【トルコ、突如イスラム国空爆】〜まさかの外交方針転換、混乱の始まりか?〜
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(7月27日-8月2日)」
今週の注目はトルコ外交だ。これまで米国主導の対シリア・イラク有志連合に一定の距離を保ってきたトルコが先週突如方針を変更、国内空軍基地の使用を有志連合に認めるとともに、自らイスラム国やクルド組織PKKに対し空爆を開始したという。 ちなみに、トルコはNATO条約第4条(加盟国が領土保全、政治的独立、安全が脅かされていると認めた場合協議を要請できる)に基づきNATOに緊急協議を要請した。同条項に基づく会合は過去4回しか開かれていない。トルコ豹変の理由は一体何か。
この方針変更はトルコ外交の敗北を暗示している。従来の同国の対イスラム国宥和政策と対PKK和解政策は事実上失敗したのか。今後トルコ国内に混乱が拡大すれば、地域情勢は新たな次元に突入する。日本では殆ど報じられていないが・・・。
○欧州・ロシア
29日には早速仏外相がイランを訪問する。30日にはOPEC事務局長が訪露し石油市場とイラン問題を議論する。31日には国際格付け機関がギリシャについて判断を下すという。8月1日にはギリシャの対IMF利子支払2億ユーロが期限を迎える。
○東アジア・大洋州
28-30日にトルコ大統領が訪中する。ここでの焦点の一つはタイで捕われ中国に移送されたウイグル人問題だ。トルコは(トルキスタンという観点から)どこまで関与しようとするのか。中国は大迷惑だろう。玄人筋には興味深いテーマなのだが・・・・。
日中関係では27日に局次長級で日中経済パートナーシップ会合がようやく開かれる。日本側は外務省アジア大洋州局審議官のほか、総務、財務、農水、経産、国交、環境省及び金融庁の代表者が参加する。関係改善はゆっくりと進むということか。
○中東・アフリカ
30日にアフガン政府とターリバーンの和平交渉が北京で開かれる。中国は米国の対アフガニスタン関心低下を見込んで着実に影響力の拡大を図っているようだ。一方、27日にEU外交代表がサウジを訪れる。EUからも対イラン関係を説明するのだろう。
この程度でイラン核合意に対するサウジの反発が和らぐとは思えない。一方、サウジ王室も本気でイラン最終合意を潰せるとは思っていないだろう。なお、オバマ大統領は今週ケニヤとエチオピアを訪問する。
○アメリカ両大陸
先週は米国防長官がイスラエル、サウジ、ヨルダン、イラクを訪問した。今週は米国務長官がエジプトを訪問する。こうして有力閣僚を派遣するということは、イラン核問題でこれらの諸国と事前調整がなかったのだろう。やはり今の米外交は実力以下だ。
○インド亜大陸
31日にインドとバングラデシュの領土交換合意実施の期限が来る。今週はこのくらいにしておこう。
いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。