[為末大]自分自身の「余白」の価値〜「不確定な要素=余白」が人を夢中にさせる。
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
人間が「なぜスポーツが好きか」というと、不確定だからだと思う。
ドラマティックには予想外の要素があって、そこにはどうなるかわからないという、はらはら感がある。人間が夢中になるゲームというものには大体不確定な要素が入っている。
ところが安定した結果や品質を求められると、それを統括する側はなるべく不確定な要素を排除しようとする。 余白が多いと、読めない領域が大きくなり、コントロールするのが難しくなる。均一のものを出すには、全部事前に決めてしまう方がいい。
不思議な事に夢中になって興奮している人をみると、それは周りにも伝染する。
なぜ人が夢中になるかというと、予想がつかないから。結末もプロセスもわかりきっているものに人は興奮しない。決まりきっているものには自分が介在する余地がない。
事前になるべく作っておきたい。ただ、その場で起きる事で変化する余白も残しておきたい。
思い込みが強く、悩んでしまう人も自分自身に余白がない。あるべき人生が既に決まっていて、失敗していないかどうかだけが気になって生きている。
あの時に知っていた事は、今知っている事とは違う。情報や条件が変わり続けるという事は、たぶん答えも変わり続けるという事で、余白を持たない計画は、計画を立てた後に出てくる新しい情報を排除してしまう。知ったら答えが変わってしまう。
計画しつつ、予想しつつも、そう出なかった場合の余白も残しておく。そして何より、自分自身が変わってしまっても構わないという余白を自分の中に残しておきたい。
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