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.JID  投稿日:2015/1/4

[Japan In-depthチャンネル ニコ生公式放送リポート]【進化するデジタルジャーナリズム】~朝日新聞デジタル編集部記者に聞く~


2014年12月24日放送

Japan In-depth 編集部(Aya)

2014年最後の放送は、デジタルジャーナリズムという聞きなれないワードがテーマ。その分野に力を入れている朝日新聞のデジタル編集部記者古田大輔氏を招いて、デジタルジャーナリズムの現状、朝日新聞の戦略と今後の展望についてお聞きした。お馴染み、週刊朝日の古田真梨子記者も出演。

朝日新聞はデジタルならではの取り組みに先鞭をつけた新聞社である。早い段階から記者や支局などが公式twitterアカウントを持ち、情報を発信するなど、デジタル化の取り組みに敏感だった。週刊朝日の古田真梨子記者は「雑誌の世界では新聞に比べて、まだ記事をtwitterで紹介しているだけの状態」と話したが、安倍編集長は「使わなかった写真や動画等、紙以上のものをインターネットで配信できるのではないか」と雑誌とインターネットのコラボレーションの可能性を示唆した。

朝日新聞のデジタル編集部は、ウェブデザイナーやエンジニアの他に、古田大輔氏のように記者経験のある人材も所属し、どのようなネタをデジタルジャーナリズムで扱うのか等を判断しているという。人数は総勢50名近いというので、かなりの力の入れようだ。

そもそもデジタルジャーナリズムとは一体どのようなものを指すのか。番組内のアンケートでは、9割近くがデジタルジャーナリズムを知らないという結果になった。古田大輔氏は「デジタルジャーナリズムというと、いわゆるウェブメディアのことだと思う人が多いが、それとはまったく違って、デジタルだからこそできることをするのがデジタルジャーナリズムだ」と説明。他によく聞く、“データジャーナリズム”とは、デジタルジャーナリズムの中の一つの手法で、データを使って事象を読み解くものを指す、という。

実際に朝日新聞デジタル編集部が作成したコンテンツを紹介してもらった。代表作はソチオリンピックでの浅田真央選手の活躍を追った「Last Dance」。スクロールしていくと、まるでリンクの上で浅田選手が演技をしながら回っているかのように見え、サイドに記事が流れていくという、デザイン性の高いもので、通常の記事とは一線を画している。この手法は、New York Timesがピューリッツァー賞を獲ったサイトにヒントを得ている。「記事の中にいきなり動画が入ってきて、没入させる、没頭させる(=immerse)という効果がある」と古田大輔記者は説明。記事、写真、動画、アニメーションを全て組み合わせたイマーシブコンテンツと呼ばれる手法だ。

次に紹介してもらったのは、「投稿マップ」というサイト。縦軸と横軸にそれぞれ「選挙に行く?」「争点はアベノミクスだと思う?」という質問が設定され、自分の意見に近い”ます目”をクリックして意見を書き込むことができる。このような選挙サイトは2013年の参院選の際、投票率が落ち込むことが予想されたため、「投票に行かない人の意見を聞きたい」という記者の気持ちから始まった。

記者が実際に街中で有権者の声を聞いても、数は限られてしまうが、この手法なら多くの人の声が聞け、さらに回答者の偏りを減らすことができる。また、選挙関連では、過去の選挙での各党の得票数の流れを可視化したグラフや、全国の小選挙区で誰がどのくらいの得票率で勝ったかを見られる地図などもある。

「紙でこれらをまとめようとすると膨大な大きさになるが、インターネットであれば、それを楽しみながら関心を持ってもらえる」と古田大輔氏はデータジャーナリズムのメリットを説明した。

「新聞とデジタルジャーナリズムが同じ会社の中にあるのに、うまく連動していない気がする」と安倍編集長。それに対して、古田大輔氏は、投稿マップの声をもとに取材し、新聞記事に反映した例を紹介。「新聞もデータジャーナリズムも目指すものは一緒。手法が違うだけ。これからも連動していこうとしている」と話した。

世界的に見れば、紙をやめてデジタルに移行しようとしている動きもあるが、朝日新聞は紙メディアが未だ大きな軸となっている。古田大輔記者は「紙の新聞が衰退するのは仕方ないが、その衰退のスピードを落としたい。さらに、紙メディアが衰退して、前線で戦う記者が減ってきても世の中の人が情報を得られるように、政府機関などが情報を開示する方向に進んで行かなければならない」と問題意識を語った。

また、来年の抱負としては「デジタルの分野でまだやれていないことを進めていきたい。課題としては、日本ではオンラインできちんと公開されている情報が少ない。政府のサイトでもPDFがおかれているだけで、それを分析するのは難しい。政府にも働きかけをしたい」と話した。

まだまだ日本での知名度は低いが、デジタルジャーナリズムの発展のスピードとその可能性には目を見張るものがある。新聞のみならず、ウェブメディア各社の更なる取り組みが期待される。

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