成立、メディアの報道ぶりを徹底検証!】~日本報道検証機構代表理事楊井人文氏に聞く~


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