租税特別措置・補助金見直し担当室の歴史的意義と企業名公表の必要性【高市政権の課題②】
西村健 (NPO法人日本公共利益研究所代表)
【まとめ】
・SNSを活用し「不要と思う税制優遇や補助金」を募集する活動が開始された。
・目的は特定の政策目的で設けられた税制優遇と高額補助金を総点検と見直し。
・しかし、担当室がどこまで権限を持てるか不透明であり、実効性に疑義もある。

出典:筆者作成
ついにメスが入る。
SNSを活用し「不要と思う税制優遇や補助金」を募集する活動が開始された!

出典:内閣府HP
具体的なテーマは以下図のようなテーマが並ぶ。

出典:内閣府HP
多くの「特例」が対象・焦点になるわけだ。
とても素晴らしい。
組織としても、租税特別措置・補助金見直し担当室が立ち上がり、租税特別措置・補助金見直しに関する関係閣僚等及び副大臣会議がスタートした。「EBPM(証拠に基づく政策立案)などによって政策の実効性を検証し、国民生活の下支えや経済成長に資すると期待される施策は大胆に重点化する一方で、そうした効果が乏しい場合には見直すなど、歳出・歳入両面で「強い経済」を支える財政構造の転換を図ること、これが重要です。」と木原官房長官は語る。
EBPM、そう筆者の専門領域でもあるので、詳しく見ていこう。
■目的と役割
政府が設置した「租税特別措置・補助金見直し担当室」は2025年11月25日に内閣官房の下で発足。行政改革推進本部の下に設置され、本部長は総理、副本部長は行革担当相・官房長官・総務大臣、主管は財務大臣(片山さつき氏)。関係省庁から約30名の精鋭メンバーで構成されている組織だ。その目的は特定の政策目的で設けられた税制優遇と高額補助金を総点検、見直すもの。責任ある積極財政と健全財政を両立させ、無駄な歳出を削減し、必要な分野に資源を再配分することに貢献することを企図している。
租税特別措置は本来の目的を失ったものが多く、研究開発などの効果が疑問のモノもあった。特に租税特別措置は年間で数兆円規模の減収と見積もられていて、効果が不明確な制度が多いと長年批判されてきた。そこに、ついにメスが入るのだ(前回の記事参照)。
■租税特別措置の改革の意味
まず皆さんに知って欲しいのは、租税特別措置は悪いものではない。企業の賃上げや研究開発を促すという目的もあり、租税特別措置自体の目的自体は大変よいものであった。それなりに必要性はある。企業がなかなか動いてくれないので、なんとか動いてもらおうとひねり出した策でもあったりする。官僚さんも苦労し、努力をしたものも多い。
そして、今回の見直しの意義は3つある。
第一に、過剰な大企業税制が是正される。某大手自動車会社はかなり恩恵を受けているなど以下のようなことが調査によって指摘されているのだ。
・研究開発減税において、総額の約2割にあたる940億円(2015年、共産党調べ)
・研究開発減税の22年度分の実績総額7636億円のうち、減税額が最も大きい企業は約802億円(共産党小池氏HP)
第二に、固定化されてきた政治構造にメスが入る。租税特別措置は400項目以上、補助金は重複や効果不明なもの多数ある。そして、一度認めると増大していくような類のモノなのだ。ある業界が租税特別措置を受けて、それを聞いた他の業界が「うちもよろしく」と政治家を通してアプローチしていく、結果的に増えていくわけ。
しかも、ここには典型的、構造的な問題があった。「政官財のトライアングル」「鉄の三角形」というモデルがある。これは、天下りや公共事業に適用される政治・行政・経済の関係性モデルとして有名だが、これは租税特別措置においても適用可能だ。

出典:筆者作成
税金が減れば、企業・業界団体にはメリットがあり、政治家は支援団体に顔向けができ、行政官僚は業界に貢献(あわよくば業界での地位向上、天下りも?)する、政策推進も可能。つまり、3者が皆ハッピーで、損をする・馬鹿を見てきたのは一般国民と言う構造なのだ。今回の取り組みによって、この問題構造が健全化される。
第三に、国民の声を聴くということだ。過去にこうした問題提起にSNSを活用する動きは弱かった。国民からの情報提供を促すこの取り組み、過去の自民党にはありえない国民との直接的コミュニケーション。ということで大変凄いことだ。ただし、国民の声を聴くことは素晴らしいものの、「1人1件」縛りなどはどうかと思うが。
■しかし、透明性が確保されるのか?
素晴らしい取り組みだとはいえ課題もある。それは今回の取り組みを「透明性向上」の一環であるとも言っていることだ。
ちょっと待て!
これまで政府は守秘義務の観点から、対象の企業名を公表していないのだ。具体的な企業名をなぜに公表できないのか、疑問も多い。あまりにブラックボックスであり、自民党政治の最大の問題と言えよう。租税特別措置・補助金見直し担当室がどこまで権限を持てるか不透明であり、業界団体の強い反発が予想され、実効性に疑義があるものだがが、やらなくてはいけないことはやらなくてはいけない。企業団体献金の見直しもできなかったのだから、これくらいやらないでどうするというのが正直な感想だ。片山財務大臣と高市政権に期待したい。
写真:予算委員会にて、質問に答えるため挙手する高市早苗首相(右)と、その様子を見守る片山さつき財務大臣
出典:Tomohiro Ohsumi/Getty Images
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この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者
経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家
NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。
専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。












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