宮崎氏は、貧困地区で子供食堂経営を 「育休」議員の贖罪 その1
岩田太郎(在米ジャーナリスト)
「岩田太郎のアメリカどんつき通信」
イクメン国会議員として高らかに育休宣言した自民党の宮崎謙介衆院議員(35)が、結婚後の複数女性との不倫を認め、議員辞職を表明した。長男を出産したばかりの妻・金子恵美衆院議員(37)に対しては、離婚を勧める声がネットを中心に高まっている。人生そのものがパフォーマンスで、誠意のかけらもないゲス男は、早めに捨ててしまえ、というわけだ。
筆者は、宮崎氏が人として、父親として、夫として、社会人として、そして議員としても失格の、救いようがない人物だとの見解に同意する。離婚は妥当だと思う。もし子供がいなければ、である。
だが子供が生まれた以上、第三者は安易に離婚を勧められない。片方の親が排除された環境と、父母が心と力を合わせて子育てをする環境と、どちらが子供に安心感と信頼感と充足感を与えられるだろうか。また我々は、宮崎氏を断罪できるほど道徳的に完璧で、子供から父親を奪う権利を持つ、欠点のない者だろうか。子供には、出自と実の親を親しく知る権利がある。たとえどんなに欠けや罪のある親でも、子供にとっては自分が誰であるか、何者であるかを納得するためには、絶対に必要な存在なのである。
宮崎氏と金子氏の赤ちゃん―ここでは仮に、父親の名前から一字取って、「謙二君」と呼ばせていただく―が出生時から重い運命を背負ったことは間違いない。将来、「お前の父ちゃんは浮気者の、信頼できないヤツだ」と、いじめられるかも知れない。いじめられなくても、遅かれ早かれ事実を知り、悩むだろう。
宮崎氏の罪は、本当に重い。彼は記者会見で、「保育器に出たり入ったりする息子を見て罪悪感を覚えた」「罪滅ぼしをしたい」と語った。その罪滅ぼしは国政への再出馬だと考えているようだが、反省していない証拠だ。国民は許すまい。
宮崎氏にとっての真の罪滅ぼしは、誠意を示すために公職やメディア露出を伴う仕事から一生遠ざかることだ。そして、自己の利益のために利用しようとした子供に利用されることだ。宮崎氏のために「子育て」が存在するのではなく、宮崎氏が子育てのために、自己を犠牲にしていくということだ。
宮崎氏は自身の育休をぶち上げた際、「男性の育児参加を推進したい。一億総活躍推進のためにも頑張りたい」と語っていた。その必要性を強調するため、「国会議員は本会議に出るという仕事に加えて、朝8時から部会があり、有権者からの陳情の受け付けや夜の会合など、極めて忙しく年5日程度しか休みは取れない」と言明していた。
だが実際には複数の女性と浮気をし、その一人である元女性タレントの宮沢磨由氏(34)に、多い日で一日400件ものLINEのメッセージを送り、宮沢氏の写メを何回も要求していた。
そんな淫靡で優雅な身分を持たない、一般人の現実の育児は戦場だ。親になった方々はお分かりだろうが、子供はすぐに病気をする。すぐ危ないものに触れようとするし、走り回ってケガをする、食事も遅い、身支度ができない、うるさい、そして散らかして回る。そんな下々の親の多くは身分が不安定で、会社に育休を申請しようものならクビか左遷だ。永田町の雲の上のセンセイ方には、一生かかっても理解できまい。
宮崎氏には、その現実をわかってもらうため、「男性育休など夢の夢」という貧困地区に住み、自身の子育てを通して現実に即した子育て問題の解決策を練ってもらおう。皮肉ではなく、「永遠育休」に入らせるのだ。
具体的には、貧困と無関心のなかで上村遼太君(享年13)惨殺事件が起こった川崎市に、住居を移してもらう。多くの働く父親や彼らの会社にとっては机上の空論でしかない、浮ついた政治的言説である男性育休云々より、宮崎氏に私財を投じて子供に居場所や食事を提供する「子供食堂」を設立してもらおう。
( 宮崎氏は、地域で奉仕を 「育休」議員の贖罪 その2 に続く。全2回)
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この記事を書いた人
岩田太郎在米ジャーナリスト
京都市出身の在米ジャーナリスト。米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の訓練を受ける。現在、米国の経済・司法・政治・社会を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』誌などの紙媒体に発表する一方、ウェブメディアにも進出中。研究者としての別の顔も持ち、ハワイの米イースト・ウェスト・センターで連邦奨学生として太平洋諸島研究学を学んだ後、オレゴン大学歴史学部博士課程修了。先住ハワイ人と日本人移民・二世の関係など、「何がネイティブなのか」を法律やメディアの切り口を使い、一次史料で読み解くプロジェクトに取り組んでいる。金融などあらゆる分野の翻訳も手掛ける。昭和38年生まれ。