[宮家邦彦]【中国にひれ伏す英と仏独】~習近平訪英、金に屈したキャメロン~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(11月2日-11月8日)」
今週はロンドン市内のホテルで原稿を書いている。先週ワシントンポストは「習近平訪英、キャメロンは金に屈した(David Cameron Sells Out)」と題する社説を掲げ、英国の対中政策を厳しく批判した。本日午後からの英国の識者との意見交換が実に楽しみだ。それにしても最近の英国を見ていると、「貧すれば鈍する(人は貧乏になると利口な人でも愚かになる)」という言葉しか思い付かない。そもそも欧州のウクライナ問題では独仏に主導権を握られ、英国は四か国(独仏露・ウクライナ)協議に参加すら出来ていない。一体どうしたのか。
対中関係でも、先般のAIIBへの参加表明に続き、今回も醜態を晒した。これがあの大英帝国のなれの果てなのか、それとも単にキャメロンが政治家として二流なのか。今の筆者には判断できない。これも英国の友人の意見をじっくり聞いてみたいものだ。
〇欧州・ロシア
その欧州では先週の独首相の訪中に続き、今度は2-3日に仏大統領が北京を訪れる。何のことはない、中国に「ひれ伏している」という点では英国だけではなく、独仏も同様なのだ。ワシントンポストが言いたいのは昔特別関係にあった「英国よ、おまえもか」ということなのだろうか。
同時期にNATOの中東欧メンバーがブカレストで首脳会議を開く。ブルガリア、ルーマニア、ポーランド、チェコ、スロバキア、バルト海三国が参加する。ロシアに近く、プーチンの怖さを知り抜いている国々の集まりである。どうやら独仏とは緊張感のレベルが違うようだ。
〇東アジア・大洋州
2日に日韓首脳会談が開かれ、懸案の慰安婦問題は両首脳ら少人数の会談で話された。「将来世代に障害を残すこと」があってはならず、「できるだけ早期の妥結を目指して、交渉を加速させていこうということで一致した」という。韓国がゴールポストを再び動かさないことを祈ろう。
同じく2-3日にはASEAN国防大臣会合が開かれ、3-5日には日米なども加わった拡大国防相会合がある。その直前に米国の太平洋艦隊司令官が訪中し、中国側と協議を行う。だが、この程度で人民解放軍が反省するとは思えない。誤算に基づく衝突だけは避けたいものだ。個人的にはミャンマーの議会選挙に注目している。
〇中東・アフリカ
今週は中東発のニュースが少ないが、それは地域が「静かなこと」を必ずしも意味しない。気になったのはトルコ出直し総選挙でエルドガン大統領率いる与党が再び議会の過半数を制したことだ。これでトルコは安定したと見るか、それともエルドガンの半独裁が復活したと見るべきか。
〇アメリカ両大陸
先日の共和党候補者のテレビ討論会を見ていたら、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事にオーラがなくなったように見えた。ジェブは元大統領の息子であり、弟でもあるのだが、彼はあまり大統領選挙に向いていないのか、それとも選挙参謀に恵まれないのか。ちょっと気になるところだ。
〇インド亜大陸
1-2日に印国防相が訪露し印露軍事技術協力会合を開催する。3-5日にインド国防相はASEAN拡大国防相会合にも参加する。一方、近く米国防長官がインドとパキスタンを訪問する可能性があるそうだ。インド外交は強かだとつくづく思う。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。