[Japan In-depth編集部]【安保法制早期成立求める声上がる】~中国の脅威に目をつぶるな~
Japan In-depth 編集部 (Mika)
「一体、日本国の安全と日本国民の安全をどこまで真剣に考えているのか、疑わざるを得ない様な議論が散見されます。」こう呼びかけたのは、9月9日、参議院会館にて開かれた緊急セミナー、「平和安全法制の早期成立を求める国民フォーラム」の基調講演を行ったジャーナリストの櫻井よし子氏。平和安全法案の審議が大詰めを迎える中、櫻井氏を含む保守系の有職者が設立した当セミナーでは、法案の速やかな成立を求める要望書の提言を含め、各界からの登壇者数名が、国会議員、賛同人、一般の参加者およそ300名を前に講演した。発表された要望書は後に、菅官房長官に手渡された。
安保法案を一刻も早く成立させねばならない理由を櫻井氏は、「国際情勢をみれば明らかだ」と述べた。9月3日に行われた中国の抗日戦争70年の記念式典での軍事パレードで披露された核兵器やミサイルの様子を例に挙げ、中国の軍事的脅威と、人権や人間の自由を尊重しかねない価値観や国際秩序を守れないその外交姿勢によって起こりうる事態を真剣に危惧するべきだと述べた。
櫻井氏はまた、国際社会の価値観を同じくする友好国は、自国、他国を守る力を蓄える必要性があると強調し、「集団的自衛権は、国連が全ての国に対して認める権利だ」と語ると共に、「日本一国を除く全ての国々が、この権利を行使する準備を整えている」と日本の出遅れを指摘した。その上で、「政治家こそが国民の命と国家の命運に責任を持つ立場であり、全ての国会議員に一日も早く安保法制を成立、可決させてほしい」と櫻井氏は訴えた。
一方、東海大学海洋学部教授の山田吉彦氏は、「決して日本の存立の危機はホルムズ海峡だけではありません」と海洋国家である日本の行く末に懸念を示した。東シナ海や南シナ海に海洋権益を広げようとしている中国の行動に目をつぶってはいけないと強調し、必要不可欠な貿易ルートである南シナ海の安全と平和を守る役割を果たし、AESEAN諸国との関係をしっかり築くことが、日本に求められていると述べた。
そして、航行の安全を守る為の警察力を支えるには圧倒的な防衛力が必要だと示し、「抑止力を持っていない限り、海を守る、警備力を発揮することができない」と締めくくった。
元防衛大臣の森本敏氏は、衆議院の審議が終わり参議院の審議を迎える今も尚、安保法案の支持率が国民の間で広く行き渡っていない理由を振り返った。それは、衆議院の審議の中で同時に行われた憲法審査会の参考人として呼ばれた学者の証言で「違憲」という言葉が出たことからではないかと示し、「全体の流れが憲法問題に集中して衆議院の審議が行われて、よくわからない人は、メディアの報道を通じて、そういうものかとそのことを理解したことが、かなりこの問題を難しくしてきた原因の1つであると思っている。」と述べた。
また、多くの支持団体や組織が、法制に対する組織的反対活動の中身を理解しないで賛同する様子は、部分的にだが70年代の安保闘争に少し似ていると主張し、事態の不適切さと法案の明確化の必要性を強調した。
14日以降に予定されている参議院の審議により事態はどう展開していくのか。採決がずれ込みそうな場合は、自民党は「60日ルール」を使い衆議院で再可決する構えだが、相変わらず抗議デモが国内のあらゆる場所で繰り広げられている。先週行われた世論調査によると、今もおよそ6割以上の人が成立に反対しているという。国民と国会のズレは更に深刻化しそうだ。同法案の早期成立には、さらなる国民の理解が必要なのは言うまでもない。