[宮家邦彦]【接近する中国と台湾、日本は?】~中国経済の台湾浸透が背景に~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(11月9日-11月15日)」
今週の関心事項の第一はミャンマーでの総選挙の結果だ。与党軍事政権の大敗は不可避であるらしい。されば、スーチー党首率いる野党の勝利は確実であり、問題は議会の過半数を制するか否かに絞られてきたともいえるだろう。各種報道によれば、与党・連邦団結発展党(USDP)はテーウー党首代行やアウンミン大統領府相など、大物候補が相次いで落選確実になったという。与党は予想外の大敗ということだが、軍事政権が自らこうした不利な結果を淡々と受け入れるだろうか。問題の本質はここにある。
第二の関心事項は中台首脳会談だ。台湾と中国の関係は最近特に微妙である。台湾の一般民衆が中国の影響力増大を認めたがらないことは致し方ない。この数年の大陸中国経済の台湾浸透を日本は如何に受け止めるべきだろうか。
中台間の軍事バランスも注目に値する。報道によれば、台湾総統は中国側に台湾対岸のミサイル撤去などを必ずしも強く求めていなかったらしい。それでは馬英九総統の態度が生温いといった批判が出てきても致し方ないだろう。
中台の思惑は同床異夢だ。「中国は一つ」と確認しても、双方が考えていることは180度異なる。今の台湾に必要なのはFTAやTPPといった諸外国との経済面での結びつきを飛躍的に増大させることなのだろうが、日本にそうした心の準備は出来ているのだろうか。
○欧州・ロシア
15日にギリシャでは新たな救済策の第一回のレビューの期限が来る。15日にロシアの野党勢力がモスクワで大規模な抗議行動を予定している。また、15-16日にはEUとECの首脳がG20会合に出席する。同時期に英首相もG20 会合に参加し、露大統領と会談する。
〇東アジア・大洋州
9日に韓国海軍は竹島(韓国名:独島)周辺で年に一度の軍事演習の後半を実施する。国民党の総統選挙候補者が訪米する。10日から16日まで自民党の高村副総裁がサウジアラビアを訪問する。
〇中東・アフリカ
9-10日にイスラエル首相が訪米し米大統領と首脳会談を行う。10日にはクウェート首長がソチでロシア大統領と会談する。15-16日にはトルコでG20首脳会議が開催され、オバマ大統領も参加する。
〇アメリカ両大陸
現在大統領選は中弛みで大きな動きはない。民主党ではクリントン候補がしぶとく生き残りそうな勢いであるのに対し、共和党では星雲状態が今も続いている。誰が生き残るかは現時点では断定できない。これが米大統領選挙の面白いところだ。
〇インド亜大陸
8日から19日まで印露が合同軍事演習を行う。同じく9日から12日まで印露は海軍共同演習を実施する。12-14日に印首相が訪英する。今週はこのくらいにしておこう。
いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
(この記事は、11月10日に寄稿されたものです)