朝鮮労働党9回大会は金正恩絶対化の大会
朴斗鎮(コリア国際研究所所長)
【まとめ】
・朝鮮労働党9回大会は金正恩総書記を「天下一の偉人」と仰ぎ、偶像化と絶対権力の確立を強行した大会である。
・指導理念を先代の継承から「独創的な金正恩思想」へと格上げし、神格化を一気に進めた。
・メディアから先代の名が消えつつあり、名実ともに金正恩単独の独裁体制へ移行している。
朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、2月25日、2面にパン・ソンファが書いた正論「人民の歓喜、江山にあふれる」で、金正恩総書記推戴について「全国全人民が無限の激情と歓喜でときめく」と記述した。そして金正恩を奇跡の時代を開いてゆく「天下一の偉人」と表現するなど、金正恩偶像化・絶対化のための宣伝扇動を強めた。
この「正論」の論調を見ても分かる通り、朝鮮労働党9回大会は、金正恩絶対化のための大会だったといえる。それはまた、先代の功績を薄め金正恩の功績を誇張し宣伝する場でもあった。
■指導理念は「金日成・金正日主義」から金正恩思想(主義)へ
朝鮮労働党第9回大会では、大会参加者たちは金正恩バッジを胸につけ(金正恩だけが金日成・金正恩バッジ)討論者たちは、「金正恩同志の革命思想」万歳を叫び続けた。
李日煥(リ・イルファン)書記の「金正恩を総書記に再推戴する提議書」では、「金正恩同志の革命思想」を「独創的な思想」であると強調し「金正恩主義」に格上げする意図が垣間見えた。提議書には次のように記されている。
「金正恩同志は社会主義全面的発展期の複雑で難しい理論実践的諸問題を解決されながら、新たな原理と方法の探求と具現、その科学性と生活力の検証を一つに統一させ、わが国の将来発展に巨大な影響を及ぼす思想理論を確立して論述しました。
最も科学的で最も通俗的で最も人民的な金正恩同志の独創的な思想理論は、この世の誰もやり遂げられない偉大な発見であり、これは私たちの貴重な革命的財富で、歳月を継いで永遠に賛美される現代の最も綱領的な指針となります。
過去5年間に発表された演説文献、報告と結論、談話と書簡は、金正恩同志の政治理念と独創的な思想、理論、方法を集大成したものであり、私たちは今後も徹頭徹尾これに基づいて強大で文明な社会主義国家を立ち上げるようになるでしょう」。
これまで北朝鮮では金正恩の革命思想を「金日成・金正日主義」の継承と位置づけてきたが、上記文章は「継承」よりは「独創」に重点を置いている。そして「最も科学的」と規定した。この規定は、「金正恩の革命思想」が金日成・金正日の思想をも超えた「最も高い位置にある」ことを示す規定と受け止めることができる。
この提議書に基づく2月22日の決定書では、「偉大な金日成・金正日主義をわが党の指導思想として確固ととらえ(注:基づきではない)、・・・」と金日成・金正日主義が1カ所だけ言及されたが、あとは金正恩崇拝・称賛のオンパレードだった。
このように見ると、今回党大会では、北朝鮮が党・国家の指導理念を「金日成-金正日主義」から「金正恩の革命思想=金正恩主義」に置き換える方向に一歩踏み出したと見ることができる。それを裏付けるように「金正恩の思想」が強調されるのに伴い「金日成・金正日主義」が北朝鮮メディアから消えつつある。
■北朝鮮メディアから消えつつある「金日成・金正日主義」
労働新聞は、党大会期間中の2月23日までは「金日成-金正日主義」の文言を所々で使用していた。2月22日の李日煥書記による金正恩総書記再推戴提議書でも使われた。しかしそれは、金正恩が金日成-金正日主義偉業に最も忠実な継承者であることを強調するくだりで先代を褒め称えるためではなかった。
だがその後、労働新聞には「金日成-金正日主義」は出てこない。9回党大会関連総合報道である長文の記事(2.26)でも「金日成・金正日主義」は出てこなかった。この記事では「天才的な思想理論」とし「金正恩の思想」を浮上させた。2月26日に掲載された金正恩の結語(2・23)でも「金日成・金正日主義」は言及されなかった。
25日夜に開かれた9回党大会記念閲兵式演説でも同様だ。ただ27日、労働新聞は錦繍山太陽宮殿参拝(2.26)の記事で、金正恩を「金日成-金正日主義偉業の最も忠実な継承者」としながら「金日成-金正日主義」の用語を使った。しかしこの文言は「決定書」同様、継承者であることを強調するために使われた用語だった。
9回党大会後に行われた群衆示威(2.27)および9回大会参加者講習会(2・27)でも「金日成-金正日主義」は消えた。講習会では金正恩の思想と領導への「一心忠誠」決議がなされただけだった。
3月3日の労働新聞は「政治用語解説」コーナーで「党事業体系」について説明しながら「首領」という用語を度々使用しながら「金正恩思想」と結びつけ「首領の思想」と表記した。そして3月に入っての労働新聞に最も多く載る記事は、金正恩が提示した思想と課題を深く体得しょとするもので、「金日成・金正日主義」は全く登場しなかった。このように、「金日成-・金正日主義」は労働新聞の紙面から消えていった。
いま北朝鮮は、金正恩の「わがまま」を「独創的」とし、比較概念を抹殺した情報封鎖のもとで、彼を「天下一の偉人」に作り上げる世界唯一の「独善的国家」に成り下がっている。
トップ写真:金正恩総書記-ロシア・ウラジオストク ― 2019年4月25日
出典:Photo by Mikhail Svetlov/Getty Images




























