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.政治,.社会  投稿日:2026/7/22

「使う側」への言及ゼロ、原子力は「あと14年」――電気管理技術者・伊藤菜々氏が斬る自民党エネルギー政策の死角


執筆:Japan In-depth 編集部

【本稿のポイント】

 ・自民党のエネルギー政策は発電側の記述が中心で、電力の「使う側」の仕組みづくりに関する言及がないと、電気管理技術者の伊藤菜々氏は指摘した
 ・既存の原子力発電所は運転年数の制限が迫っており、「2040年まであと14年」という時間的な制約のなかで新設が追いつくかが課題になっている
 ・青森県六ヶ所村の核燃料サイクル施設は27回の延期を重ねてきたが、伊藤氏によれば工事は「ほぼほぼ98%」まで完了しているという

日本のエネルギー政策をめぐっては、発電側の議論は語られる一方、需要側の仕組みづくりや核燃料サイクルの現状は十分に知られていない。電気予報士・電気管理技術者の伊藤菜々氏に、Japan In-depthチャンネルで聞いた。

▶ 動画:Japan In-depthチャンネル「日本の電気 守ります❗」(2026年7月20日配信)

◆自民党のエネルギー政策になぜ「使う側」の視点がないのか

番組では、自民党(与党)のエネルギー政策を紹介するスライドをめぐって議論が交わされた。電力の安定供給や調整力の確保について触れられている点は評価しつつ、伊藤氏はこう指摘した。

「使う側の仕組みに関して何も言及してないんですよ」

太陽光発電が増える昼間には電力が余り、市場価格がほぼゼロ円まで下がる一方、原子力のように出力調整ができない電源も動いている。伊藤氏は、発電量に合わせて需要(使う側)を調整する「デマンドレスポンス」の制度設計が必要だと主張した。

この点について、視聴者から寄せられた「暑い日はエアコンを使うなと言っているのと同じではないか」という趣旨の質問に対し、伊藤氏はこう答えている。

「デマンドレスポンスは気合いでやれなんですよ。で、気合いでやれっていうのはダメなんですね」

必要なのは「使うな」という呼びかけではなく、建物の断熱基準の整備や、電気給湯器・EVの充電を自動で昼間に回すといった仕組みづくりだと述べた。

◆原子力の「2040年の崖」

既存の原子力発電所の運転期間が延長されても限界を迎える時期が近づいている。伊藤氏はこの状況を「原子力の崖」と表現した。

「2040年ってあと14年しかないんですよね」

新たな原発の建設には10年以上かかる場合もあり、既存炉の稼働制限が先に来ることで、ベース電源としての原子力が不足する懸念があるという。

◆27回延期の核燃料サイクル 工事は「ほぼほぼ98%」

使用済み核燃料を再処理し再利用する核燃料サイクルをめぐっては、青森県六ヶ所村の再処理施設が完成の延期を重ねてきた。延期の回数を問われた伊藤氏は、こう即答した。

「27回ですから」

2011年の東日本大震災を受けた新規制基準への対応工事が続いていることが延期の背景にあるといい、伊藤氏は今年4月に施設を視察したことを明かしたうえで、現状をこう説明した。

「一応もうほぼほぼ98%ぐらいは工事は終わってる」

再処理が実現しなければ使用済み燃料の行き場がなくなり、発電自体を止めざるを得なくなるとし、最終処分地の選定を進めるうえでも核燃料サイクルの完成が前提になっていると述べた。

◆平均年齢70歳の現場も 本編では電力の「今」と「これから」がもっと詳しく分かる

記事で紹介した3つのテーマ以外にも、本編では電力の予測や需給管理の裏側から、人材不足という切実な現場の課題まで、専門家ならではの視点が続く。

「同時同量」という電力業界特有の原則や、系統用蓄電池をめぐる接続工事の長期化、そして平均年齢70歳という電気系人材の高齢化問題など、日々の暮らしを支えるインフラの舞台裏を知りたい方は、ぜひ本編もあわせてご覧いただきたい。

▶ 動画:Japan In-depthチャンネル「日本の電気 守ります❗」(2026年7月20日配信)

◆番組で語られたそのほかの論点
 

・14:17〜 予報の射程――電力予測に必要な視点は数日先だけではない
 ・16:52〜 「同時同量」の原則――電力需給を24時間365日で守る仕組み
 ・20:36〜 市場価格の「マイナス化」――太陽光発電の余剰と値崩れ
 ・43:20〜 系統用蓄電池の課題――巨大化する設備と接続工事の長期化
 ・53:47〜 最終処分地選定――自治体の「手上げ方式」と首長のリスク
 ・58:52〜 濃縮ウランのロシア依存――「純国産」原発の死角
 ・1:00:37〜 電気系人材の高齢化と人手不足――平均年齢70歳の現場
 ・1:10:43〜 10年後、20年後の電力をどう守るか

【よくある質問(FAQ)】

Q1:「デマンドレスポンス」とは?
A:発電量に合わせて電力の需要(使う側)を調整する仕組み。電力が余る時間帯に使用を促したり、逼迫する時間帯に使用を抑えたりすることで需給バランスを保つ。

Q2:「電気管理技術者」とは?
A:ビルや商業施設の電気設備を監督できる資格。電気主任技術者としての実務経験を経て、経済産業省の認可を受けて認定される。

Q3:核燃料サイクルとは?
A:使用済み核燃料を再処理し、ウランやプルトニウムを取り出して再び発電用燃料として利用する仕組み。青森県六ヶ所村に再処理施設がある。

Q4:「原子力の崖」とは?
A:既存の原子力発電所の運転年数制限が迫るなか、新設が追いつかず発電能力が不足しかねないという懸念を指す表現。

トップ写真:Japan In-depthチャンネルより 伊藤菜々氏




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