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.政治  投稿日:2024/6/14

有罪評決のバイデン大統領次男はトランプ氏の”因縁”の人物


樫山幸夫(ジャーナリスト、元産経新聞論説委員長)

【まとめ】

・バイデン米大統領の次男、ハンター氏が銃の不法購入で有罪評決を受

けた。

・氏は、カムバックめざして氏の父と争っているトランプ前大統領が在

任中、最初の弾劾裁判にかけられた際、遠因になった因縁の人物。

・ハンター氏の有罪判決で、バイデン父子にとって、触れられたくない

過去の疑惑が蒸し返される恐れあり。

 

 

 最長で禁固25年も選挙戦に影響なし?

 

 接戦が演じられている米大統領選は、トランプ陣営が候補者本人、バイデン陣営が次男の有罪をそれぞれ宣告されるという異様な展開をみせはじめた。

 

 バイデン大統領の出身地、デラウェア州の連邦地裁でハンター氏が有罪とされた起訴事実は、2018年に薬物中毒であることを隠して違法に銃を購入した罪。

 

 裁判官による量刑言い渡し日程は未定だが、最長で禁固25年となる可能性があるという。

 

 現職大統領の子弟が重罪で有罪とされたのは初めてというが、ハンター氏への評決が、熱気を増している大統領選に与える影響については、ほとんどの米メディアが否定的だ。 

 

 トランプ氏がさきに、不倫相手の元女優に口止め料を支払った際の業務記録虚偽記載で有罪を宣告されたと時も同様だった。

 

■ 想起される「もう一つのウクライナ疑惑」

 

 しかし、今回ハンター氏の名が大きく報じられたことで、2019年のトランプ大統領時代の1回目の弾劾裁判を思い起こした向きも少なくなかったろう。

 

 当時、報じられたのでご記憶の向きもあろうが、登場人物、舞台装置が、トランプ氏、その〝次〟を伺っていたバイデン氏とハンター氏の父子、ゼレンスキー大統領、ウクライナと、いま世界の耳目を集めている顔ぶれ、場所がそろっていただけに、今一度振り返ってみるのも一興だろう。

 

 トランプ氏の弾劾訴追は、内政に外国政府の影響力を利用して、国家安全保障を危うくしたというのが理由だった。

 

 19年7月、トランプ大統領は、当選直後のゼレンスキー・ウクライナ大統領と電話で話し合った際、ハンター氏が役員に名を連ねていたウクライナのエネルギー企業「ブリスマ」がマネーロンダリングなど多くのスキャンダルにまみれていることに言及。

 

 バイデン氏が副大統領だった2016年、キーウを訪問した際、検察による「ブリスマ」への捜査が息子に及ぶことを恐れて、それを中止してほしいとポロシェンコ大統領(当時)に圧力をかけた疑惑を指摘、積極的な対応を迫ったという。

 

 トランプ氏は、言質を与えとうとしなかったゼレンスキー大統領に対し、2億5000万ドルにのぼる軍事支援の停止をちらつかせて圧力をかけた。

 

 前大統領の思惑は、再選を狙うために、対抗馬と予想されていたバイデン氏の追い落としを図ることだったといわれたが、政敵排除のために外国勢力を利用することは、さすがに議会も黙視できなかった。

 

 大統領の弾劾は、不倫・偽証疑惑にからんで1998年に訴追されたクリントン大統領(当時)以来、3人目という不名誉な事態だったが、有罪に必要な上院議員の3分の2の賛成が得られず翌年2月になって無罪評決が出された。

 

 「ブリスマ」疑惑そのものについても、ウクライナの新検事総長のもとで捜査は終結、バイデン父子が刑事責任を追及されることはなかった。

 

 トランプ氏周辺は、バイデン氏は10億ドルの経済支援停止などをポロシェンコ氏への圧力の材料に使ったといわれるが、事実とすれば、トランプ氏の手法そのものだったというべきだろう。

 

 ロシアのウクライナ侵略の3年前のことだった。

 

 トランプ氏がその後、バイデン氏に敗れた2020年の大統領選の結果を認めず、21年1月6日の議会襲撃を〝扇動〟したとして退任間際に2回目の弾劾裁判が開始され、退任後の2月に無罪評決がなされたことは記憶に新しい。

 

■ 寝た子を起こされたバイデン大統領?

 

 2019年のウクライナ疑惑では、刑事責任を逃れたものの、ハンター氏をめぐっては、その後も税の未納など数々の疑惑が取りざたされてきた。

 

 大統領選への影響は少ないとはいうものの、ハンター氏自身の犯罪である銃の違法購入とは異なって、ウクライナをめぐる疑惑は、過去のこととはいえ、バイデン氏自身が関与を指摘されている。選挙戦が接戦だけに、有権者のわずかな動向が選挙の行方を左右する可能性もあろう。

 

 違法な口止め料支払い、議会襲撃への関与のほか在任中の機密文書持ち出しなど4件の罪で起訴されているトランプ氏の有罪評決は、バイデン陣営にとって格好の攻撃材料だったが、予想外の抑制的な反応しか見せなかった。

 

 今日あることを予想して「ブーメラン効果」を警戒、寝た子を起こされるのを恐れていたのかもしれない。

 

6月27日には早くも大統領選第1回の候補者討論が予定されている。

バイデンVSトランプ、選挙戦は混とんとしたまま佳境に入る。

 

トップ写真:バイデン大統領の息子ハンター氏がJ.ケイレブ.ボッグス連邦ビルに到着した時の様子(2024年6月6日、デラウェア州、ウィルミントン)

出典:Photo by Kevin Dietsch/Getty Images




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