[為末大]<限界を知るから人は考える>日本的精神論・体育会的根性論は「限界の概念」の無さが特徴
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
僕は日本的精神論、体育会的根性論は、限界の概念の無さが特徴だと思っている。例えば能力が劣るチームが優勝したい時、どうすればいいかを考える作業の途中で説明がつかない所を全部「気持ち」という概念で通してしまう。
「気持ち」は計れないから、限界もない。だから「気持ち」という言葉を出してしまえばもうそこで思考は終わってしまう。確かに気持ちは重要なのだけれど、それは計算に組み込むべきではなくて、気持ちにも体力があり限界がある。
「自分が何に向いているかは努力してみなければわからない」
確かにそうなのだけれど、一番貴重な時間という資源を入れて考えるとあながちのんびりと一つの事だけに努力を割いていられない。人生で20年ずつ頑張っていけば、3回ぐらい向かないものに時間を費やせばもう可能性は尽きる。
中国のお見合い番組。10人と出会える。今の人を断れば次の人が誰かが明かされる。一度断れば戻る事が出来ない。出演者は常にジレンマに悩む。今の人にすべきか、それとも次の可能性を探るのか。1時間で番組は終わってしまう。時間との戦い。
「限界はない」という言葉を残した人達も寿命で死ぬ。
時間に限界がある以上、何に気持ちと努力を割り振るかを考えないといけない。こりゃだめだとどこで諦めるのか、それとももう一踏ん張りするのか。結婚も、夢も、人生も、全部タイムリミットがある。
練習時間がふんだんにある大学時代から時間が限られた状況の社会人になって、成績がよくなる選手が結構いる。限界を知るからこそ、人は考え始めるように思う。
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