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.政治  投稿日:2016/11/27

間もなく日露首脳会談 日本外交、したたかに


「細川珠生のモーニングトーク」2016年11月26日放送

細川珠生(政治ジャーナリスト)

Japan In-depth 編集部(坪井映里香)

東京で季節外れの雪が降った11月。今月の最大のニュースはトランプ次期アメリカ大統領の誕生だろう。揺れる国際情勢をテーマに、安倍編集長をゲストに迎えた。

今月17日、ニューヨークのトランプタワーにて、最初の安倍・トランプ会談が実現。安倍総理は、トランプ氏が次期アメリカ大統領に決まってから公式に会った海外最初の首脳となった。いち早くトランプ氏に会うことができたことについて、細川氏も安倍編集長も肯定的だ。安倍編集長は、「日米関係を世界に誇示できた。」と述べた。しかし一方で、細川氏は、それだけ急いで会うということは、次の大統領がトランプ氏に決まったことで今後の日米関係への懸念、日本側の焦りを感じたという。

トランプ氏はTPPや、地球温暖化にも後ろ向きだ。そんな彼を細川氏は、アメリカ国民の思いを受け止めて大統領に選ばれたので、一定程度選挙期間中に発言していたことはやると思うとの考えを示した上で、「アメリカの利益になること、極端に言えばそれだけをやっていくという姿勢は政治家としてどうかな、と思う。」と述べた。

アメリカのトランプ氏の当選やBrexitでも見られるとおり、グローバル化が進んでいくなかでどの国も内向きになって行く傾向が見られる。しかし、日本には資源もなく、国際社会の枠組みのなかで生きていくしかない現状がある。「辛抱強くグローバルのなかで、アメリカがどういう風に立ち回っていけばいいのかということ安倍総理がきちんとトランプに直言する、逆に言うと日本のリーダーシップが求められる局面が出てくるのでは。」と安倍編集長は、日本政府のイニシアチブに期待するとの考えを示した。

細川氏はトランプ氏がビジネスマンである点に注目。トランプ氏は次期大統領就任当日に正式にTPP離脱を明言。衝撃的ではあったが、トランプ氏は、「より国益にかなうものならあと二ヶ月弱いろんな話を聞いて離脱をやめるということも言い出しかねない人ともみられている。」と指摘。ゆえに、日本の役割はTPPの重要性を説くことだという。

また、細川氏は「TPPをきちんと発効させることは日本が国際的なルール作りに参加するという大きな意義がある。これから色々なところでルールを作っていくときの1つの実績になると思う。」と様々な国際的経済連携の中における日本の役割の重要性を指摘した。

一方で、安倍総理は今月ロシアのプーチン大統領ともペルーで会談を行った。来月にはプーチン大統領が来日、山口県で日露首脳会談が行われ、北方領土問題の解決が期待されている。しかし、北方領土4島のうち、国後島と択捉島でミサイル配備を進めているというロシアの報道がされている。「これはやはりそんなに軽く考えちゃいけない。」と細川氏は警鐘を鳴らす。安倍編集長も、「いかにもロシア風の交渉上手。飴と鞭をうまく使い分けている。」とプーチン流の外交に警戒感を示した上で、日本はそれに翻弄されてはいけない、と警鐘を鳴らした。加えて細川氏は、北方領土は「お互い譲り合って一歩前進ではなく、これは日本の領土であることは間違いない。」と細川氏は強調した。実際、ロシアによる戦後のどさくさ紛れの不法占拠は世界も認めている。だからこそ、「日本の本気度が示される。」と話す。

トランプ新大統領が誕生することにより、米ロ関係が雪解けするのでは、と期待する声も上がっているが、それが日本にとって好ましいことなのかは賛否両論である。安倍編集長は、アメリカの立場を考えずとも、「ロシアにとって極東の経済開発は至上命題で、日本の援助が欲しいのは間違いない。」と述べ、その立場を利用し「日本も(ロシアの戦略に)対抗して玉を投げてみればいい。」と様々な提案を投げてロシアの反応を積極的に見ていくべきだとの考えを示した。

細川氏も賛同。「『確認して適切に対処する』とかそんな対応ではなく、明らかに怒りをぶつけるべき。北朝鮮がミサイル発射したときもみんなもう慣れてきて反応しないが、一個一個きちんと、許してはいけないものだということを日本の主張として明確にする。」との見方を示した。

細川氏は、安倍総理のアジアを中心とした外交面の活動は評価しているものの、日本人の何事にも控えめで、波風を立てないといった美徳や根本的精神では国際社会ではなかなかできないこともある、と述べ、「もう一歩したたかな外交を。」とより強固な外交政策を総理と政府全体に期待した。

(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2016年11月26日放送分の要約です)

「細川珠生のモーニングトーク」

ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分

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トップ画像:©Japan In-depth 編集部


この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト

1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。

細川珠生

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