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.国際  投稿日:2017/6/15

韓国文政権のあきれた反米活動


朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

【まとめ】

・韓国文在寅政権下、THAAD(サード)配置妨害活動があからさまに行われている。

・在韓米軍イベントに出演予定の韓国人アーティストに脅迫届くなど反米活動エスカレート。

・文大統領は韓米関係の重要性を認識すべき。

 

■THAAD配備妨害活動

韓国では文在寅(ムン・ジェイン)政権登場後、従北・左派勢力の目に余る反米活動が横行している。

まずそれは高高度防衛ミサイル(THAAD)配置妨害活動として進められている。

 6月12日付韓国文化日報によれば、THAADが配置されている慶尚北道星州(ソンジュ)郡では従北・左派勢力が基地に通じる道路で無法な「検問」まで行い、機材の搬入だけでなく発電のための石油搬入なども阻止している(高圧電力がなくてはXバンドレーダーは使えない)。

1000億円の貴重な武器(世界に6セットしか配備されていない)が宝の持ち腐れとなるだけでなく一部精密部品に劣化が始まっているというのだ。軍では仕方なく高い費用をかけてヘリ輸送を行い最低限の油だけは供給しているという。この状況については米国のFOXテレビまでが報道したが、韓国の大手マスコミはなぜかほとんど報道していない。文政権がこの無法行為を放置しているからだと思われる。

文政権はいまTHAAD配備を遅らせる方針を取り、米中の間を泳いでいる。THAADミサイルは6基が1セットなので、遅れて搬入した4基は「追加配備」とは言えないのだが、文大統領はそれを「追加配備」などと決めつけ、その報告が無かったとして国防部に圧力を加え政策室長を左遷させた。

だがこの問題は、4月26日にTHAADが搬入された時点で当時大統領候補だった文大統領も承知していたという。そうしたことから一部マスコミも首をかしげており、保守系市民の間では「文大統領は初期“痴ほう症”ではないか」と揶揄している。

 

■米国内にも

そればかりか文政権は韓米地位協定を無視して国会の批准云々を主張し、国防長官と環境部長官、それに国家情報院長が協議して処理すれば済む「一般戦略環境影響評価」まで持ち出してTHAAD配備を遅延させようとしている。これに対して米国では韓国が必要としないならば撤収してその予算をほかに回すとの強い主張まで出ている。

米国のマスコミも文政権には批判的だ。ニューヨーク・タイムズは6月8日(現地時間)、「北朝鮮は今年10回目のミサイルを海に撃ち、ソウルはミサイル防衛(THAAD)計画を停止」という記事で、「THAAD配備が少し遅れるからと言って地球の終わりが来るわけではないが、文在寅大統領はここ数年間の北東アジア情勢が根本的に変わったことを知っておくべきだ」と書いた。

ワシントン・ポストも「韓国の新しい指導者が米国のミサイル防衛システム(THAAD)に停止ボタンを押した」「今回の決定は文在寅政権とトランプ政権の潜在的な確執を示している」と報じた(朝鮮日報日本語版2017/06/10 08:52)。

 

■反米活動は文化交流にも

また従北・左派の反米活動はTHAAD問題だけでなく民間の文化交流にまで及んでいる。

米軍基地のある京畿道議政府(ウィジョンブ)市では「米第2師団創設100周年記念コンサート」で、芸能人の出演が従北・左派勢力の妨害により全員キャンセルするという事態が引き起こされた。この事件も米軍関係者に強い不快感を与えた。

6月10日午後6時、1階から3階まで観客3500人で埋め尽くされた議政府体育館で衝撃が走った。コンサートでオープニングを飾る予定だったベテラン歌手のインスニ氏が、赤いスーツを着てステージに登場したものの、歌わずに頭を下げ続け「申し訳ございません」と言い残してステージを去ったからだ。それ以外に出演が予定されていたCrying Nutも謝罪しただけでステージを降りた。そのほか出演予定だったEXID、OH MY GIRL、SWEET SORROW・San Eら有名歌手や女性アイドルグループは姿さえ見せなかった。

朝鮮日報によると、出演予定だった歌手たちは、これまで一部のネットユーザーたちから執拗に「出演するな」と圧力を受けていたという。コンサート出演を予定していたが取り消したある歌手の所属事務所関係者は「出演するなという脅迫めいた電話が来たり、ネット上に悪質な書き込みをたくさんされたりした」と話す。

議政府市関係者は「コンサートに出演する予定だった歌手たちのほとんどが当日午前に出演キャンセルの意向を伝えてきた。『出演したらただでは置かない』という一部ネットユーザーの圧力に屈して出演を取りやめたと聞いた」と説明した(朝鮮日報日本語版2017/06/12 10:05)。

こうした事態は文在寅政権が登場し、その中枢を従北・左派が占めたことで予想はされてはいたが、ここまで無法状態になることは想定外である。

文大統領は周りのおだてに乗って、反米親北ムードの助長が自身の存在感を高めると錯覚してはいけない。それば大きな代償を伴うことになるだろう。文大統領は、韓米同盟が韓国にとってどのような位置を占めているかを今一度冷静に熟慮する必要がある。


この記事を書いた人
朴斗鎮コリア国際研究所 所長

1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。著書に『揺れる北朝鮮 金正恩のゆくえ』(花伝社)、「金正恩ー恐怖と不条理の統治構造ー」(新潮社)など。

朴斗鎮

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