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.社会  投稿日:2015/4/28

[Japan in-depth 編集部]【望まぬ妊娠の悩みに答える取組み】~全国妊娠相談SOSネットワーク会議 1~


Japan In-depth 編集部(Emi)

「〈お腹の子と一緒に、今すぐ消えてなくなりたい〉というメールが寄せられた。」

「県や市といった行政との連携がうまくいっていない。」

「こういう対応で良かったのか?と不安を抱えながら相談にあたっている。」

望まない妊娠や経済的な悩みなど、妊娠に関する相談事業の現場にいる人々からは、様々な声が上がった。

日本財団が主催した「全国妊娠相談SOSネットワーク会議」には、北海道から沖縄まで全国各地の相談機関や団体が参加した。主に、県や市などから委託を受けて相談にあたっている保健師や看護師たちだ。

『少女が産まれた赤ちゃんを自転車のカゴに遺棄した。』

『30代の女性が誰にも言えず、遂には職場で出産して・・・』

そんな悲しい事件をきっかけとして、妊娠期間中の相談窓口の必要性を感じ、運営を始めた団体もある。

「妊娠ホットライン」、「妊娠SOS」、「妊娠ホットライン」など各団体は様々な名称で相談窓口を開設している。相談受付の方法は、電話やメールが中心で、そのほかLINE、窓口への来所を実施しているところもある。受付時間は、24時間体制もあれば1日4時間程度など様々で、実際、夜間も相談に応じている窓口へは、所在するエリアを超えた他の都道府県からの相談も少なくないという。

会議では、「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」で知られる熊本県の慈恵病院の元看護部長・田尻由貴子さんも講義に立ち、相談窓口の全国的な連携の必要性を語った。慈恵病院のSOS相談窓口には、新規の相談だけでも月に3、400件寄せられているが、相談件数全体の27%が熊本県内からで、その他は県外。関東からの相談も30%近くある。しかし遠隔地の場合、緊急の対応が必要な際の支援が難しいのが実態だ。田尻さんは、「全国からの電話が鳴り止まない。全国に窓口がなければ尊い命は救えない。皆さんの力が必要。」と強調した。

この日、参加した保健師や助産師の多くは、全国の窓口に寄せられた相談事例とその対処法を学び、相談員としてのスキルアップを図りたいとして会議に集まった。参加者たちは、それぞれが持ち寄った「相談対応マニュアル」を見比べながら、マニュアル作りの過程や、相談員の研修方法などについて日頃の悩みをぶつけ合った。

「一通のメールを返信するのにも、相手にどんな言葉を届けるべきか悩み、1時間以上かかる。」

「相談者の経済的、社会的背景は様々で対応の方針をどう決めればいいのか?」

時に、赤ちゃんの命に関わる相談現場の最前線で、相談員たちは皆、模索しながら一人一人と向き合っている。

病院を受診することなく飛び込み出産する女性や、赤ちゃんの遺棄、出産後すぐの虐待死等を防ぐ為には、思いがけない妊娠で悩む女性に、有効な情報や知識、そして適切な支援を提供する必要がある。各地の窓口に、全国から相談が寄せられる状況下では、地元の行政機関との連携だけでは不十分で、今回のように相談窓口の全国的なネットワーク化を目指す取り組みは、非常に意義深い。

課題は多いが、相談窓口から具体的な支援に繋がるスムーズな流れを全国で確立することは、赤ちゃんの命を守るため、そしてお母さんを犯罪者にしないために、必要不可欠だ。

(この原稿は【全国レベルのネットワークが必要】~全国妊娠相談SOSネットワーク会議 2~ に続く。全2回)


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