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.社会  投稿日:2014/2/3

[蟹瀬誠一]マスコミが流すあやふやな情報〜東京都知事選で今最も必要なのはファクト・チェック(事実確認)ではないか?候補者にまつわる様々な話は本当か?


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蟹瀬誠一(国際ジャーナリスト/明治大学国際日本学部教授)

執筆記事プロフィールWebsiteTwitter

時としてマスコミはあやふやな情報を流す。

日本のマスコミだけではない。米国の“一流”と称されるメディアも嘘を書く。確信犯というよりは未確認情報をそのまま事実のように報道してしまったという場合が多いのだが、結果は立派なウソツキである。それを信じ込まされた読者や視聴者、そして選挙の場合は有権者、はいい迷惑だ。

1993年5月に起きたクリントン米大統領散髪事件はその典型といっていいだろう。その時、大統領専用機「エアーフォース・ワン」は予定の離陸時間を過ぎてもロサンゼルス国際空港の滑走路に止まっていた。機内で大統領がハリウッドの人気ヘアースタイリストに散髪をしてもらっていたからだ。しかも料金は日本円にしておよそ2万円。これを知ったニューヨークタイムス紙をはじめとする全米のメディアは、大統領の散髪の為に4本の滑走路が閉鎖されたためフライトが上空で待機を余儀なくされ多数の乗客が深刻な迷惑を被ったと一斉に伝えた。

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それはそうだろう。庶民派として知られていたクリントン大統領が混雑するロス空港のど真ん中で高額を支払って散髪していたというのだからマスコミが飛びつかないわけはない。「誰が散髪代を支払ったんだ」なんていう馬鹿げた質問にまでホワイトハウスの報道官は対応に右往左往した。

しかし、ひとりのジャーナリストがこの報道に疑問を持った。当時ニューヨーク・ニューズディ紙記者だったグレン・ケスラーだ。彼は情報自由法(情報公開法)に基づいて連邦航空局から当日の詳細な記録を入手した。その結果、実際にはわずか1便がそれも予定より2分遅れただけだったことが分かった。他のメディアは人材も資金力もあったにも拘わらず、事実確認を怠って空港でのから騒ぎを「面白話」を伝えただけだった。

現在、ケスラーはワシントンポスト紙の”The Fact Checker”(事実確認)というブログ記事で誤った報道に目を光らせている。判断基準の単位は「ピノキオ」。ご存じイタリア人作家カルロ・コッローディの童話『ピノキオの冒険』で出てくる嘘をつくと鼻が伸びる人形のことである。「1ピノキオ」から「4ピノキオ」まであり、可愛いピノキオのマークが増えるほど事実ではない内容が多いというわけだ。

東京都知事選でも今最も必要なのはファクト・チェック(事実確認)ではないか。候補者にまつわる様々な話は本当か。金も名誉もありしかも年齢が70歳を超えた細川・小泉元総理がなぜわざわざ都知事選に登場したのか。日本の先行きを憂えた末での決断ではなかったのか。原発なしでも日本は成長出来るのか、出来ないのか。限られた時間だが、有権者にはいったい誰が一番ピノキオマークが多いのか出来る限り検討してから一票を投じてほしい。

 

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