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経済  投稿日:2016/5/25

電力小売り自由化の真実 その2

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竹内純子(NPO法人国際環境経済研究所理事・主席研究員)

「竹内純子の環境・エネルギー政策原論」

電力小売りの全面自由化が始まり、家庭用の電気も事業者を選択して購入することが可能になって早2か月。皆さんはどういう選択をされましたか?

自由化開始からの1か月で契約先を切り替えたという家庭は、全国で約82万世帯、全体の1%強という結果になっています。しばらく様子見という方が多いのかもしれませんね。

では前回に続いて、電力自由化についてよくいただくご質問、今回は特に契約先の選び方や「セット販売」はお得か、といったご質問についてお答えします。

Q:契約先はどう選ぶ?

都市部では多数の事業者が参入して勧誘合戦を行っていますので、契約先をどう選ぶか悩んでいる人も多いようです。

実は「都市部では」というところは大事なポイントです。自由化された場合、新規参入者の多くは、都市部すなわち需要が密集しているところで事業を行います。営業エリアを選ぶことは事業者の自由ですから、お客さんがまとまっているところで商売を始めるのは当然でしょう。

後述するように、日本でも既に大口ユーザー(工場やホテル、デパートなど多くの電気を使用するユーザー)は自由化されていましたが、電力小売り事業に新規参入があったのは殆ど東京や大阪、名古屋などの大都市圏だったのです。この傾向は家庭用であっても変わらないでしょう。自由化は全国一律に同じメリットをもたらすという訳ではありません。地域間で差が出ることは認識しておく必要があります。

いくつか選択肢があり悩んでいるという方は、まずは、インターネット上の「比較サイト」を試してみましょう。ただ、比較サイトによって出てくる結論が異なることもよくありますので、まずは複数のサイトで確認することをお勧めします。

ただ、インターネット上の試算だけで契約を変えるのはお勧めできません。契約に制約(いわゆる「何年縛り」という解約制限など)がありご自身に不利に働くことはないかなど、それぞれの契約内容をよく確認して下さい。解約制限がある場合、解約手数料を取られることとなります。

それ以外にもこれまではタダであった、検針票や請求書等の発行に手数料がかかる場合もあります。それぞれの会社の対応や印象を確認する意味でも、不明な点があれば直接電話で問い合わせてみることも有効でしょう。

その事業者が国の登録を受けた「小売り電気事業者」であるかの確認も当然必要ですので、資源エネルギー庁のHP(注1)で各事業者の連絡先などを調べてみてください。

メニューが多様になるのは消費者にとってのメリットとは言え、ありすぎても困るのが消費者心理。イギリスでは、“Big6”と呼ばれる事業者が契約の9割以上を占める状況が続いていましたが、それぞれが多様なメニューを出したので消費者が混乱し、規制当局がメニューの削減を指示したこともありました。

また、たとえばドイツなどでは、1年間の電気料金を前払いすれば大幅に割り引くとした事業者が倒産してしまった事例などがいくつかありました。前払いした電気料金を消費者が取り戻すのは相当困難です。こうした事例もありますので、焦らず踊らされず、検討していただくことをお勧めします。

Q:セット割りは本当にお得?

さまざまな事業者が本業の商品やサービスとセットにするかたちで、電気の小売り事業に乗り出しています。たとえば、ガス会社や石油関連商品を扱う企業が電力小売り事業にも乗り出すのは、燃料調達の部分で関係がありそうですし、セットにすれば安くなるというのもなんとなくわかるような気もしますよね。

ただ、そうでない商品やサービスとの抱き合わせもたくさんあるようです。電気というのはいったん契約したらあまり頻繁に契約先を変更するものでもないでしょう。ですので、顧客を長期間引き留めたいと思えば、電気のような商品とセットにすることは当然の事業戦略です。

このこと自体は否定されるものではありませんが、消費者の皆さんはなぜ「セット割り」が多いのかはよく理解したうえで選択してください。

セットになってしまうことで、消費者からは料金構成が見えづらくなってしまう懸念もぬぐえません。せっかく、スマートメーターなどで自分の使う電気の量を「見える化」しても、セット割りによる料金制度ではそれがどのように料金に跳ね返るのか見えなくなってしまうからです。

これから日本は地球温暖化対策などの観点から、より一層省エネを進めなければなりません。省エネ意欲をいかに引き出すかがカギのなかで、このセット割りはそれに沿う動きとなるのか、疑問が残ります。

※注1  http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/retailers_list/

(4日連続、午前11時配信予定。その3に続く。その1も合わせてお読み下さい。)

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この記事を書いた人
竹内純子

NPO法人国際環境経済研究所理事・主席研究員 21世紀政策研究所研究副主幹、産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会委員、アクセンチュア株式会社 シニア・アドバイザー(環境エネルギー問題)、経済産業省 水素・燃料電池戦略協議会委員、等。

慶応義塾大学法学部法律学科卒業後、東京電力入社。水芭蕉で有名な尾瀬の自然保護に10年以上携わり、農林水産省生物多様性戦略検討会委員等を経験。その後、地球温暖化の国際交渉や環境・エネルギー政策への提言活動等に関与し、国連の気候変動枠組条約交渉にも参加。著書に、「みんなの自然をみんなで守る20のヒント」(山と渓谷社)、「誤解だらけの電力問題」(WEDGE出版)*第35回エネルギーフォーラム賞普及啓発賞受賞、「電力システム改革の検証」(共著・白桃書房)「まるわかり電力システム改革キーワード360」(共著・日本電気協会新聞部))など。

竹内純子

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