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.国際  投稿日:2025/12/23

李在明独裁に警告を発した李洛淵元総理の演説全文(下)


朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

【まとめ】

・ウォン急落による物価上昇と輸入原価の高騰で、韓国は深刻な経済危機に直面。

 

・アメリカをはじめとする西側諸国は李在明大統領の対中姿勢や発言を背景に不信を強めており、韓米同盟が複合的な危機に。

 

・危機の相当部分は韓国自身が招いた面も。節度ある権力行使と健全な議会政治によって克服すべき。

 

 

2つ目は経済危機です。

 

ウォン・ドルレートがコロナ事態以後25%以上、李在明政府出帆以後半年も経たないで8%以上も急騰(ウォンの急落)し、われわれはそれだけ貧しくなりました。世界の主な通貨がドルに対して強くなる中で、ウォンはドルに対して弱くなっています。その結果ドル以外の通貨に対するレートはより多く上昇(ウォンの下落)しました。それは、韓国経済に対する国際金融市場の冷静な視線を反映しています。

為替の急騰(ウォンの急落)は輸入依存度が高い韓国の輸入原価と物価を上昇させ経済全般の危機を触発しています。政府は為替と物価の防御に国民年金まで動員しているが、それは国民の老後と未来を賭けた博打となる可能性があります。

 

米国との関税交渉で韓国は大変な負担を抱えることになりました。毎年200億ドルずつ10年間で2000億ドルを直接投資することを含み、時限は定かではないが、概ね7000億ドル以上を米国に渡さなければなりません。われわれのお金で1000兆ウォンを超えます。しかしトランプ大統領は、韓国の対米投資学を9500億ドルだとSNSを通じて公開しました。1300兆ウォンです。

われわれは、毎年耐えられる外貨流出額として韓国銀行が推算した65億ドルをはるかに超える巨額を米国に差し出さなければなりません。

それでなくとも鉄鋼と石油化学など従来の主力産業が、次々と倒れています。自動車輸出も減少しています。まだ半導体、造船、防衛産業、原子力発電が残っているとはいえ、何年耐えられるかわかりません。

 

主力産業の崩壊は中小企業の崩壊をもたらします。それなのに政府の経済政策は、消費クーポンのような現金バラマキが他の政策を圧倒する様相を見せています。その結果、国家の負債増加速度がいっそう速まり、インフレの圧力が加速し物価高騰を誘発しています。早くも国際通貨基金が財政健全化と構造改革を韓国に勧告しています。

遊興業を含む自営業はより悲惨に崩壊しています。自営業の廃業が年間100万名を超えました。創業1年以内に廃業する場合が22%、3年内に廃業する場合が47%にもなります。1400万自営業者の中で、3分の2が実質所得100万ウォン以下しか稼いでいません。そのうち100万名は実質所得がない状態だといいます。鉄鋼の浦項、石油科学の麗水を含む地方都市の商店街は、空室率が3分の1を超えています。わが世の春を歌っていた遊興街の風景はすでに追憶の昔話となっています。全国的に午後9時以後のクレジットカード決済額がコロナ事態以前に比べて40%も減少しました。

主力産業、中小企業、自営業の沈滞余波で求職者一人あたりの職場がIMF外貨危機(2008年)以後最低に落ち込みました。

このように実質所得が減少し、産業が倒れ、職場が減少していますが、これが経済危機でなくて何でしょうか?

 

3つ目は対外関係の危機です。

 

李大統領は執権以前から「駐韓米軍は占領軍」だとか、中国に対しては謝謝(シェシェ)といえば良い」などの発言で、米国など欧米の疑心を買いました。執権後には、「中国嫌悪を処罰する」との発言と措置で一層疑心を買いました。米国は特にトランプ大統領側近が先頭に立って、李在明政府の中国傾斜を警告しています。

11月21日南アフリカ共和国で、ドイツのフリードリッヒ・メルツ総理が、李大統領に中国に対する認識が気になるとして説明を求めたことは、韓国政府の対外路線に対する西側の不信を表したものです。

基本的に韓米両国の間では、安保脅威認識の乖離があります。韓国は北朝鮮を脅威と見ますが、米国は中国を脅威と見ています。そのような乖離を韓国よりも米国がより大きく受け止めています。脅威認識の乖離は、戦略目標の乖離につながります。台湾海峡の危機が発生すると、それは韓米同盟の試験台となりうるという理由がすなわちそれです。

 

これに比べて、北朝鮮は中国ロシアとの連帯を強化しました。北朝鮮、中国、ロシアはすべて核兵器を持っています。韓米日3カ国も連帯していますが、核兵器は米国だけが持っています。米国の核の傘は、韓国で完全な信頼を得ていません。

脅威の認識と戦略目標でも韓米日の3カ国は統一されておりません。そうした中で中国は、西海(黄海)にすでに16個の人口構築物を設置しました。直前の一昨日一日だけでも中国とロシアの軍用機9機が。わが防空識別圏であるKADIZに侵入し出て行きました。わが安保がこのように脅威を受けています。

韓米同盟72年の間、幾度も困難を重ね、何回かは危機に直面しました。その危機は概ね2つの要因で生まれました。時代的要因と大統領の要因です。

1969年から1974年まで在任したリチャード・ニクソンの時の韓米同盟の危機は、時代的背景が主な要因でした。米国のベトナム戦争敗戦と米中ピッンポン外交によるデタント緊張緩和がそれでした。ニクソンは駐韓米軍1個師団兵力2万名を撤収しました。1977年から1981年まで在任したジミー・カーター大統領時の韓米同盟危機には、大統領要因が大きく作用しました。駐韓米地上軍の完全撤収を公約して当選したカーター大統領は、道徳主義政治と人権外交を追求し、韓国の緊急措置9号解除と裁判者釈放を要求しました。維新末期の朴正煕大統領は、緊急措置9号で多くの市民を逮捕し、駐韓米地上軍撤収に対備して核兵器開発を秘密裏に推進することで米国をより刺激しました。米国議会と軍部の反対で駐韓米軍撤収は実現しなかったが、1979年の朴正煕・カーター会談は怒声が行き交うほど雰囲気が険悪でした。

 

それに比べれば、現在の韓米同盟危機には、時代的背景と大統領要因が共に作用しています。それだからより複合的でより困難なのです。時代的には米国単独覇権時代が米中覇権競争時代に変化し、米国の製造業共同化(衰退)が、トランプイズムを生みました。それだけ米国は鋭敏になっています。大統領の要因としては、米国の既存価値であった多者主義、自由貿易、民主主義を米国優先主義、保護貿易、独裁者好みに旋回し、同盟までも取引的関係に認識するトランプの執権が大きく作用しました。韓国においても、李在明大統領が、中国傾斜と民主主義破壊の疑いを受けたことが、韓米同盟の大きな負担です。

 

今韓米同盟は、そのように転換期的複合的危機に直面しています。米国は韓国に中国牽制のより多くの役割を担うよう求めています。しかし韓国は米国の要求にだけ従うのは難しいです。韓国が米国に傾くと、中国は韓国を経済と安保で圧迫します。韓国のサード(THAAD=終末高高度防衛ミサイル)配置以後中国から報復を受けたように、中国の圧迫は容赦もなく乱暴です。韓国は、米国と中国の間で重大な試練を受けています。しかし韓国の対外危機管理は緻密ではありません。むしろ危機の相当部分は韓国が自ら招いたものです。

 

状況は楽観できません。国が滅びるのではないかとの心配の声が街角からもよく聞こえてきます。私は、わが国民の力量と愛国心を信じます。わが国民は国家の危機に顔をそらしたり不合理な状態を黙認したりもしないということを私はよく知っています。しかし、国民にそのような決断の苦痛を味わわせる前に、権力が節度をもち議会政治が健在することがあるべき正しい姿ですが、そのような当然の期待を現実は絶えず裏切っています。

大韓民国の3大危機を速やかに克服することを願います。

ありがとうございました。

 

(日本語訳:朴斗鎮

 

トップ写真)与党・民主党の候補者選考最終レースを制した京畿道知事・李在明(イ・ジェミョン)氏が、元首相・李洛淵(イ・ナギョン)氏と握手を交わす(2021年10月10日 韓国ソウル)

出典)Photo by Kim Hong-Ji – Pool/Getty Images




この記事を書いた人
朴斗鎮コリア国際研究所 所長

1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。著書に『揺れる北朝鮮 金正恩のゆくえ』(花伝社)、「金正恩ー恐怖と不条理の統治構造ー」(新潮社)など。

朴斗鎮

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