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.政治  投稿日:2016/4/16

自民ネット候補が公開討論 注目度は?


Japan In-depth 編集部(Emi)

「これは、将来ネット投票は可能か?というトライアルである。」

 自民党が、この夏の参院選に向けて立ち上げた「オープンエントリープロジェクト」のファイナリストたちの公開討論会で、選挙対策副委員長の平井卓也衆議院議員はこう強調した。

 「オープンエントリープロジェクト」は、比例代表候補をインターネット投票で選ぼうという自民党の試み。458人の応募者の中から選ばれたファイナリスト12人がそれぞれ政策を発表し、インターネット上で最も多くの票を得た人を公認候補とする予定だ。二重投票などを防ぐため、投票の際には個人情報の登録が必要。平井議員によると、これまでに1万人ほどが登録しているという。

 ファイナリストの発表から1か月。14日に自民党本部で開催された公開討論会は、ニコニコ動画で生中継され、2万2069人が視聴した。

 ファイナリストは、30〜50代の男女各6人。元国会議員や議員秘書、現職の区議や町議の他、会社員など顔ぶれは多様だ。

 「50年後の日本を考えた時、未来へのストーリーがないことが課題だ。」

 「若い世代が活躍するには飛び級で多様な能力を開花させるべき。」

 討論は、少子高齢化やひとり親家庭への支援など様々なテーマについてそれぞれが答えるかたちでスタートした。その中で、ニコ生でのコメントも多く、長い時間を割いたのが、「今後の防衛・安全保障」や「憲法改正」についてである。

 防衛・安全保障に関しては、元国会議員の松田学氏らファイナリストのほとんどが「日米関係の強化」を挙げたほか、港区議会議員の柳澤亜紀氏は「自国の軍事力強化が必要」、会社員の中村豪志氏は「国際社会の安定が必要。」とした。

 議論の最中には、ニコ生を活用した討論会らしく、「米大統領選でのトランプ氏の発言をどう思うか?」など寄せられたコメントに対し、その場で会社員の土屋美和氏が「トランプ氏が大統領になると日本が独り立ちしなくてはならない。もうしばらく日米同盟は必要。」などと意見を述べる場面もあった。

 また憲法改正については、衆議院議員秘書の荻野浩次郎氏が「自民党の党是であり、質問自体愚問である。」としたほか、作家の伊藤洋介氏が「ヨーロッパなどでは頻繁に改正している。」とするなど改正に前向きな意見が目立った。

 「時代に即したものに変えるのは当たり前である。」とした大学院特任教授の中川幸司氏に対しては、自らを「オタク」と称していることもあり、発言中に多くのコメントが寄せられた。好きなアニメについて話が及ぶと、ニコ生の画面には「俺たちの代表だ!」とコメントが流れた。

 決められたテーマについての議論が終わると、それぞれが得意とする分野等について他のファイナリストに質問し、意見を交わした。

 衆議院議員秘書の浅田恵理氏は他のファイナリストの女性に対し、「女性の政治進出についてどう思うか?」と問いかけた。 

 福島県只見町議会議員の石橋明日香氏は「積極的に登用すべき。」とし、銀行員の廣瀬真木氏は、「無理やりにでも女性議員の人数の目標を掲げ、枠を作るべき。」と一定比率を女性に割り当てる「クオータ制」の導入にも意欲を見せた。

 この他、一般社団法人代表理事の難波美智代氏は「社会保障制度改革」について、会社役員の生田與克氏は「東シナ海の海上防衛」について他のファイナリストに問題提起した。

 3時間に及ぶ公開討論の間には、ファイナリストの発言に対して「勉強していない」「政治家に向いていない」などと辛辣なコメントも多かった。通常の公開討論会と比べ、自分の発言への反応がダイレクトに寄せられるのは、ネットを利用した今回のプロジェクトの特徴である。

 ファイナリストの一人から「オープンエントリーをもっと盛り上げないといけない。」との声が上がるなど、プロジェクトへの注目度は高いとは言えない。しかし、若い世代の投票率を上げる為にも、選挙の際にどのようにインターネットを活用するかは議論を進めるべき課題である。5月9日までの投票期間にどれだけの人が参加し、選ばれた候補者が参院選でどのような結果を残すのか、注目したい。

写真:(c)Japan In-depth編集部

 


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