「米、大統領選最新レポート」政治ジャーナリスト細川珠生氏
細川珠生(政治ジャーナリスト)
「細川珠生モーニングトーク」2020年8月22日放送
Japan In-depth編集部(淺沼慶子)
【まとめ】
・民主党副大統領候補ハリス氏、多様性あるアメリカを作りたいという思い。
・バイデン氏優勢が続くかは不透明。
・バイデン氏、トランプ氏ともに高齢。日米共に後継者育成不足問題は深刻。
今回はJapan-In-depth編集長でジャーナリストの安倍宏行が、政治ジャーナリストの細川珠生氏に話を聞いた。
■ 新型コロナウイルスについて
新型コロナウイルス感染拡大の収束の兆しが一向に見えず、世界的に往来が制限されている中、細川氏は今アメリカ・ボストンに滞在しているという。日本からの海外渡航は難しいように思えるが、現状はどのようになっているのか。まず、細川氏が現地から状況を伝えた。
細川氏によると、アメリカに入国する際には厳しい規制があると思われているが、州によって違いがあるという。通常はPCR検査の陰性証明があれば有効だが、必ずしも必要ではない場合もあり、PCR検査の陰性証明がなければ14日間の自主隔離が求められる、と説明した。その上で「基本的にはそれほど難しくはないが、飛行機の便数が減らされているので、入れるスポットは限定されている。移動は不自由だが、入国できないわけではない」と現状を述べた。
では、市中の規制はどう変化しているのか。細川氏によると、ボストンのあるマサチューセッツ州はかなり慎重に経済再開を進めていて、今は4段階のうち、フェーズ3で、レストランもインドアをオープンして良いことになっているが、多くの人がテラスかテイクアウトを利用していて、それほどインドアは利用されていない、という。「バーもまだ営業できず、非常に限定されている。その甲斐もあり、今週初めから200人にいかないくらいの新規感染者で、東京より少ないくらいだ」と伝えた。(8月22日現在)
東海岸以外の感染状況も心配なところだ。安倍氏が南部の感染者は増えている印象だ、と述べると、細川氏は「地域差がすごく出ている。マサチューセッツ州は東北部のニューイングランド地区と呼ばれているが、全体としてローリスクで、感染を押さえ込んでいる状態を何とか維持している」とした。
■ アメリカ大統領選について
アメリカでは、11月に大統領選が迫っている。安倍氏は先日行われた民主党大会にてカマラ・ハリス氏が副大統領候補に指名されたことに触れ、「女性でアフリカン・アメリカンというルーツを持っているが、副大統領候補としては非常に珍しいのでは。」との見解を示した。
▲写真 カマラ・ハリス氏 出典:California Attorney General’s Office
これに対して細川氏は、女性としては3人目で、黒人の血が入った候補としては初であり、副大統領にこれまで女性が就任したこともなかったというこれまでの歴史に触れた。その上で「現在バイデン氏が少し(トランプ大統領に比べ)リードしているという報道もあり、かなり盛り上がっている」と白熱する大統領選の今を伝えた。
バイデン氏は現在77歳で、トランプ氏も史上最高齢で大統領に就任した。ご高齢の方同士の戦いとなる中、安倍氏はハリス氏の評価について尋ねた。
▲写真 バイデン氏 出典:flickr : Gage Skidmore
細川氏は、「ハリス氏には「初」というキャリアがついてきた。カリフォルニア州の司法長官を初めて務め、女性からの評判も良い」と述べた。更に「ジャマイカとインド人のハーフだが、アジア系の血も入っているので、多様性の象徴だ」とルーツに触れた上で、幼少期に公民権運動に両親が参加していることをハリス氏も見ているので「多様性あるアメリカを作りたいという思いは非常に強いのではないか。逆にトランプ大統領は移民政策などにおいて多様性を受け入れないスタンスなので、この違いは鮮明に出ていると思う」と両者の対称性を指摘した。
次に安倍氏は、前回の大統領選ではヒラリー・クリントン氏が優勢と言われていたが、最後にはトランプ氏が当選する驚きの展開だったことを指摘し、11月3日の大統領選までまだ2ヶ月ほどある中、このままバイデン氏優勢が続くか、尋ねた。
これに対して細川氏は「世論調査では差が縮まってきている。前回の選挙も得票率ではヒラリー陣営が勝っていたので、選挙戦略で選挙人登録者の多いところを取れた方が勝つと思う。」との見解を述べた。そして、2人のニュースがアメリカでは豊富に報道されているが、「トランプ氏は内容の良し悪しは別だが一貫性がある。バイデン氏は色々な人に意見を聞いて、どんな政策が出てくるか分からないという不安がある。私がアメリカ人ならそう思う。今優勢のバイデン氏がこのまま優勢かどうかは分からない」とした。
また、アメリカ大統領の外交姿勢は日本に大きな影響を及ぼす。細川氏は「対中政策にどう絡むか、という点が日本にとっても重要になると思う。日本も明確に態度を示す必要がある」と指摘した。
最後に、今回の両候補者が高齢であることに触れ、「後継者育成不足が大きい。日本もきちんと後継者を育てていくということをアメリカ大統領選から学んでもらいたい」と危機感を示した。そして後継者育成について、「意図して(育成を)行わないと、中々勝手には育たない。日米両国とも反省をしなければならないと思うが、そういう視点をもって見れば、他国の大統領選だが色々な角度から関心をもって見れるのではないか」と述べた。
安倍氏も「日本も香港問題や尖閣問題など外交が活発化し、議連から政府に申し入れも行っている状況だ」と日本の現状に触れた上で、アメリカ大統領選をはじめとした外交問題も引き続き注目しながら、内政にも目を向けていきたい、とした。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2020年08月22日放送の要約です)
「細川珠生のモーニングトーク」
ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。