.国際  投稿日:2018/5/5

フジモリ家内紛収束へ 姉弟仲直り?

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山崎真二(時事通信社元外信部長)

【まとめ】

フジモリ元大統領の長女ケイコ氏と次男ケンジ氏、対立に終止符の見通し。

父フジモリ元大統領が仲裁に入り、かつ姉弟は取引をしたとの憶測飛ぶ。

フジモリ氏、政界からの完全引退を表明。訪日の意向も。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみが記載されることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttp://japan-indepth.jp/?p=39850でお読みください。】

 

ペルーのフジモリ元大統領の長女ケイコ氏と次男ケンジ氏の骨肉の争いに終止符が打たれる気配が出ている。

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▲写真 フジモリ元大統領 出典:photo by Staff Sergeant Karen L. Sanders, United States Air Force

 

■ 一時は敵対関係に発展

二人の対立が本格化したのは、昨年暮れ。当時のクチンスキ・ペルー大統領の罷免決議案が、ケイコ氏が党首を務める最大野党「フエルサ・ポプラル」(FP)主導で国会に提出された際、ケンジ氏らの国会議員が造反したため、同決議案は不成立となった。

事前にケンジ議員らが獄中にいたフジモリ元大統領の恩赦と引き換えに決議案採決で棄権する密約をクチンスキ側とかわしていたとの説が広まった。ケイコ氏は弟にメンツをつぶされた形となり、その後、ケンジ氏をFPから追放した。

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▲写真 クチンスキ・ペルー大統領(右) 出典:flickr Ministerio de Relaciones Exteriore

さらに二人の対立を敵対関係とさえ言われるほどにエスカレートさせたのは、今年3月の隠し撮りビデオ事件。クチンスキ前大統領に対する2回目の罷免決議案が提出された際、ケンジ議員らが罷免阻止を狙った買収工作を行っている様子をケイコ派が隠し撮りしたビデオを公開、これが前大統領辞任の直接のきっかけとなった。ケンジ氏は姉の行動を「隠し撮りという卑劣な行為」と激しく非難、報復さえを示唆した。

姉弟の関係はさらに険悪化の様相を呈する。ケイコ氏が2011年の大統領選挙の際、ブラジルの建設大手から不正献金を受け取ったとされる疑惑が伝えられる中、ケンジ氏は検察に全面協力し、「姉に関する重大証言を行う」と“爆弾発言”したのだ。「ケンジ氏の証言次第ではケイコ氏の政治生命が終わるかも」(ペルーのテレビ放送「パナアメリカーナ」)との憶測も流れた。

 

■ ケンジ氏の姉擁護発言で急展開

ペルー政界の目がケンジ氏の証言に注がれたのは当然だろう。ところが、ケンジ氏は「姉とブラジルの建設会社の関係については知らない」と姉を擁護する発言をした。

このケンジ氏の豹変ぶりについてペルーのメディアの間では「二人が取り引きをしたのではないか」との見方が広まった。ケンジ氏は買収工作をしたとされる疑惑について国会で特別調査の対象になっている。国会では、ケンジ氏の議員資格はく奪を視野に調査が進行中だ。こうした状況下で「最大野党のケイコ氏のFPの動向次第ではケンジ氏は議員資格を失い、2021年の大統領選出馬を目指すケンジ氏には決定的な打撃となるため、姉擁護の発言をするのが得策と判断したのではないか」(リマの有力政治アナリスト)との説が浮上した。

ケンジ氏は今年1月のペルーの各種世論調査では、2021年の大統領選の最有力候補として姉を上回る支持率を誇示していた。しかし、隠し撮りビデオ事件が明るみに出てから人気が急落。最新の世論調査ではケイコ氏を下回る結果となっている。ケンジ氏がこれ以上、姉とケンカするのはマイナス、と判断したとしても不思議ではない。

 

■ 父親フジモリ元大統領が二人を説得

ケンジ氏の豹変について、ペルーの有力紙「ラレプブリカ」は「父親であるフジモリ元大統領が二人の仲裁に入った」と報じている。同紙によれば「元大統領は二人がケンカを続けても、何も得ることがなく、得られるのはフジモリスモ(フジモリ主義)の消滅だ」と仲直りを説得したという。

フジモリ元大統領は昨年暮れの恩赦後、政治的発言を控えていたが、今年3月「私は政界から完全に引退する」と表明。かつては、ケンジ氏を支持する発言が多かった元大統領だが、最近、肺に腫瘍が見つかるなど、体調がすぐれず入退院を繰り返している。

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▲写真 フジモリ前大統領(2008年) 出典:photo by Iamtheboo

さらに、政権担当時の1990年代の秘密部隊による農民虐殺事件強制的避妊手術命令などで、訴追される可能性も取りざたされ、弱気になっていると伝えられる。

フジモリ家に極めて近い筋によれば、フジモリ氏自身は病気の治療や日本にいる親族や日本人の妻と会うことを強く望んでおり、訴追の可能性がなくなれば、訪日する意向を持っているという。同筋は「アルベルト(フジモリ元大統領)は日本とペルーの二重国籍を持っているし、恩赦の結果、国際刑事警察機構(インターポール)から追われることもなくなったので、日本に長く滞在するかもしれない」と述べている。

トップ画像:フジモリケイコ氏(左)とフジモリケンジ氏(右)flickr : Congreso de la República del Perú flickr : Congreso de la República del Perú

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この記事を書いた人
山崎真二時事通信社元外信部長

 

南米特派員(ペルー駐在)、ニューデリー特派員、ニューヨーク支局長などを歴任。2008年2月から2017年3月まで山形大教授、現在は山形大客員教授。

山崎真二

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