「感染経路の正しい知識を」桜井充参議院議員
細川珠生(政治ジャーナリスト)
「細川珠生モーニングトーク」2021年3月13日放送
【まとめ】
・接触感染や便からの感染リスク等、正しい知識を政府は国民に提示すべき。
・医療体制維持するには、医療資源を効果的にフル活用する事が重要。
・ワクチン接種による集団免疫形成と定期検査による維持が今後の鍵。
今週のラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」のゲストは、参議院議員で、医師でもある桜井充氏。新型コロナウイルスについて、政治ジャーナリストの細川珠生氏が聞いた。
まず、2020年11月に桜井氏本人も新型コロナウイルスに感染した経験を踏まえ、「感染者への政府の対応として足りない点はどこか」について細川氏が聞いた。
桜井氏は、政府の対応として2つ課題をあげた。
1つ目は、「日常生活の中のどういうシチュエーションで感染する可能性があるか」の具体的な国民への提示が足りていないこと。
感染症は正しい措置を取れば感染を防げる。実際、今年のインフルエンザ感染者数は例年(2~3万人/週)に比べて大幅に少ない(ピーク時で100人・週超えていない)のは、新型コロナウイルス感染症予防のために徹底したマスクの着用や手洗いなどの成果であると考えられる、と桜井氏は強調した。
インフルエンザは上気道を通じた飛沫感染が主な感染経路であり、ほぼ全員がマスクを着用したことによって、ウイルスの侵入を防ぐことが出来た、と桜井氏は断言した。
では、なぜ新型コロナウイルスの感染が止まらないのか。桜井氏は、「新型コロナウイルス感染症に対して正しい措置を取っていないからだ」と述べた。
「新型コロナウイルスの感染が流行しているのは、(上気道以外の)別のところから(ウイルスが)入ってくるとしか考えられない」というのだ。特に、トイレでの感染リスクについて政府は何も言っていないことが問題だ、と桜井氏は指摘した。
便器の蓋をしない状態でトイレを流すと、便の中のウイルスが飛び散って壁やドアノブや床などに付着し、それらを通じて人に接触感染する。駅にある公衆トイレはそもそも蓋がなく、それを防ぐことができない。
接触感染や便からの感染リスクなど正しい知識を国民にもっと伝えれば、今よりかなり感染者数が抑えられるのではないか、と桜井氏は述べた。
2つ目は、「不必要なことに対して制限して、必要なことに制限していない」ことだ。「不必要な制限」というのは、例えば「三密」に関してである。マスクをつけている場合はそもそも濃厚接触に当たらないので、過剰なソーシャルディスタンスは必要ない、とのことだ。また、外でやるスポーツを制限するのも、「三密」には該当しないので「ナンセンス」である、と桜井氏は述べた。
また、ゴルフをする際、プレー中は安全であるが、クラブハウスの洗面所やお風呂などは感染リスクが高いので、それをしっかり提示し、注意喚起すべきとの考えを示した。
政府は「危ないところと危なくないところ、注意すべきところをしっかり整理して国民に提示」し、制限対象を見極めて必要なことに制限すべきである、と述べた。
▲写真 ⒸJapan In-depth編集部
次に、細川氏が医療体制について聞いた。桜井氏自身も新型コロナウイルス感染時に病院に入れなかった人の1人である。桜井氏は、医療体制について病院の人的資源と物的資源それぞれの観点から2つの提案をした。
まず、人的資源の有効活用について。桜井氏が入院できなかった理由は、ベッド不足ではなくナース不足であった。当時、高齢者施設のクラスターが発生し、ナースがそちらの対応に追われていたのだ。新型コロナウイルス対応のみならず、普段は介護士が主に行っている高齢者特有のケアも、ナースが全て担っていたので、ナース不足に陥った。
そこで桜井氏は、高齢者の感染者は高齢者専門のグループホームで介護士を手厚くあてて看ることで、ナース不足を緩和し、「入院が必要な人がもっと病院に入れるようにする」ことを提案した。
次に、ベッドなどの物的資源について。現在、「症状がなくなってから72時間経たないと退院できない」とのルールがある。この基準自体を変える必要は全くないが、「症状がなくなった段階でホテルなど別の場所に(患者を)移して72時間の経過観察」をすべきである、と桜井氏は述べた。そうすることで、より病院でのケアが必要な重症患者などに提供できるベッドが増える。
両方の提案に共通する視点は、「今ある医療資源をいかにフル活用するか」ということだ。
最後に、ワクチンについて。
桜井氏は、ワクチン接種が進めば感染はかなり抑えられると述べる一方、「3分の1くらいは受けない」可能性を懸念した。一定数の人はワクチンの副反応などを恐れているからだ。「日本では、予防接種を受けない場合のリスクが十分議論されていない」と桜井氏は指摘した。ワクチンはより多くの人が接種するほど「集団免疫」ができるため、「受けないほうが危ない」と述べた。
ワクチンがある程度普及した後の新型コロナウイルス対策の肝は、「抗体がまだあるのかを定期的に検査して、なくなった時点で接種」し、「感染しない体にし続ける」ことであると桜井氏は締めくくった。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2021年3月13日放送の要約です)
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。