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.国際  投稿日:2026/2/20

注目される金正恩の先代超え絶対化作業と後継者問題


朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

 

【まとめ】

・朝鮮労働党第9回大会を2026年2月下旬に開催される。

・金正恩の先代批判は、金日成の政策にまで及び始めている。

・後継者問題として娘「ジュエ」の扱いにも注目。

 

2月7日、朝鮮労働党中央委員会第8期第27回政治局会議は、朝鮮労働党第9回大会を2026年2月下旬、平壌で開会する決定書を全会一致で採択した。

まもなく開かれる9回大会で最も注目されるのが、首領絶対体制統治の要である金正恩の絶対化とそれを補強する後継者問題に関する取り扱いだ。

 

朝鮮総連は、2月16日の金正日誕生日に際して送った手紙で、「チュチェ朝鮮の偉大な太陽であり、総連と在日同胞の慈悲深い父母である敬愛する金正恩元帥様に謹んでお送りします」と金日成にだけ使われていた「太陽」の称号を金正恩に使った。党8回大会で父金正日から奪った総書記の職責に続き、祖父の「太陽」の称号まで奪おうとしている。

 

■先代超えに躍起となる金正恩

 

 金正恩総書記は党8回大会を前後して、自身の権威を高めるための手法の一つとして、先代の政策を批判する言動と行動をたびたび取ってきた。それは、ハノイ米朝首脳会談決裂後の2019年10月における金剛山観光に対する全面否定発言で公然化した韓国側が建設した施設を視察したに金正恩は、「見るだけでも気分の悪い飯場施設のようだ」と罵倒し前任者の政策を批判して撤去を指示した。この前任者の中に父である金正日国防委員長が含まれていたことは言うまでもない。

 

 その後も金正恩は事あるごとに先代批判をちらつかせ、ついには金日成の誕生日を「太陽節」から「4・15節」に、金正日の誕生日を「光明節」から「2・16節」に変えてしまった。節目に必ず行っていた「錦繍山太陽宮殿参拝」も、時々参拝を怠ったり、皮ジャンパー姿での不敬な参拝も公然と行った。

 

 最近に至っては祖父・金日成の農業政策まで公然と批判しはじめた、2月3日の「三光畜産農場」の操業式で、金日成の農業政策を「歴史的に農村問題に関する党の政策も多く提示され、社会主義農村テーゼを貫徹するための闘争も半世紀以上繰り広げてきましたが、どうしてわが国の農村が疲弊した状態から抜け出せずにいるのかを改めて認識する必要があります。率直に言って、これまで農村建設では空論ばかりしてきたとしても過言ではありません。端的な実例を挙げても、各道では幾つかの農村を象徴的に整備しただけで農村建設において成し遂げたことはこれといってありません。実行性、可能性もない政策は理論に過ぎないもので、現行政策とは言えないのです。農村に対する国家の投資や支援が散発性と一過性、誇示性の面から行われたことも農村建設における誤謬だと見なすべきですと批判して人々を驚かせた。

 このようにいま金正恩の先代批判は、金日成の政策にまで及び始めている。

 

この点について朝鮮日報は次のように報道した。

【人民のためだとして祖父が生前過ごしていた私邸を取り壊してしまい、「祖国統一」の遺訓を覆していったのも、もしかすると在日朝鮮人出身の舞踊家だった母親を金氏一家の嫁としては認めなかった祖父に対する鬱憤(うっぷん)晴らしなのかもしれない―と思う。金正恩時代の変化を「かつてとは比較できない飛躍的発展」と褒めたたえ、楽園浦の人々が「経済力が弱くてこれまで町の名前を呼ぶのも恥ずかしかった」という文章を労働新聞に載せるのも、先代を遠回しな言い方でおとしめる手法を使った金正恩の偶像化、と読める】(朝鮮日報2026・2・8)。

 

  こうした金正恩の絶対化作業の延長線上で、党9回大会における娘「ジュエ」の扱いにも注目が集まる。幼い「ジュエ」の「後継者擁立」騒動も金正恩の先代否定行動の一つかもしれないからだ。祖父金日成も父金正日も錦繍山太陽宮殿で眠りながら仰天しているに違いない。

 

そういったことも含めて、「ジュエ」と言われる金正日の娘が後継者として扱われるか否かも金正恩絶対化の一環として大きな注目点となる。

 

■「後継者は白頭の血統」規定で娘とじゃれる金正恩

 

 北朝鮮の後継者問題は、首領絶対化作業の重要な構成部分となる。したがって金正恩の絶対化レベルを高めるうえで後継者問題が出てくるのは当然の帰結である。首領は代を継いで絶対化されなければならないからだ。

 

 この後継者決定における正当化論理では、金日成・金正日時代と金正恩時代では大きな違いがある。

 

金日成が金正日を後継者とするに当たっては、指導者の世襲を許さなかったマルクス・レーン主義のソ連や中国の目を強く意識して、後継者決定が世襲でないことを強く主張した。その主張の要点は、「後継者たるものは、指導者としての資質を完璧に備え金日成に最も忠実でなければならず、次世代を代表する人物でなければならないが、その人物がまさしく金正日だ。金正日は金日成の息子ではあるが、それはたまたまそうなったのであって金日成の息子だから後継者としたのではない」というものであった。

 

 しかし、このまやかしの「後継者論」は金正恩時代になって、本性を剥き出しの「世襲後継者論」となった。それはすでに社会主義陣営が崩壊し、北朝鮮がマルクス・レーニン主義を放棄していたからである。金正恩には旧ソ連の論理や中国に気兼ねする必要がなくなったのだ。

 

 金正恩は権力を掌握した後、自身の絶対化を進めるために、2013年6月にそれまでの「首領絶対化経典」である「党の唯一思想体系確立の10大原則」を「党の唯一的領導体系確立の10大原則」に作り変えた。それは、自身を絶対化し、義理の叔父張成沢を始めとした障害勢力排除のためであり、後継者を永遠に世襲とするためであった。

 

 「党の唯一的領導体系確立の10大原則」第10条は、主体革命の継承は代を継いで完成されなければならないとし、その第2項で、それは白頭の血統によってなされなければならないと明記された。当面しては金正恩の子供だけが後継者になれると規定したことになる。

 

*10条 偉大な首領金日成同志が開拓され、金日成同志と金正日同志がおし進めてきたチュチェ(主体)革命偉業、先軍革命偉業を代を継いで最後まで継承完成しなければならない。

2)わが党と革命の命脈を白頭の血統で永遠に引き継いでゆき、チュチェの革命伝統を絶え間なく継承発展させ、その純潔性を徹底的に固守しなければならない。

 

 この規定によって、金日成・金日時代のまやかしの「後継者者規定」は、その本性を剥き出しにした「白頭の血統後継者規定」となった。

 

 金正恩が幼い娘を連れて、誰はばかることなくいちゃつきながら、金日成・金正日時代の幹部たちが仰天するような行動を取り続けても、誰一人それに異論を唱えられないのはこの規定のためである。しかし娘を後継者にしようとする金正恩のこの「偉大な構想?」が、北朝鮮の運命にどのような結果をもたらすかは、誰にもわからない。

 

韓国の国家情報院は、2月12日に韓国国会で、北朝鮮の金正恩総書記が10代の娘ジュエを後継者に選んだとの見方を示し、「内定段階」にあるとみられると説明した。

 

まもなく開かれる朝鮮労働党第9回大会では、金正恩の先代路線否定と「娘問題」がどのように扱われるかを明らかにするだろう。

 

トップ写真:金正恩氏 北朝鮮、平壌 – 6月19日

出典:Contributor/Getty Images

 




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