「ジャパン・ファンド」構想とは何か――岡本三成氏に聞く“第3の財源”の中身
安倍宏行(Japan In-depth 編集長・ジャーナリスト)
【本稿のポイント】
・岡本氏は、公的部門が保有する約500兆円の資産を運用し、その運用益を財源にあてる「ジャパン・ファンド」構想について、秋の臨時国会での基本法制定を目指すと語った。
・「年金の流用ではないか」との批判を岡本氏は否定。モデルとするGPIFは2001年度以降、年率平均4.71%・累積約196兆円の運用益をあげている。
・官民ファンド「クールジャパン機構」の累積損失を教訓に、政治家が投資判断に「一切口出しをしない」仕組みを基本法に書き込むことを条件に挙げた。
Japan In-depth編集長・安倍宏行が、中道改革連合政務調査会長で元ゴールドマン・サックス出身の岡本三成・衆議院議員に、「ジャパン・ファンド」構想の進捗を聞いた。まず動画本編はこちらから。
▶ 動画本編を見る(Japan In-depthチャンネル)https://www.youtube.com/live/Zyp9WZCytQU?si=cPQOrx0sJfPAqkPL
「ジャパン・ファンド」の基本法はいつできる?
岡本氏は、秋の臨時国会での「政府系ファンド基本法(仮称)」制定を目指すと語った。増税でも国債でもない“第3の財源”として掲げるこの構想を、前回の出演時には「500兆円規模」とし、様々な基金や特別会計、日銀保有のETFなどを束ねて運用すれば、年率1%のリターンでも5兆円程度の財源が生まれるとの試算を示していた。今回、超党派で「水面下」の協議が進んでいるとした上で、岡本氏は「できれば今年の秋に臨時国会がありますから、そのときには基本法、政府系ファンド基本法というのを作れたらいい」と語った。制度の“器”となる議員立法を先に固め、使い道の議論はあえて後回しにしているという。

図)ジャパン・ファンドの概念図
ⒸJapan In-depth編集部
年金の流用ではないのか?
岡本氏は明確に否定した。最大の争点となっているのは年金だ。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用ノウハウを転用する構想をめぐり、岡本氏は「GPIFのお金を流用すると誤解している人がいますが、そうではなく、外国為替特会の一部や日銀ETFの一部をGPIFと同じ運用方針にすることでも、ローリスク・ミドルリターンでインフレに勝つ資金運用ができる」と説明した。外国為替資金特別会計や日銀保有ETFの一部を、GPIFと同じ運用方針で運用することを念頭に置いていると説明する。カギは値上がり益ではなく、利子・配当による“インカムゲイン”だ。「年金運用法人はほとんど売り買いしません。買うだけです。国債を買っていれば利子収入が入り、株式を買っていれば株価が下がっても配当金が入ってきます」と述べ、GPIFは今年度、このインカムゲインだけで6兆円程度の収入が見込まれるとの見通しを示した。GPIF自身の公表によれば、2001年度の市場運用開始以来の収益率は年率平均4.71%、累積収益額は約196兆円にのぼる。
損失が出たら誰が責任を取るのか?
岡本氏は、運用を避けたことによる“機会損失”の責任こそ問うべきだと反論する。GPIFは2014年、国内債券中心だった運用方針を転換し、国内外の株式・債券に25%ずつ分散する現在の構成に改めた。当時は「年金の原資をギャンブルに使うのか」との批判が噴出したという。岡本氏はこれに対し、「もしあの時やっていなかったら、年金積立金は100兆円のまま今も100兆円です。つまり200兆円は増えなかったんです」と述べ、「やらなかったが故の機会損失になった、この200兆円の損は誰が責任を取るのか、という思いがすごくあります。それは誰も言わないんですよね」と続けた。
ジャパン・ファンドについても、「確かにリスクを取れば、90兆円になることもあるかもしれません。110兆円になることもあるかもしれません。ただ、何もやらなかったが故に、普通にやっていれば増えたはずのところが増えなかったときのリスク責任は誰が取るのか、ということも議論しなければならないのがインフレの時代だと思っています」と語った。
なぜ今、資産の分散が必要なのか?
岡本氏は、デフレからインフレへの局面転換をその理由に挙げる。「今はたった一つの商品である円に全部投資しているのと同じ状況になっているんです」と述べ、NISAで推奨される分散投資になぞらえた。デフレ下では現金保有が最適だったが、インフレ下ではそれ自体がリスクになると指摘する。「国際運用もしていない現金が100兆円あるんです。眠っているんです」とも語り、こうした遊休資産をGPIFのノウハウで運用に回すことが構想の出発点だとした。
クールジャパン機構の失敗から何を学ぶか?
岡本氏は、政治家が投資判断に関与しない仕組みの必要性を挙げる。官民ファンド「クールジャパン機構」の損失を問われた岡本氏は、「ちゃんと検証をして同じことが起きないようにする仕組みがないことが問題だ」と述べ、原因を個別の投資判断よりも定期的な検証体制の不備に求めた。経済産業省の資料によれば、同機構の2024年度累積損益は383億円の赤字で、うち約6割にあたる238億円がファンド運営の必要経費だったとされる(機構が2026年6月24日に公表した2025年度決算では、累積損益はさらに540億円の赤字に拡大している)。その上で岡本氏は、ジャパン・ファンドについて「政治家が一切口出しをしない」ことが最も大切だと強調し、「100兆円単位のお金を相場観で運用してはだめなんです」と語った。投資判断は専門家に委ね、政治は制度の大枠だけを決める仕組みを基本法に書き込む考えだ。
AIは政府系ファンドの運用に活用されるか?
岡本氏は、資産運用の実務にAIやロボアドバイザーを取り入れる重要性を指摘する。「リスクとリターンの最終判断は人間がしますが、様々な分析は今まで以上に、例えばClaude Sonnet5のようなAIに聞けば瞬時に出てきます。それをもっと活用するのは大事だと思います」と述べ、感情に左右されない機械的な運用のあり方に理解を示した。実現へのハードルや、その先にある使い道の議論は、ぜひ動画本編で確認してほしい。
■ 本稿で触れられなかった主な論点
動画本編では次のテーマも語られている。気になる論点から視聴してほしい。
・使い道は後回し・消費税ゼロの財源論(28:52〜35:45) ― 運用益の使い道を巡る議論と、食料品消費税ゼロの財源論。
・消費税「1%・2年ゼロ」案の非効率/同じ10兆円で何ができるか(32:50〜41:53) ― 物価高対策として、給付と減税のどちらが効率的かを比較する。
・マイナンバーと政治への信頼(45:48〜47:23) ― デンマーク大使との対話を引き、行政のデジタル化と国民の信頼の関係を論じる。
・議員定数削減への異論(47:23〜50:33) ― 「身を切る改革」への疑問と、主要国と比較した日本の議員数についての見方。
・高市政権への評価と中傷動画・トークン疑惑(50:33〜59:45) ― 高市総理が支持される理由、野党への評価、独自に調べたという疑惑への言及。
▶ 動画本編を見る(Japan In-depthチャンネル)https://www.youtube.com/live/Zyp9WZCytQU?si=cPQOrx0sJfPAqkPL
よくある質問(FAQ)
Q1.政府系ファンド(ソブリン・ウェルス・ファンド)とは?
A.国や公的機関が保有する資産を、株式や債券などで運用する基金の総称。
Q2.GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)とは?
A.厚生年金・国民年金の積立金を管理・運用する独立行政法人。2001年度に市場運用を開始した。
Q3.クールジャパン機構とは?
A.日本の生活文化の海外需要開拓を支援する目的で2013年に設立された官民ファンド(正式名称:株式会社海外需要開拓支援機構)。
関連リンク
・経済産業省「株式会社海外需要開拓支援機構について」(令和8年2月)
・「ジャパン・ファンド構想の現在地」岡本三成×安倍宏行(Japan In-depthチャンネル・本編動画)
写真)中道改革連合岡本三成政調会長
ⒸJapan In-depth編集部
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。












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