【米キューバ国交正常化交渉、次の節目は4月】~カストロ体制には困難の始まり~
千野 境子(ジャーナリスト)
オバマ外交が至るところで破綻しかかっている。イラク、シリア、アフガニスタン、そしてウクライナ…。手をこまぬくか、後手に回るか、イイところなし。何でも介入したがるアメリカも困るが、これほど当事者意識が希薄なアメリカも由々しいことである。
支持率も低迷の中、積年の仇敵、キューバとの国交正常化交渉が行われている。第一回は一月にハバナで行われ、二回目は二月にワシントンで開催の予定が伝えられる。
わずか百数十キロの近さにありながら、断交から早や半世紀余り。経済制裁は奏功せず、オバマが「時代遅れの手法を終わらせる。」と述べたのはもっともだ。
キューバをシリアやスーダン、イランと並ぶテロ国家と呼ぶには無理がある。アメリカもキューバも意地と面子の張り合いで半世紀を費やしたと言えなくもない。
ではなぜ今なのか。やはり第一に、大統領の任期が残り二年のオバマのレガシー作りだろう。ノーベル平和賞は別として、オバマにはまだ特筆すべき外交の成果がない。
「イスラム国」やウクライナ、あるいはパレスチナなどの問題の途方もない難しさに比べたら、キューバは難易度が違う。しかも冷戦の残滓に終止符を打つという点で、歴史的かつ象徴的意味もある。悪い選択ではないと思う。
断交の翌六二年十月、アメリカはソ連製ミサイルの撤去を求め一触即発のミサイル危機が発生、世界が核戦争の危機にもっとも近づいた瞬間だった言われる。
ソ連がミサイルを撤去し危機は去ったが、以後、キューバはソ連圏に組み込まれ、冷戦の代理戦争を担う形になり、遠くアンゴラまで行った。
正常化交渉の節目は四月にやって来そうだ。パナマで開催される米州首脳会議にキューバが初参加するからだ。これまでは民主主義国ではないとして、九四年の第一回会議から排除されてきた。
前回はアメリカが拒否権を発動して参加を阻止したが、今回は大半の国が参加賛成でもあり、反対に留め、態度を軟化させた。
両国の対立は米州諸国にもマイナスだし、潮時でもあるだろう。オバマとラウル・カストロは何時、晴れて握手をするか。人権弾圧など米議会や世論には反対も多い。
一方、キューバは関係正常化後も社会主義は変えないとしている。しかしこちらも時代遅れの手法である。現在進行中の遅々とした経済改革は、カネ、ヒト、モノがドッと入ってくればひとたまりもないだろう。
キューバ国民の多くは正常化に賛成だが、生き残りを図るカストロ体制にとっては、正常化が新たな困難の始まりになることは必至かもしれない。