「米大統領、どちらがなっても日米関係に影響なし」内閣総理大臣補佐官阿達雅志参議院議員
細川珠生(政治ジャーナリスト)
「細川珠生モーニングトーク」2020年11月7日放送
Japan In-depth編集部(油井彩姫)
【まとめ】
・米大統領選の争点は、郵便投票の拡大とその透明性。
・訴訟が最高裁まで行っても、公平に裁かれるだろう。
・大統領選の結果で、日中・日米関係は大きくは変わらないのでは。
今週のラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」では、参議院議員で内閣総理大臣補佐官の阿達雅志氏をゲストに迎えた。4年前にも米大統領選の後に出演した阿達氏。今回も、今まさに開票が行われている大統領選に関して、政治ジャーナリストの細川珠生氏が話を聞いた。
阿達氏は、まず今回の大統領選の特殊な要因として、新型コロナの感染拡大の観点から投票日当日に人が並ばないように期日前投票を広範囲に認めたことと、郵便による投票を認めたことを挙げた。
郵便投票は、いつまでの消印のものを有効票として扱うのか等、州ごとでルールが全く異なる。そういった中で開票作業を進めていくと、時間通りに届いた票だけを集計しているのかどうかという透明性が問題になってくる、とした上で「郵便投票のやり方、期日前投票のやり方、及びその開票の仕方と透明性が争点になっている」と述べた。
細川氏は、訴訟の結論が出るまでは選挙の結果も確定できないのか、と聞いた。
「厳密に言うとそうだ」と阿達氏は述べ、投票日を迎える前に「それぞれの地域で選挙制度が公平ではない」と言う理由で既に500件以上の訴訟が起きてることを明らかにした。
さらに、トランプ陣営が、「開票が適切でないということで、現在3つの州で法廷に対して、改めて数え直すことを求めたり、ある一定の日以降の開票を止めることを申し立て始めた」と述べた。
次に細川氏は、選挙人の投票が12月、大統領就任式が来年1月20日に予定されているが、訴訟の影響はあるのか聞いた。
阿達氏は、選挙人の投票が12月16日、選挙人の確定が12月8日であることから、「トランプ、バイデン両陣営共、12月8日までに結論を出したい、という希望を持っている」と述べた。そのため、ここから裁判に発展しても、引き延ばす戦略は考えにくい、とした。
細川氏は、「最高裁の判事の空席がトランプ大統領に近い考えの人になったことで、最高裁まで訴訟が行った場合、トランプ氏に有利な結論が出るのではないか」と聞いた。
現在、最高裁判事9名のうち、6名は共和党が指名しており、保守的な考えを持った人達。残り3名は民主党に近い、リベラルな人達だ。
阿達氏は、「保守的・リベラルというのは、アメリカの伝統的な価値観、特に中絶問題をめぐっての賛成と反対を表す。この選挙に関する裁判はそういう価値観に基づくものではない」と述べた。
その上で、「保守的だからこの制度がおかしい、という議論ではなくて、手続き論としてどうなんだ、ということが争点になる。そういう意味で、最高裁の構成が影響するというよりは、法律の解釈として、あるいは法律の下での平等ということで、冷静な判断を下すのではないか」と述べ、最高裁判事の構成が選挙に関する訴訟の判断に影響を及ぼすことはないとの考えを示した。
次に、細川氏は、この夏アメリカに滞在していた時、「分断に対する人々の疲れを強く感じた」と述べた。今回の大統領選も、分断を煽ったトランプ大統領に比べ、より皆を抱え込むようなバイデン氏に期待が集まってきていると述べ、選挙の結果次第で米国内の状況がどうなるか、聞いた。
阿達氏は、今回の選挙について、選挙人の数では接戦だが、得票数ではバイデン候補が大きな得票数であることに触れ、「それは分断に対する危惧、あるいは今のコロナ対策に対する不安からバイデン候補が支持を集めたと思う」との考えを示した。
また阿達氏は、「今のアメリカの社会は、何か起こるとすぐにエキサイトしてしまう」と述べた上で、黒人男性が警官に撃たれた時、暴動に近いことが起きたことを挙げ、「余裕がなくなって荒んできた」と述べた。
また、トランプ大統領が、中道の人たちを抱え込むのではなく、自分を支持する保守派の、特に右に近い人達だけを対象にするような演説を繰り返したことや、海外からの移民に対して非常に厳しく、排除の論理を出していったこと等を挙げ、「それらが大きく影響して、分断を強くしたことは間違いない」と言う。
また、細川氏は、大統領選の結果により、米中関係がどう変わっていくか聞いた。
阿達氏は、アメリカが2017年に国家安全保障戦略を改定した時に、今までの中国政策は間違っており、20年間中国を国際社会に引き込もうとしたが上手くいかず、逆に中国はどんどん異質な国になっていった、との見方から、「中国を明らかに挑戦者として、あるいは修正主義者として見るという、大転換をした」と述べた。
阿達氏は、こうした考え方は単にトランプ政権や共和党の考えということではなく、民主党系の人達も賛成していたことだとし、「アメリカの社会そのものが中国に対して厳しい態度に変わり、アメリカ人の大半も中国に対し不安感を持つことになった。トランプ大統領が再選されても、バイデン候補が大統領になっても中国に対する厳しい態度は変わらない」との考えを示した。
最後に、細川氏は、日中関係に関し、アメリカが日本に対して何かを迫ってくることがあるかどうか聞いた。
阿達氏は、日中関係はここ数ヶ月あまり動いていないことを挙げ、動いていないということは、アメリカ側からして、日本との間で急いで解決しないといけないことや、対立の構図がなかったという意味だ、と述べた。
また、「日米同盟というのは大事だというベースの上で、多少貿易の問題や駐留経費の問題が出てくるとしても、それほど大きな対立の問題ではない」と述べた。
さらに「トランプ大統領もバイデン候補もアジア外交の中での日本の大事さは非常によく分かっている」とした上で、「バイデン候補もオバマ政権で副大統領としてアジア政策を見ていた。大統領が変わったからといって、日米関係についての考え方ががらっと変わることはない」との考えを示した。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2020年11月7日放送の要約です)
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。