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.国際  投稿日:2026/7/21

中東依存95%の現実 ―― 宮家邦彦氏に聞く、日本のエネルギー安全保障のツケ


執筆:Japan In-depth 編集部

【本稿のポイント】
・原油の中東依存度は一時70%まで下がったが、原発停止を背景に再び95%まで戻っている。
・宮家氏は「両方に安い方が欲しいだけで安全保障も確保しないなんてそんなのは無理」と述べ、コストを払わない安全保障はあり得ないと指摘。
・自衛隊は法律上「ポジティブリスト方式」を取っており、現地でタンカー護衛の任務があっても実際にできることは限られている。

イラン・イスラエル情勢が緊迫するなか、日本のエネルギー供給は再び中東への依存を強めている。この状況をどう見るべきか。キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問の宮家邦彦氏に、Japan In-depthチャンネルで聞いた。

▶ 動画:Japan In-depthチャンネル「中東のプロが占う‼️ホルムズ危機の行方」(2026年7月15日配信)

◆再び95%まで戻った中東依存度
日本は1973年と1979年の二度の石油危機を経験し、当時は原油の中東依存度が90%に達していた。その後、依存度は一時70%まで下がった時期もあったが、現在は再び95%まで戻っているという。
背景にあるのが、原子力発電所の稼働停止だ。宮家氏はこの状況について次のように語った。

「両方に安い方が欲しいだけで安全保障も確保しないなんてそんな無理です」

エネルギーを「空気や水のように当たり前」と捉えている感覚そのものが問題だ、とも指摘する。実際にはコストがかかるものだという認識を、50年前の石油危機で学んだはずなのに、今なお十分に活かせていない――そう宮家氏は振り返った。

◆動いている原発は33基中わずか11基

日本の原子力発電所は現在33基あるが、実際に稼働しているのはそのうち11基にとどまるという。安全基準は世界でも最も厳しい水準まで引き上げられたが、宮家氏はその基準に達した原発については再稼働を進めるべきだとの立場を示した。稼働基数が限られたままでは、燃料の調達が常に不安定な状態から抜け出せない、というのがその理由だ。

実際、日本は割高なスポット価格での原油調達を続けており、そのコストは巡り巡って日本経済全体の負担になっているという。

◆守れないタンカー――自衛隊の法的な限界

中東からのエネルギー輸送ルートをめぐっては、紅海の出入り口にあたるバブエルマンデブ海峡でも自衛隊が活動している。ただし、その任務には法律上の制約がある。
宮家氏は、自衛隊法が「ポジリスト方式」を採っている点を問題視した。

「自衛隊法であのいわゆるポジリストだから、つまりやれることだけ書いてある」「書いてないことやっちゃいけないわけですよね」

一般的な軍隊の法体系は「やってはいけないこと」だけを列挙する「ネガティブリスト方式」で、それ以外は基本的に許容される。これに対し日本の自衛隊法・特別措置法は「できること」だけを列挙する方式のため、タンカーの護衛が必要な事態が生じても、法律に明記されていない行動は取れない。

宮家氏は、任務の範囲を広げようにも「国会で持たないもん。説明がつかないから」と、法改正の難しさにも触れた。

◆終わらない補助金というツケ

足元の燃料価格高騰への対応として、政府はガソリンや電気・ガス料金の補助金を続けている。その規模について、宮家氏はこう指摘した。

「2ヶ月で1兆円です」

経済学的に見れば、本来は価格の上昇を通じて消費を抑え、効率化を促すのが合理的だが、政治的にはそれが通らない。宮家氏は「本来は値段を上げてそして消費を抑えることで節約をして効率を上げて……というのが経済学的に言うとそうなのかもしれないけど、政治的にはそうじゃないんだよね」と、経済合理性と政治判断のズレを指摘した。

◆残された選択肢――核燃料サイクルと「都市鉱山」

中東依存を減らす方策として、宮家氏が挙げたのが原発の再稼働に加え、青森県六ヶ所村の再処理施設をはじめとする核燃料サイクルの活用だ。使用済み核燃料からMOX燃料として再利用できる分を活かせば、コスト面でも意味があるとの見方を示した。

もう一つの論点が、レアアースの中国依存だ。使用済みの電池からレアアースを回収する技術が確立すれば、日本にとって新たな資源になり得るとし、宮家氏はこう語った。

「あれを回収するっていうのはもし技術が確立したら日本は宝の山ですよ」

中東情勢の緊迫化は、日本のエネルギー安全保障が抱える構造的な課題を改めて浮き彫りにしている。この続きは、ぜひ本編で確かめてほしい。

▶ 動画:Japan In-depthチャンネル「中東のプロが占う‼️ホルムズ危機の行方」(2026年7月15日配信)

◆番組で語られたそのほかの論点

・3:54〜 停戦合意(MOU)はなぜまとまらないのか
・8:19〜 イラン戦争は「軍事的には成功、政治的には失敗」
・10:28〜 イスラエルの孤立、ユダヤコミュニティの危機感
・25:29〜 イラン民主化の現実性
・33:39〜 日米関係、初めて「お互いに必要」になった構造変化
・35:42〜 トランプの政治的耐久力と共和党の今後
・37:40〜 民主党の迷走、次のリーダー不在
・46:36〜 中国・習近平が抱える内部の不安
・48:47〜 イラン戦争とウクライナ戦争の共通点、台湾への教訓

【よくある質問(FAQ)】

Q1:「ポジリスト方式」とは?
A:法律で「やってよいこと」だけを具体的に列挙する方式。記載されていない行動は原則としてできない。多くの国の軍隊が採用する「ネガティブリスト方式」(禁止事項だけを列挙し、それ以外は許容する方式)とは対照的で、日本の自衛隊法や周辺事態安全確保法などの特別措置法はこの方式を取っているとされる。

Q2:「MOX燃料」「核燃料サイクル」とは何か。
A:使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出し、ウランと混ぜて再び発電用燃料として再利用する仕組み。青森県六ヶ所村には、この再処理を行う施設がある。

Q3:「都市鉱山」とは何か。
A:家庭や企業で使われなくなった携帯電話やパソコン、電池などに含まれる金属資源を、鉱山に見立てて呼ぶ言葉。レアアースなどの資源を輸入に頼らず国内で回収・再利用しようという発想の一つ。

Q4:「バブエルマンデブ海峡」とは何か。
A:紅海とアデン湾を結ぶ海峡で、スエズ運河を経由する海上輸送路の要衝の一つ。周辺では海賊行為や武装勢力による船舶への攻撃が問題となっており、自衛隊も派遣されている。


トップ写真:Japan In-depthチャンネルより 宮家邦彦氏
タグ:宮家邦彦, エネルギー安全保障, 中東, 原発, 自衛隊, 日米関係

▶ 動画:Japan In-depthチャンネル「中東のプロが占う‼️ホルムズ危機の行方」(2026年7月15日配信)


◆再び95%まで戻った中東依存度


日本は1973年と1979年の二度の石油危機を経験し、当時は原油の中東依存度が90%に達していた。その後、依存度は一時70%まで下がった時期もあったが、現在は再び95%まで戻っているという。
背景にあるのが、原子力発電所の稼働停止だ。宮家氏はこの状況について次のように語った。

「両方に安い方が欲しいだけで安全保障も確保しないなんてそんな無理です」


エネルギーを「空気や水のように当たり前」と捉えている感覚そのものが問題だ、とも指摘する。実際にはコストがかかるものだという認識を、50年前の石油危機で学んだはずなのに、今なお十分に活かせていない――そう宮家氏は振り返った。

◆動いている原発は33基中わずか11基


日本の原子力発電所は現在33基あるが、実際に稼働しているのはそのうち11基にとどまるという。安全基準は世界でも最も厳しい水準まで引き上げられたが、宮家氏はその基準に達した原発については再稼働を進めるべきだとの立場を示した。稼働基数が限られたままでは、燃料の調達が常に不安定な状態から抜け出せない、というのがその理由だ。

実際、日本は割高なスポット価格での原油調達を続けており、そのコストは巡り巡って日本経済全体の負担になっているという。

◆守れないタンカー――自衛隊の法的な限界


中東からのエネルギー輸送ルートをめぐっては、紅海の出入り口にあたるバブエルマンデブ海峡でも自衛隊が活動している。ただし、その任務には法律上の制約がある。
宮家氏は、自衛隊法が「ポジリスト方式」を採っている点を問題視した。


「自衛隊法であのいわゆるポジリストだから、つまりやれることだけ書いてある」「書いてないことやっちゃいけないわけですよね」

一般的な軍隊の法体系は「やってはいけないこと」だけを列挙する「ネガティブリスト方式」で、それ以外は基本的に許容される。これに対し日本の自衛隊法・特別措置法は「できること」だけを列挙する方式のため、タンカーの護衛が必要な事態が生じても、法律に明記されていない行動は取れない。

宮家氏は、任務の範囲を広げようにも「国会で持たないもん。説明がつかないから」と、法改正の難しさにも触れた。


◆終わらない補助金というツケ


足元の燃料価格高騰への対応として、政府はガソリンや電気・ガス料金の補助金を続けている。その規模について、宮家氏はこう指摘した。


「2ヶ月で1兆円です」

経済学的に見れば、本来は価格の上昇を通じて消費を抑え、効率化を促すのが合理的だが、政治的にはそれが通らない。宮家氏は「本来は値段を上げてそして消費を抑えることで節約をして効率を上げて……というのが経済学的に言うとそうなのかもしれないけど、政治的にはそうじゃないんだよね」と、経済合理性と政治判断のズレを指摘した。

◆残された選択肢――核燃料サイクルと「都市鉱山」


中東依存を減らす方策として、宮家氏が挙げたのが原発の再稼働に加え、青森県六ヶ所村の再処理施設をはじめとする核燃料サイクルの活用だ。使用済み核燃料からMOX燃料として再利用できる分を活かせば、コスト面でも意味があるとの見方を示した。

もう一つの論点が、レアアースの中国依存だ。使用済みの電池からレアアースを回収する技術が確立すれば、日本にとって新たな資源になり得るとし、宮家氏はこう語った。

「あれを回収するっていうのはもし技術が確立したら日本は宝の山ですよ」

中東情勢の緊迫化は、日本のエネルギー安全保障が抱える構造的な課題を改めて浮き彫りにしている。この続きは、ぜひ本編で確かめてほしい。


▶ 動画:Japan In-depthチャンネル「中東のプロが占う‼️ホルムズ危機の行方」(2026年7月15日配信)


◆番組で語られたそのほかの論点

・3:54〜 停戦合意(MOU)はなぜまとまらないのか
・8:19〜 イラン戦争は「軍事的には成功、政治的には失敗」
・10:28〜 イスラエルの孤立、ユダヤコミュニティの危機感
・25:29〜 イラン民主化の現実性
・33:39〜 日米関係、初めて「お互いに必要」になった構造変化
・35:42〜 トランプの政治的耐久力と共和党の今後
・37:40〜 民主党の迷走、次のリーダー不在
・46:36〜 中国・習近平が抱える内部の不安
・48:47〜 イラン戦争とウクライナ戦争の共通点、台湾への教訓


【よくある質問(FAQ)】


Q1:「ポジリスト方式」とは?
A:法律で「やってよいこと」だけを具体的に列挙する方式。記載されていない行動は原則としてできない。多くの国の軍隊が採用する「ネガティブリスト方式」(禁止事項だけを列挙し、それ以外は許容する方式)とは対照的で、日本の自衛隊法や周辺事態安全確保法などの特別措置法はこの方式を取っているとされる。

Q2:「MOX燃料」「核燃料サイクル」とは何か。
A:使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出し、ウランと混ぜて再び発電用燃料として再利用する仕組み。青森県六ヶ所村には、この再処理を行う施設がある。

Q3:「都市鉱山」とは何か。
A:家庭や企業で使われなくなった携帯電話やパソコン、電池などに含まれる金属資源を、鉱山に見立てて呼ぶ言葉。レアアースなどの資源を輸入に頼らず国内で回収・再利用しようという発想の一つ。

Q4:「バブエルマンデブ海峡」とは何か。
A:紅海とアデン湾を結ぶ海峡で、スエズ運河を経由する海上輸送路の要衝の一つ。周辺では海賊行為や武装勢力による船舶への攻撃が問題となっており、自衛隊も派遣されている。
トップ写真:Japan In-depthチャンネルより 宮家邦彦氏

 




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