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.国際  投稿日:2014/4/1

[宮家邦彦]<ポスト冷戦時代の終焉>中国と韓国のプロパガンダ活動が予想以上に浸透するフランス[連載23]外交・安保カレンダー(2014年3月31日-4月6日)


宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)

執筆記事プロフィールblogWeb

 

今週の原稿は到着直後のパリで書いている。ここに来るのは十年ぶりだが、ドゴール空港からセーヌ川のほとりまで、この街はあまり変わっていないなぁ、というのが第一印象だ。最も驚いたのは、今回パリでインターネット接続に苦労しなかったことだ。さすがのフランスも米国主導のサイバー革命の波には抗し切れなかったのだろう。

フランスに来てもう一つ驚いたことは、中国と韓国のプロパガンダ活動が予想以上に浸透していたことだ。詳しく聞いてみると、中韓の努力もさることながら、どうやらフランス知識人の「左傾化」傾向によるところが大きいようだ。考えてみれば、現政権は社会党であり、この欧州の大国ではまだまだ「左派」の声が強いことを痛感させられた。

それでは、フランス知識人が皆「親中派」なのかといえば、必ずしもそうではない。尖閣、靖国、慰安婦などの問題で日本に厳しいことを言う割には、基本的な事実関係を正確には理解していない。この国の人々はロジックに強いのかと思ったが、実際には意外に底の浅い先入観に引っ張られているようだ。

それでも中国に対する関心は非常に高い。偶然ながら、中国の習近平国家主席が欧州諸国を歴訪しており、31日はEU本部で首脳会談、4月1日にはベルギーの大学で演説を行う。本日はパリの学生やジャーナリストたちと懇談する機会があったが、経済・投資を中心に、彼らの対中関心は予想以上だった。

学生たちには、ウクライナ危機がポスト冷戦時代の終焉を意味し、現状維持勢力であるEUと日本は、欧州とアジアにおいて力による現状変更を認めてはならないこと、世界各地で現状変更勢力の冒険を抑止するため、今後は日本と欧米、特にフランスとの安全保障面での協力を深めていく必要があることを強調した。

欧州には4月8日まで滞在する予定なので、来週も欧州からの報告となりそうだ。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

 

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