[安倍宏行]【「動物介在教育」が子供たちに与えるもの】~立教女学院小学校の取組み~
トップ写真:左 立教女学院小学校 吉田太郎教頭/右 滝川クリステルさん ©Japan In-depth編集部
安倍宏行(Japan In-depth 編集長/ジャーナリスト)
「編集長の眼」
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この「動物介在教育」をもう13年も実践している学校がある。東京にある立教女学院小学校がそれである。その普及に尽力してきた吉田太郎教頭は語る。「13年前、自分の居場所が見つけられず、不登校となり引きこもりとなった児童がいました。その子は犬との触れ合いを通して励まされ、彼女が少しずつ癒される過程を目の当たりにしました。」これが「動物介在教育」が始まるきっかけとなったのだ。
最初、バディ一という名前の犬1頭で始まった学校犬は、2009年にバディの子供のリンクが、2012年からは東日本大震災後、福島県の動物シェルターから引き取った2頭、ウィルとブレスが加わった。「ウィルという名前に福島のことを忘れない」というメッセージを込めたという。その後2015年にバディが息を引き取り、現在は3頭となっている。
学校犬の世話をするのは、「バディウォーカー」と呼ばれる小学校6年生。朝8時に登校した彼女らは6~7人1グループとなり、まずは水や餌やり。午前中の休み時間に散歩。放課後に2回目の散歩と部屋の掃除を行う、と結構忙しいが、6年生の3分の2の子供たちが手を上げるという。
犬と散歩をしている生徒たちに話を聞くと、子供たちは「(生き物の命は)自分たちと同じ命なんだと気づかされた!」「いやなことあっても癒されて元気になる!」「今後自分たちも(被災犬のような)可哀想な境遇の動物たちを助けたい」と口々に語った。
9日、同小学校は、殺処分ゼロと絶滅危惧種の保護に関する啓発活動を行っている一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブルの滝川クリステル代表理事を招き講演会を開催、父兄ら400人超が集まった。滝川氏は「動物介在教育は以前から教育現場で取り入れたらいいのではないかと思っていたが、今回こちらで実践していることを知り、大変興味を持った。動物との“共生”の大切さは、小さいころから肌で感じることが一番だ。生き物の体温や感情や行動を普段から知ることで、虐待などは防げるのではないか。」と述べた。
また滝川氏は、最近、学校内で、生き物を飼うことが少なくなっていることを上げ、「『動物介在教育』のような取り組みもほとんど広まっていない。命の大切さ、生き物と共生する大切さを、もっと多くの教育者や保護者の皆さんに知ってもらうことが必要だ。」と述べた。
*文中写真/一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブルの滝川クリステル代表理事©Japan In-depth編集部