期待される「特別養子縁組」の普及
Japan In-depth 編集部 (Erika)
3日に引き続き、日本財団ビルで4月4日の「養子の日」にちなみ、「子どもが家庭で育つ社会をつくるシンポジウム」が開かれた。
第一部では、「子どもの家庭養育推進官民協議会」(以下、協議会)発足記者発表が行われた。協議会会長には、三重県知事の鈴木英敬氏、協議会副会長は全国里親会副会長の木ノ内博道氏がそれぞれ就任した。
協議会は、地方自治体の知事や市長といった「官」と、NPO法人や公益社団法人といった「民」の団体によって構成されている。官民が連携し、家庭養育を推進することを目的とする。具体的には、官民ネットワークの形成、里親制度や養子縁組の普及・啓発、研修の実施、政策提言というアクションを起こしていく。「子供第一主義」というマニフェストを掲げている浜松市長の鈴木康友氏や、実際にNPO活動を行っていたという奈良市長の仲川元庸氏など、一人一人の首長たちから挨拶がなされた。
参加民間団体の一つである認定NPO法人Living in Peace代表の慎泰俊氏は、「多くの子供にとって望ましい環境というのは、家庭に近い環境、家庭環境そのもの。」と話し、官民共同の協議会の発足に期待感を示した。
次に登壇した渡嘉敷奈緒美厚生労働副大臣は、子どもを家庭の中で育てるのがいかに大切か、里親の体験談の話を聞いて感じたと述べ、「この活動を厚生労働省を挙げてしっかりと応援していきたい。」と決意を語った。協議会会長の鈴木氏による設立宣言で、第一部は幕を閉じた。
第二部では特別養子縁組の今後について、児童相談所、民間養子縁組団体、専門家が参加してシンポジウムが開かれた。福岡市こども総合相談センター長の藤林武史氏による基調講演、その後、家庭養護促進協会大阪事務所の岩崎美枝子氏、日本女子大学教授林浩康氏の講演が行われた。
藤林氏は、里親委託の事業を進めてきたが、「パーマネンシ―(永続性)」の観点を意識し始め、特別養子縁組への取組を始めた。特別養子縁組にはまだ大きな課題が残っていると指摘。その中でも、年齢の高い子供の特別養子縁組をどうするかが、大きな問題だ。現在、特別養子縁組の制度には、6歳以下の子どもに限るという年齢制限が存在する。そのため、6歳以上の子どもは特別養子縁組が適用されず、児童相談所に残るケースが多い。それに対し藤林氏は、年齢制限の見直しを始めとする法改正を提言。現在、児童福祉法の改正が進んでいる。
続いて家庭養護促進協会の岩崎氏が講演。同協会は、「あなたの愛の手を運動」による児童相談所との協働を通して、官民連携を進めてきた。官民連携と言ってもよいところばかりではない。例えば、措置権をもつ公と、実働部隊となる民との関係性が上下関係になりがちである点や、個人情報保護法による情報共有の難しさなどの問題点を指摘した。
最後は、日本女子大学の林浩康氏。彼はデータを用いて養子縁組、児童相談所の現状と、課題を説明。また、「児童相談所は安心な機関か?」との疑問を呈した。民間養子あっせん団体、特別養子縁組の仲介団体は、あっせん法によって規制されているが、児童相談所は規制されていない。現在、林氏もかかわり、より厳格なガイドラインを作っているという。
国連の子どもの権利条約には、子どもは「家庭環境の下で幸福、愛着及び理解のある雰囲気の中で成長すべき」(前文)とある。乳幼児期に大人との愛着形成がなされないと、子どもの人格形成や成長に大きく影響してくる。罪のない子どもたち、声を上げることができない子どもたちを社会全体で育てたい、そんな気持ちが湧き起こるシンポジウムであった。
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