[宮家邦彦]【米大統領選:ヒラリー候補、メール問題再炎上】~ゴア元副大統領らの出馬取り沙汰も~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(8月17日-8月23日)」
先週戦後70年総理談話が発表され、日本国内メディアはようやく夏休みに入るようだ。しかし、今週最も気になるのは20-28日に日本海の海上と上空で行われる中露共同軍事演習だ。既に17日から米韓合同演習が始まっており、当然といえば当然か。
〇アメリカ両大陸
先週駆け足でワシントンに出張してきたが、大統領選挙は序盤からかなり混乱していた。トランプ候補の「オー勘違い」は相変わらずで共和党の混乱は続いているが、民主党でもここに来てクリントン元国務長官のメール問題が再炎上しつつある。
ヒラリーのメールシステムには保秘装置がなく、法令上極秘内容メールは送受信できない。ところが内容的には極秘のメールがやり取りされていた可能性が出て来たのだという。日本だけでなく、米国の政界でも、やはり「1インチ先は闇」である。
イラク戦争の英雄ペトレイアス将軍も情報管理問題で大統領選から脱落した。ヒラリーの場合はペトレイアスよりはるかに悪質との噂がある。だからだろうか、今民主党内ではバイデン副大統領やゴア元副大統領の出馬が取り沙汰されているが、この二人で本当に良いのか。
○欧州・ロシア
17-18日にドイツ連邦議会が対ギリシャ財政支援について採決を行う。ヨーロッパはヴァカンス・モードかと思ったが、流石にドイツは働いている。20日にはECB(欧州中央銀行)への支払い34億ユーロの期限が来る。ドイツ首相は19-21日にブラジルを訪問するそうだ。欧州ではメルケルだけが働いている感じすらする。
〇東アジア・大洋州
今週大きな動きはない。18日にインドネシア中央銀行が外国為替につき議論する。11月にも予定される総選挙前に最後のミャンマー議会審議が17日から始まる予定だが、先週13日には次期大統領選に意欲を見せていた与党党首が突然解任された。
同党首は現在下院議長だが、野党のスーチー女史との連携も噂されており、現大統領との確執が表面化すれば、ミャンマー内政の不安定化も懸念される。折角民主化が進むと思われたミャンマーだが、どうやら国内情勢はまだ星雲状態のようだ。
〇中東・アフリカ
今週中東では外交が活発だ。17日にはイラン外相が訪露、19日にはイラク首相が訪中する。20日にはイラクのクルド自治区で大統領選がある。個人的にはトルコ総選挙後の組閣の行方が大いに気になるところだ。
期限は22-23日らしく、それまでに組閣できなければ大統領が議会を解散し、90日以内に総選挙となるという。最近トルコがイスラム国・PKK(トルコ・クルド勢力)への対決姿勢を高めているのも、真の目的は解散総選挙での勝利なのかもしれない。
〇インド亜大陸
16-17日にインド首相がアラブ首長国連邦を訪問、17日にはスリランカで総選挙がある。興味深いのは21日に開かれるインド・太平洋島嶼国協力フォーラムで、14カ国の太平洋諸国が参加するという。インドも太平洋に大いに関心があるということか。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。