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.国際,ビジネス  投稿日:2015/11/8

[Ulala]【袋小路の仏政府とルノー・日産連合の対立】~株主と社員の団結がカギ~


 

Ulala(ライター・ブロガー)

「フランス Ulala の視点」

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11月4日にフランスのマクロン産業相がフランス大手自動車ルノーに対して、資本提携先の日産自動車との合併を求めていると報じられ、経営をめぐる同社とフランス政府との対立が、さらに激化した。ルノー・日産の最高経営責任者(CEO)を務めるカルロス・ゴーン氏はフランス政府の提案を拒否したと伝えられている。

フランス政府が合併の話しを持ち出すのはルノー史上初めてのことではない。1993年にはボルボとの合併を模索していた。しかし国営だったルノーとボルボと合併は、フランス政府の不透明な民営化の計画と、持株比率が35%になることによってフランス政府の発言権が増大することへの懸念から、ボルボの株主が強く反対し計画は頓挫したのだ。

当時は上昇気流にあったボルボに対して、落ち目でしかも国営であり、 民営化の時期もはっきりしないルノーと組む必要性がないとスウェーデンの大方の株主は判断した。しかも、経営権に拒否権も発動できる特別議決権にフランス政府が固執することに納得できなかったのだ。

そのためスウェーデン個人株主保護協会は、株主総会前に合併の反対を表明。多くの個人株主の署名運動を展開し、マスコミを通じて反対派を募った。この結果、社内や重役からも反対表明一色になり、フランス政府の思惑通りには事は進まなかったのだ。

フランス新聞各紙によると、この失敗は「余りに介入し過ぎたフランス政府」「予想できなかった株主達の動き」「数々の判断ミス」と報じられている。

しかし、あれから10年以上経ってもフランス政府の考えは何も変わってないようだ。民営化したはずのルノーは相変わらずフランス政府がコントロールする対象に変わりない。

確かに1999年に経営危機にあった日産は、フランス政府とルノーに救済され、ゴーン氏の大胆な改革で現在は大きくよみがえった。しかしゴーン氏の手法は日産には効果的ではあったが、雇用を強く守ろうとするフランスでは、ルノーを思うように建て直しできなかったのだ。その結果、現在ではルノー・日産の利益の3分の2は日産によるもので、実際に日産がルノーを支える形になっている。

しかしフランス政府からしてみれば、ルノーの業績をあげることのできないゴーン氏には不満を募らせるばかりだ。フランス政府が介入すればルノーはもっとよくなると意気込む理由の一つにもなっており、フランス産業と雇用を守るために経営に発言する権利をもっと高めたい。

マクロン産業相は先月10月29日の仏経済紙レゼコーのインタビューで日産に対する議決権付与に反対。3日にも記者団に「日産が不振にあえいでいたとき、ルノーは単独で実行可能だった投資を見送り、支援資金を投資してリスクをとった」とし、「政府は1945年からルノーの株主で、かなりの長期間と言われるかも知れない。2倍の議決権を得る合法的な資格がわれわれにある」と主張。6日にもレンヌに向かう前にも記者団に一歩も譲らないことを伝えている。

一方、マクロン産業相のこの堅固な態度は、フランス全体から支持を受けているかと言えば、そうでもなさそうだ。

4日のル・モンドによると、関係者筋が語る解決策は、「この状態から脱却するには(政府が4月に買い足した)株4.7%を売却することだ」と言う。また同記事では、いずれにせよルノーと日産の関係は見直すべきであると言っており、ルノーの助言メンバーの一人は「お互いにブロックしてしまうので完全な均等にすべきではないが、不均等は信頼の中で成り立つこと」と述べている。

The Huffington Postや、Atlanticoなどのネットを媒介するニュースサイトでも、「最良な選択は今の良い状態を保つことだ」と言う意見がある。

5日、ブルームバーグによると、ルノーの取締役会はゴーン氏を支持するとし、1株1議決権を堅持することは「ルノー・日産提携のバランスを守る方法」であり「取締役会は、この提携がルノーの存続にとって不可欠で、議決権倍増はこれを不安定化させる要素だと考える」と声明を出したと伝えられており、ルノー自体も対政府の構図だ。がしかし、6日に緊急で行われたルノーの取締役会では、政府との対立の解消策はまだ見出せていないようだ。

「仏政府とゴーン氏の力比べ」(レゼコー紙)とも言われている両者の話し合いはすっかり袋小路に陥ってしまっている。今後この状況を変えて行くには、ボルボの時同様に、株主、及びルノー・日産社員らの一体化した団結が大きな鍵となるのは間違いないだろう。

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