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.国際  投稿日:2015/12/1

[宮家邦彦]【露にケンカを売ったトルコ大統領の胆力】~ロシア空軍機撃墜事件~


 宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)

「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(11月30日-12月6日)」

執筆記事プロフィールblogWeb

先週11月24日のトルコ空軍F-16によるロシア空軍機撃墜事件にはさすがに驚いた。が、驚いたのは事件発生そのものについてではない。9月末にロシアがシリアで本格的な軍事作戦を開始して以来、関係者の間でこの種の事件が起こることはある程度想定内だったと思うからだ。

筆者が本当に驚いたのはトルコ大統領の「気の強さ」である。いくらロシア軍機の領空侵犯が続き、これまで何度も警告を発していたとはいえ、ロシア軍機撃墜という形であの「プーチンのロシア」に喧嘩を売るのだから、エルドアンという男も大したものだ、とは思う。

今週のハイライトはパリでのCOP21だが、先進国と途上国が何らかの意味のある合意に達する可能性は低い。そもそもこのCOP会議、先進国では一種の信仰的「公理」にも近いものだが、科学的にどこまで正しいかは誰にもわからない。20年後に氷河期が来たらどうするのだろう。

他方、途上国にとってCOP会議は先進国の陰謀でしかない。先進国は化石燃料を燃やすだけ燃やしておいて、途上国が経済成長を始めたら、今度は突然止めろという。この不公平感が解消されない限り、COP会議に大きな進展は望めないのだが、それでも奇跡が起きることを祈ろう。

 

○欧州・ロシア
露土関係が興味深い。28日、トルコ大統領は「今回の事件で我々は本当に悲しんでいる。起きなければ良かったが、起きてしまった。このようなことが再び起きないことを望んでいる」と述べたそうだ。限りなく「遺憾の意」に近いようで、実は、いかなる意味でも「謝罪」ではない。

激怒したに相違ないプーチンは今も「謝罪」を求めているが、近い将来トルコが謝る可能性は低いだろう。この16世紀以来幾度となく戦ってきた露土両帝国のDNAは今も健在、復活しつつあるのか。そうでも考えないと、両国の喧嘩は説明が難しい。当面冷却期間が必要だろう。

 

〇東アジア・大洋州
30日にはIMFがSDR(特別引き出し権)の中に人民元を加えるかどうか議論する。同日は豪州の潜水艦建造計画の期限でもあり、日独仏が契約獲得を狙っている。2日から日本の連立与党の両幹事長が揃って訪中する。

 

〇中東・アフリカ 〇インド亜大陸
多くの首脳がCOP21でパリに集まるが、あまり大きな動きはなさそうだ。

 

〇アメリカ両大陸
ジェブ・ブッシュを含む既存の政治家はかくも不人気なのか。驚くなかれ米共和党のトランプ候補がまだトップランナーでいる。最近では「9/11同時多発テロ事件の際、数千人のイスラム教徒が喝采を叫んだ」との発言が批判されているが、勿論、そのような事実は確認されていない。

他方、同事件が起きた日、北京の英語を喋る中国のインテリ一般市民が「ざまあみろ、米国」と叫んだことを筆者は忘れない。あれほど教育の高い中国人でもそんな暴言を吐くのだから、一部の在米イスラム教徒が感情的発言をしたとしても驚かない。人間とはかくも弱い動物である。

 

今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

※トップ画像:出典 everystockphoto /photographer isa fakirflickr


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