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.国際  投稿日:2021/11/9

中国共産党100年史とアメリカ その1 米中はやはり最大の敵同士か


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

 【まとめ】

・中国を率いる中国共産党は結党100周年を迎えた。

・米中間の価値観の違いが互いの敵対視の基盤となっている。

・米中関係は、現状は激突であり、今後の展望も激しい対立や競合が見込まれる。

 

中国共産党は2021年7月1日、結党100周年を祝った。 

1921年7月、上海のフランス租界の小さな家で、そして川の上の小さな船で、毛沢東はじめ10数人が秘密裡に集まり、新たな政党の結成を宣言した。

それからちょうど100年である。

その政党はいまや中華人民共和国として中国全土14億人もの国民を統治する。政党がすなわち国家なのである。

対外的にも中国共産党政権は世界第二の経済大国、そしてアメリカに迫る軍事強国として膨張し、既存の国際秩序を揺るがす。

私自身、この中国共産党政権とは少なくとも4分の1世紀、直接間接に触れて、その動きを考察してきた。新聞記者として、さらには研究者として、中国に実際に住んだ時期を含めてこの中国ウォッチは継続して25年ほどとなる。

中国の動きにジャーナリストとして初めて直接にかかわったのは1997年7月、香港返還の際だった。香港での取材で中国側の当事者多数と顔を合わせ、その言動を目撃した。その翌年からは産経新聞中国総局長として北京に駐在した。

以後の歳月は主としてアメリカの首都ワシントンを拠点に、中国の動向を追ってきた。この間も中国側の多様な人物、あるいは多様な政策に触れてきた。

こうした自分の中国観察体験を踏まえ、中国共産党の長い歴史のうち、そのアメリカとの関係に光をあててみたい。中国共産党が100年の歴史でアメリカをどう位置づけ、どうかかわってきたのか、の論考である。

同時にこの考察では当然ながらアメリカが中国共産党にどのように関与し、どう敵対し、競合してきたのか、という諸点を報告したい。

前述のように長い年月、アメリカの首都ワシントンを拠点に米中関係を追ってきたという自分自身の視座からすれば、「中国共産党の100年の歴史を振り返る」という巨大なテーマでも、同共産党とのアメリカとのかかわりに焦点をしぼっての論考が私としては最も適切だと思えるからである。

結党からの100年目の中国共産党にとって、現在の最大の敵はアメリカであることは明白だろう。アメリカも中国を最大の競合相手、潜在的な敵とみて対決の構えを辞さない。

トランプ前政権からバイデン現政権にかけて、米中対立は鮮明となった。中国がアメリカ主導の戦後の国際秩序を覆すかのようにアメリカにチャレンジする構図も明確である。

▲写真 ホワイトハウスで記者会見をするバイデン大統領(2021年11月6日) 出典:Photo by Samuel Corum/Getty Images

新型コロナウイルスをめぐるアメリカ側の中国の隠蔽への糾弾、そして責任の追及はあまりにも露わな米中衝突の実例といえよう。

アメリカは中国の南シナ海での軍事力による領土拡張や台湾への軍事威嚇をも非難する。中国のウイグル人、チベット人、そして香港市民への人権弾圧をも糾弾する。経済面では不公正で略奪的な貿易慣行、知的所有権の収奪を批判する。

アメリカのこうした中国への攻勢の基盤には基本的な価値観の相違が厳然と広がる。 

民主主義、人権尊重、法の支配という基本理念が中国共産党政権には欠けるという指摘である。

だが中国共産党側にとっても、その拠って立つ共産主義、一党独裁の思想理念からすれば、アメリカの価値観は悪となる。この点はバイデン政権の「米中対立は民主主義と専制主義との衝突である」という主張でも特徴づけられる。

だから中国共産党政権にとってアメリカは自己の存在そのものを否定されかねない天敵だともいえよう。

現実に中国共産党がやがてはアメリカに勝る総合国力を築き、世界に覇権を発揮する野望を抱いていることも明白となってきた。

最近の習近平国家主席の「中国的社会主義によるグローバルな指導権を目指す」という言明もアメリカ打倒の意思と解釈してもよいだろう。

アメリカ側でも歴代政権の国防長官顧問を務めた中国研究の権威マイケル・ピルズベリー氏のように「中国共産党は中華人民共和国建国100年の2049年を目標にアメリカを凌駕することを一貫して意図してきた」という見解が広範となった。

要するに中国共産党とアメリカとの関係といえば、現状は激突であり、こんごの展望も激しい対立や競合なのである。

(その2につづく。全5回)

**この記事は日本戦略研究フォーラム季報2021年10月号に掲載された古森義久氏の論文の転載です。

トップ写真:中国共産党、結党100周年を祝う様子(2021年7月1日、中国・北京にて) 出典:Photo by Kevin Frayer/Getty Images




この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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