[相川梨絵]<バヌアツにフランス系大学が誕生>仏語系住民に向けた高等教育機関誕生で教育のレベルアップに期待
相川梨絵(フリーアナウンサー/バヌアツ共和国親善大使)
2013年4月、南太平洋ソロモン諸島に属するバヌアツ共和国に、フランスのトゥールーズ大学の分校が開校。
これまでにフランスとニュージーランドによって2500万バツ(約3100万円)が提供されていますが 新たに300万バツ(日本円にして約375万円相当)の資金がPacific Fund for economic, social and cultural cooperationという本国フランスと南太平洋にあるフランス領を結ぶ活動などに資金提供する団体から献金されることになったというニュースについてお伝えします。
イギリスとフランスの共同統治の名残から、バヌアツには英語系とフランス語系の2種類の学校があります。今まで、バヌアツにある大学は、サウスパシフィック大学というフィジーにある大学の分校唯一つでした。ここは、授業が英語ベースの学校です。
このため、高校までフランス系の学校に通った生徒が、より高い教育を大学で受けるためには、海外へ出るしか方法がありませんでした。
新たな大学には、試験的に3年間のプログラムが組まれ、トゥールーズ大学から63名、地元バヌアツからも3名の学生が参加しています。目下の目標は、奨学金制度を整えることだそうで、実現すれば、より多くのバヌアツ人が大学に行くことができるようになると見られます。
このニュース、バヌアツの教育レベルの向上につながる事もさることながら、個人的にもとても嬉しいものでした。 私にも1歳の娘がいます。将来的には、娘をフランス語系の学校に入れようかなと考えています。バヌアツでは、複数の言葉を話せることが直接仕事に結びつくからです。
バヌアツの公用語は、英語とフランス語、それに現地語のビシュラマ語の3つです。ビシュラマ語は異文化間の言語接触の中で生まれたピジン語の一種で、英語ととても似ているので、フランス語系の学校出身者は英語も話す事ができます。逆に、英語系学校の生徒は、フランス語が全く話せません。
バヌアツの主要産業は農業で、大半の人は自給自足で生活しています。 その他の仕事は、政府関係か観光業がほとんどです。バヌアツには、英語圏のオーストラリアやニュージーランドからたくさんの観光客がやってきますが、同様にお隣、フランス領ニューカレドニアからも数多く訪れます。 必然的に、フランス語と英語両方を話せる人が職を得やすくなるのです。
私たちの娘が、将来バヌアツで生活するのか、日本か、はたまた別の場所か、見当もつきません。しかし、親としてより多くの可能性を与えたいのです。バヌアツの教育レベルは、日本と比べ物にならない位遅れています。
小学校高学年で歯磨きの授業をしていた事には驚きました。20まで数えられない大人もたくさんいます。そんな中でも、日本語、英語、フランス語、ビシュラマ語の4カ国語を話せたら、どこにいてもやっていけると思うのです。
日本にいたならば、当たり前のように、近所の幼稚園に行って、小、中、高、大学と進学させていたでしょう。バヌアツにいると、日本のように明確に未来を見通すことはできません。
しかし、その分、様々な選択肢を考えることになります。どこにいても、今いる場所だからこそできることを見出し、その環境を子供に与えることが親として一番大切なことなのでは、と改めて感じています。
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