無料会員募集中
スポーツ  投稿日:2015/4/21

[瀬尾温知]【宇佐美選手を日本代表のエースストライカーに】~改善点は「周囲への配慮」と「肉体改造」~


瀬尾温知(スポーツライター)

「瀬尾温知のMais um・マイズゥン」(ポルトガル語でOne moreという意味)

執筆記事プロフィール

宇佐美よ、今のままでは日本代表のスーパーサブが定位置になってしまう。試合の勝負どころで投入される切り札という役割も、十二分に魅力はある。でも、レギュラーを目指しているだろうし、日本代表のエースストライカーは手でつかめるところに迫っている。だから、まだまだ伸びしろのある選手なので、レギュラーを確保するために必要な改善点を述べたいと思う。

先月行われた日本代表の強化試合、ハリルホジッチ監督の初陣となったチュニジア戦で、宇佐美貴史(22)は後半27分から出場して代表デビューを果たした。4日後のウズベキスタン戦でも出番は後半途中からだった。持ち味の縦へ突破するドリブルからシュートを決め代表初ゴール。そこでの経験がさらなる自信を生み、プレーの質をもっと向上させようと、クラブのガンバ大阪でも高い意識を持って試合に臨んでいるように見える。

J1第6節の湘南戦では、シュートのこぼれ球に鋭く反応し、ゴール前に詰めて先制点をあげ、リーグ戦4試合連続ゴールとした。著しい成長は、自分でも確かな手応えがあるだろう。「今はこれ以上何を望むんだ」と、ガンバ大阪の長谷川監督が宇佐美について試合後に語っていたが、第6節を終了して得点ランキングトップの7得点と絶好調。文句のつけようもないときに、あえて注文をつけたい。それは、宇佐美が近い将来、日本代表の命運を握ることになるだろうと感じているからである。

湘南戦を観ていて気づいたことは、一つは、縦方向を相手ディフェンスに塞がれたときにボールを失う場面が数回あったこと。二つ目は、サイドチェンジするパスが、加速して駆け上がった選手のマイナス方向に出してしまったパスの精度である。

サッカーではよく「スイッチが入る」という用語を使うが、宇佐美は縦へのスイッチは常時入っているが、ストライカーの気質にある傲慢さなのか、周りを生かすスイッチが切れているときがある。逆サイドへのパスも、精度を欠いたと言ってしまえばそれまでだが、受け手の身になってボールを大事につなぐ意識の不足、つまり、仲間のことを考えるという思慮が足りないように見えた。

縦に突破してやろうというスイッチとともに、状況によっては周囲を生かすスイッチも90分間保ち続ける改善が求められる。そうでないと、縦に速い攻めを志向するハリルホジッチ監督でも、先発で起用することに躊躇してしまうのではないだろうか。勝負どころで投入されるスーパーサブで満足しないのなら、二種のスイッチを巧みに使い分ける必要がある。

この他に宇佐美が改善する点がもう一つある。それはハリルホジッチ監督が公言したことで明るみになったのだが、サッカー選手は10%以下が望ましいとされる体脂肪率が、宇佐美は14.1%あることである。食習慣を改めるには、強い精神力が不可欠である。

「周囲への配慮」と「肉体改造」この二つが、宇佐美が精進すべきことになる。日本代表FWのレギュラー争いをする他の選手達よりも潜在能力があると見ているので、知らず知らずに要求が高くなってしまう。きっとハリルホジッチ監督も同じ思いなのではなかろうか。

高速ドリブルでありながらボールが足から離れない技術。猛烈な勢いで足を回転させているのに、どうしたらそのタイミングでシュートを打てるのだと驚愕してしまうパワー。他の日本人選手にはない並はずれた能力に加え、日本人に稀有なストライカーとしての天賦の才が、今以上に脅威になる可能性を宇佐美は秘めている。

サッカーとは、トレーニングして、技術を上げて、チームの連係を高めていくことの繰り返しだが、それだけでは70%を満たしたに過ぎない。最大限の100%に到達するには、グラウンドに入っていくときに、戦闘態勢に入れるかどうかで決まると言われている。精進を重ねれば、錬成された精神力で、自ずと血の沸き立つ100%の戦士となって、宇佐美はグラウンドに立っていることだろう。

※トップ画像/高速ドリブルの宇佐美に扮する“寄稿子”(C)カリカチュア・ジャパン

タグ瀬尾温知

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."