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.社会  投稿日:2014/4/22

[為末大]<失われたセンス>最も怖いのは自分が失った能力に気づかず、まだあると思い込んで戦略を立ててしまう事


為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)

執筆記事プロフィールWebsite

 

トップアスリートに教える機会があった。
その時にハードルを説明したのだけれど、なんとなく99%ぐらいしか伝えられなかったと感じた。昔は動きを見ていて骨の動きまで見えるようだったのが、それがもっとぼんやりとしか見えなくなっていた。

それから、昔「この人すごいな」と思っていた人のアイデアが、ふとほんのわずかだけずれているように感じる事があった。なんというか「あんなにかっこいいと思っていた服」が5年後にはちょっとずれて見えるような瞬間。

僕の友達がエンジニアだったのだけれど、自分よりすごい若者達が出てくるのを見て、このままここにいると危ないと思い、彼らをマネジメントする側にまわったという話をしてくれた。能力が衰えてしまった時、すごい存在が出てきた時、どうするか。

プログラミングの世界は早く始めるほど有利だそうで、だとしたら後発の世代の方が強いと思う。言語もあと20年くらいしたらネイティブのバイリンガルなんて山ほど出てくる。一方で30歳から新しい言語を学んでも少なくとも同時通訳をできるのは難しい。

最も恐ろしいのは自分が失った能力に気づかずにまだあると思い込んで戦略を立ててしまう事。特に実績や地位があると周囲があなたの能力は衰えたと教えてくれないし、本人も受け入れられない。それが衰退を招く。現役時代よく失敗した。

負けている事、衰えている事に気づかなくて、全体が滅びていく。

 

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