[Japan In-depthチャンネル ニコ生公式放送リポート]【欧州経済、ロシア経済、原油価格が鍵】~2015年国際経済展望~
(この記事は、2015年1月14日放送 Japan Indepthチャンネル「国際経済の3つの不安要因とは!?JID副編集長が徹底解説!」の内容を要約したものです。)
2015年、経済展望はどうなるのか。日本の経済を知るためには、国際経済を知る必要がある。ゲストはニューズウィーク日本版元編集長で、Japan In-depth副編集長の藤田正美氏。国際経済を読み解く三つのキーワード①欧州経済②ロシア経済③原油価格を徹底解説した。
最初の話題は欧州経済。欧州の景気展望について藤田氏は「非常に悪い。その原因はまずギリシャの政治不安定にある。」と指摘した。1月25日に総選挙を控えているギリシャだが、その選挙結果によっては、緊縮的な政策で財政再建を進める方針に反対する内閣になる可能性がある。
ドイツのメルケル首相は今までギリシャの経済が悪化してもEUから離脱させないという方針をとり、支援をしてきた。しかし、年末にその言い方に少し変化があり、ギリシャを離脱させないとは明言しなくなった。「選挙結果によっては、EU離脱の可能性が高まる」と藤田氏は懸念を示した。
さらに欧州経済がうまくいかない理由は、「EUのリーダー国であるドイツ・フランス・イギリスの方向性がバラバラだということにもある。」と藤田氏は分析した。ドイツは財政の健全化を求めているのに対し、フランスは財政赤字で大統領の支持率が低く、政治的求心力を失い、移民に反対する勢力が強くなってきている。イギリスはそもそもユーロを導入していない。
不良債権の処理も、EU内ではなかなか進まない。一つの国の中であれば平成の大合併のように銀行を再編することができるが、国境を越えての再編は難しい。藤田氏は「EUの根本的矛盾」がここにあると指摘した。
国家であれば、地方交付税交付金のように、中央組織が富を再分配することができるが、EUにはその仕組みがない。国家は他の国に富を再分配したいとまでは思っていない点が問題との認識を示した。
しかし、ギリシャが実際にデフォルトに陥ってしまえば、損失を被るのはギリシャ国債を持つEUの他の国だ。そう簡単にギリシャを切ることはできないだろう。では、どうやってギリシャを救うのか。藤田氏は「落とし所はわからないが、クラッシュしないよう、緊縮財政、合理化で何とかギリシャに頑張ってもらうしかない。」と述べ、選挙結果で緊縮に反対する政策をとる方向になった場合を懸念した。
2つ目の不安要素はロシア経済である。資源国であるロシアは原油安で景気が悪化している。1998年にルーブルが暴落したが、このときも原油安によるものだった。その後2001年のプーチンの時代に原油高となり、支持率が上がったのである。ロシア経済の動向も世界経済に大きな影響を与える要素であるので、引き続きウォッチが必要だとの認識を示した。
ロシア危機の原因ともなっている石油価格の下落。そもそも何故原油安になったのか。原油価格の急落は米国のシェールガスに対抗してOPECが価格を下げたことが原因とも言われているが、 藤田氏は「中国やインドなどの新興国の減速により、エネルギーが余ったこと。」が大きな要因だと分析した。しかし、「このままずっと下がるかというとそんなことはない。」と述べ、「今後の欧州、インド、中国の景気が左右するだろう。」との見解を示した。
では、日本経済はどうなるのか。残念ながら日本経済にとっていい材料は「あまりない。」と藤田氏は述べ、「世界経済の影響を受けて日本経済ももたついている。」と指摘した。ポイントは「20年続いたデフレのトンネルを抜けることができるのか。」ということと、「千兆円の借金を減らすことは無理だが増やさないことができるのか。」という点だと藤田氏は指摘した。
日本社会の大きな問題として、介護などの現場での人手不足が挙げられる。これを解決するのが、女性や移民の活用だが、これにも大きな壁が立ちはだかる。藤田氏はドイツやフランスが移民を追い出そうとしている現状を例に出し、「そのようにならない工夫が大切。」 と話した。「労働力が欲しいのか、年金や税金を払ってくれる人が欲しいのか、そこをはっきりさせないといけない。」と藤田氏は述べ、政府は方針を明確にしなければならない、と指摘した。
財政破綻しないために日本はどうすべきか。ODAを見直すべきなどの意見もあるが、実際支出の中で一番大きな割合を占めているのは社会保障費であり、年間30兆円に上る。特に医療にかかる金額は、高齢化で今後さらに増えていく。それをどのようにまかなうのか。保険で補うのか、税金で補填するのか、窓口での支払いを増やすのか。藤田氏は「お金がある人から取る方がいい。」と述べ、(その為に必要とされる)マイナンバー制の導入に賛成を示した。
日本経済はまだまだ課題だらけだ。日本経済が世界の経済に大きく左右されることを理解した上で、景気回復、財政再建の糸口を探っていかなくてはならない。
(この記事は、ニコ生【Japan In-depthチャンネル】2015年1月14日放送 を要約したもです。録画はこちら
ニコ生【Japan In-depthチャンネル】)