[Japan In-depthチャンネル ニコ生公式放送リポート]【大学入試改革は格差を生む?】~東大主席美人弁護士の教育論~
2015年2月25日放送
Japan In-depth 編集部(Emi)
東大を主席で卒業し、財務官僚を経て現在は弁護士として活躍している山口真由さんが今回のゲスト。受験戦争の究極の勝者と言える山口さんの視点で語る大学受験、そして日本の教育とは・・・まずは、山口さんの勉強法から。山口さんの勉強法はやはり、ひと味違う。それが著書にもある「7回読み勉強法」その名の通り、同じ本を繰り返し読むというスタイル。シンプルだが根気が必要な方法だ。山口さんは特殊な勉強法だとは思わず実践しており、周囲に驚かれて初めて「私の勉強法は他の人と違うのかな?」と気付いたという。教科書や参考書を1~3回はいわゆる斜め読み、4回目からは普通に読んでいく。このやり方で数学も1000通りの問題の考え方を覚える‘暗記科目’にしていたという。
「私はもともとIQが高い子ではない」という山口さん。とにかく勉強時間を確保するというやり方で試験を乗り越えてきた。司法試験前の2週間からは、実に1日19時間半勉強したという。わずかな睡眠や食事の時間以外はひたすら勉強…自由な時間は10分のみ、その時間に実家の母親に電話で「つらい!」と弱音を吐きながらも、見事大学3年生で司法試験に合格した。
今の日本の大学受験は、完全に知識詰め込み型だ。試験のために暗記した公式、数式、英単語などで高得点を獲得した者が合格を勝ち取る。山口さんは、「このシステム自体が間違っているとは思わない」と言う。その理由は、結果が努力に比例するから。「社会に出る前に精一杯頑張ったという経験は必要ではないか。‘基礎を飛ばして応用’というのは少し違う。」それが実感だ。
対比として話題に上ったのが、アメリカの大学受験。知識型ではなく、人物評価を重視したもので、優秀な個性を持つ人材を集め、才能を開花させる。山口さん自身もアメリカの大学を受験したことがある。「あれはあれでおもしろい」というのが感想だ。自分は何がしたいのか、その為に何をしてきて、これから何をするのか、面接でストーリーとして語る。
しかし、「あのやり方は格差を生むと思う」というのが山口さんの視点。確かにノーベル賞を受賞するような人物も生まれるかもしれないが、日本の様に優秀な中間層、多くの人を一定のレベルに育てるというシステムではないと指摘する。
放送日は、ちょうど東大の入試日。週刊朝日古田記者によると、ここ数年の受験生は理系志向が目立ったが、今年は文系人気が盛り返してきたという。そしてこれからの大学受験を巡る動きで注目すべきなのが、2020年に今のセンター試験が変わるということ。部活の成績やアメリカの大学のように人物評価も加わるという。2020年といえば、今の小学6年生が受験する年。「ゆとり教育」を止めたのに、大学入試は逆に知識型から転換する。どこかちぐはくな印象だ。
もし、山口さんの時代もそんな新しい大学受験だったら?東大も学業と同様に部活の成績が重視されたりするのだろうか?高校時代はサッカー部のマネージャー。「運動は全然出来ない。4段の跳び箱で骨折!」自分は合格出来なかったかもしれないと笑う。山口さんは、アメリカでは代々名家が名門大学に行くといった実態もあると耳にしたことがあるという。明確な点数での判断ではない試験は、格差を広げることにならないかと懸念する。
日本の教育の変化で、もうひとつ注目をあつめるのが英語教育。小学3年生からの英語教育ということに関して、山口さんは少し違和感がある、と言う。語学というのは、思考と深く結びつくもの。早ければ早い程良いという訳ではないのではないか。日本語での思考が確立しないうちに始めるのではなく、時期は遅くても、集中的にやる方がいいのではないかというのが実感だ。
法律家にとって言葉は非常にセンシティブなもの。自身も英語には苦労したと言う。例えば、国際的なビジネスの場やスポーツで国際ルールを議論する時など、高度な英語での交渉能力を求められる場に日本人は弱いと言われる。
山口さんは、「英語について語るなら、エリート教育の議論をしないといけない」と言う。小学校から英語教育を開始し皆に挨拶程度、旅行程度会話のレベルを身につけさせるのがいいのか、ある段階で優秀な人材を選んで一定期間海外に送り、高度な英語力を持つ人材を育てるのがいいのか?教育を議論するなら、日本ではタブー視されるエリート教育についても考えなければいけないのかもしれない。
才色兼備、まさに人も羨むキャリアを持つ山口さんだが、実際には努力の人。詰め込み型の従来の勉強はとかく批判の対象となるが、山口さんの様な人材を育てる為の方法として、日本が実施しようとしている教育改革は本当に正しい方向だろうか。彼女の言葉の中には、様々なヒントが隠されている気がする。
(この記事は、2015年2月25日放送 Japan Indepthチャンネルの内容を要約したものです)