[蟹瀬誠一]特定秘密保護法案への批判だけでなく、情報公開法の強化を〜日本のメディアが見習うべき「権力者が不都合な情報を隠ぺいすること」を防止するための意志とメカニズムのありかた
蟹瀬誠一(国際ジャーナリスト/明治大学国際日本学部教授)
どうして日本のマスコミはこうも一辺倒なのだろう。
特定秘密保護法案にはこぞって大反対である。報道の自由や国民の知る権利が脅かされる恐れがあるというのは極めて正論なのだが、ではどのように周辺国やテロからの脅威に対して対処していくのかという議論が少しぐらいあってもいいのではないか。それともそんなことは政府に任せておけばいいというのだろうか。
1970年代初頭に米大統領補佐官だったキッシンジャーが日本の頭越しに中国と秘密交渉をした頃からずっと「日本は秘密を守れない」ということが米国政府内ではなかば常識となっている。人間関係でも秘密を守れない奴は信頼されない。中国の露骨な脅威と東京オリンピックに向けてのテロ対策を考えると、安倍首相としては日米間のインテリジェンス協力をなんとしても強化したいと思うのは当然だろう。
ようやく日本版NSC(国家安全保障会議)が来年の4月からスタートすることになったが、防諜体制が不備のままでは「あんたのところは秘密がもれるからなあ」といわれてしまう。というわけで秘密保護法の国会承認を急いているわけだ。日本に比べて米国の法律は国家機密漏洩に対して厳しい。しかしその一方で国民の知る権利を守るために情報自由法が整備されてきた歴史があることも見落としてはいけない。
日本のメディアも、秘密保護法を「天下の悪法」と袋叩きにするだけでなく、2001年4月に施行された情報公開法の強化を求めるべきだろう。例えば、米国の情報自由法では知る権利が根本にあるのに対し、日本の情報公開法では知る権利という言葉が明記されていない。開示拒否範囲も米国では国家安全保障、外交、プライバシー情報と規定されているのに対し、日本では不明確なままだ。この際、本格的な日本版NSA(国家安全保障アーカイブ)もつくったらどうか。
名前だけ見るとおどろおどろしい国家機関のようだが、米国のNSAは政府とまったく無関係な非営利団体で、ジャーナリストや研究者などが情報自由法によって入手した公文書などを収集・分析・出版している。ジャーナリストにとっても国民にとっても頼もしい民主主義の砦だ。私も米国メディアの記者時代にその素晴らしさを実感した。ホワイトハウスと目と鼻の先にあるジョージ・ワシントン大学のキャンパス内に在るというのも国家権力の「番犬」として象徴的だ。
権力者が地位を利用して不都合な情報を隠ぺいすることを防止するのだという意思とメカニズムがそこに見てとれる。日本のマスコミも見習ったらどうか。
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