[岩田太郎] 【宮本エリアナさんこそミス・ユニバース日本代表に相応しい】~心意気と決意を評価せよ~
岩田太郎(在米ジャーナリスト)
「岩田太郎のアメリカどんつき通信」
2015ミス・ユニバース日本代表に、黒人ハーフの宮本エリアナ磨美子さん(20)が選出されたことが、欧米メディアで大きく報じられている。だが、見出しや内容はほぼすべて否定的なものばかりだ。宮本さんを日本代表に選出した関係者は、「日本は黒人ハーフを選ぶほど、進歩的で開かれた社会だ」というメッセージを送りたかったのだろうが、以下のような正反対の反応が戻ってきている。
「新ミス・ユニバース日本代表、十分日本人でないと批判を受ける」(米『ピープル』誌)
「最初の混血ミス・ジャパン、出自に言い訳を迫られる」(英『メール・オンライン』)
「一部の批判者がミス・ユニバース日本代表を十分日本人でないと考える訳」(米『ワシントン・ポスト』紙)
一方、日本国内の当初の報道では宮本さんが「タレントになりたい。明石家さんまさんに会いたい」などと非政治的なことを語っていることがクローズアップされ、欧米の見方とのギャップは大きい。
欧米メディアの指摘を待つまでもなく、日本社会は排他的で差別的だ。米海軍の基地がある長崎県佐世保市で生まれ、日本人の母のもとで育った宮本さん自身、「学校ではごみを投げ付けられたり、差別的な言葉を吐かれたりしました」と米CNNに語っている。
日本代表としてふさわしくないとの批判を一部から受ける宮本さんだが、実は米国内の日系人ミスコンである「桜の女王」でも40年ほど前、同じような議論があった。日系人が多いハワイやカリフォルニアで開かれる日系ミスコンに、ハーフの出場者が目立ち始めた時期だ。
血統では純粋な日本人である三世・四世の出場者の多くが、欧米人のような顔立ちの出場者と競わなければならないことを内心苦々しく感じていたことが、人類学者や歴史学者の聞き取り調査で明らかになっている。
多くの三世・四世は外見が日本人でも、言語や考え方や生活様式がすっかり米国化している人が多かった。それに対し、ハーフ出場者の多くは片親が一世で、日本語の読み書きができ、日本の作法を身に着け、心情的に日本人の人が多かったのである。
これが血統上、純血の出場者の激しい嫉妬を引き起こす。自分たちは片言の日本語しか話せず、性格も米国人なのに、欧米人のような外見の競争相手が、日本の歌を日本語で歌ったり、完璧な日本語で受け答えをしたり、性格的に日本人だったからだ。純血の出場者からすれば、「それでも桜の女王は、日本人の顔をした者がなるべきだ!」というわけだ。
ミス・ユニバース日本代表の場合、「鰹節で出汁をとった味噌汁を作るのが得意」な日本的な宮本さん以外の出場者も生粋の日本人なので、単純な比較はできない。だが、誰が日本人なのかという議論は昔からあるということだ。
いずれにせよ宮本さんは、「開かれた社会」をアピールしたい思惑がある日本側からも、「日本は差別的社会」である証拠を探し求める欧米側からも、重荷を負わされた形だ。ハーフゆえの板挟みで、苦悩しているのではないだろうか。
しかし宮本さんはきっと試練を乗り越え、立派な日本代表として活躍してくれるだろう。彼女はCNNに対し、「(代表にふさわしくないという)批判を受ける分だけ、さらに努力を重ねたい」と語っているからだ。来年1月の世界大会に向け、「ハーフでも日本を代表できることを、世界中に知らせたい」と述べたという。彼女は「被害者」になることを拒否している。
別のインタビューでも、「人よりつらい体験をしてきたので、難しい場面でも乗り越える力があると自信を持っている」と明言し、「自分と同じく苦しむ人たちに勇気を与えたい」とも語っている。
これぞ九州のおなごの心意気、大和撫子の鏡ではないか。こんなしっかりした考えを持った美しい女性が代表を務めてくれる日本は、本当にラッキーだ。
*写真は宮本エリアナさんの公式facebookページカバー写真より、撮影Rin氏