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.国際  投稿日:2014/6/25

[藤田正美]<露プーチン大統領が「軟化」>プーチン大統領のウクライナ派兵権返上の真意


Japan In-Depth副編集長(国際・外交担当)

藤田正美(ジャーナリスト)

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ロシアのプーチン大統領は、議会上院に対して、ウクライナに派兵する権利を返上すると通知した。その権利は、ウクライナ危機が始まったときに、ロシア系の人々を守るとして大統領に与えられていたものである。

ウクライナのポロシェンコ大統領が和平提案をして、プーチン大統領がそれに応えたという構図だ。これでウクライナ東部の親ロシア派武装集団が投降すれば、取りあえず危機は収まると言ってもいいのかもしれない。

もちろん火種はくすぶり続ける。大幅に州の自治権を拡大するのか、EUへの加盟はともかくNATO(北大西洋条約機構)という軍事同盟との関係はどうするのか、そもそも経済を立て直すことができるのか。ロシアが併合したクリミアの返還を求めるとしているが、それはほぼ不可能。それをポロシェンコ大統領は国民にどう説明するのか。

ポロシェンコ大統領はビジネスマンだから、経済には詳しいかもしれないが、これまでウクライナを危機に導いてきたのは、親ロシア、新西欧を問わず、指導者たちの混乱だった。ポロシェンコ大統領がそういった前任者たちの轍を踏まないという保証はどこにもない。

ウクライナ危機が鎮静化の方向に向かうことで、EUも胸をなで下ろしているだろう。何と言っても、危機が深化する中で、ヨーロッパの抱えるエネルギーの脆弱性が再び露呈していたからだ。

つい先日にはウクライナ東部でヨーロッパにも向かうガスパイプラインが爆発した。その原因はまだ不明だが、ウクライナ東部がこれからも不安定要素を抱えたままであることは間違いない(欧州に向かうガスの半分はウクライナを通過している)。

この状況にポーランドなどは、欧州エネルギー同盟の設立を提案していると報道されている。加盟各国がばらばらに購買するのではなく、まとまって買うことでパワーをつけようというのが狙いだ。それ自体は悪い話ではないが、これでまとまるかどうかというと微妙だ。

ガスの購買価格は国によって異なる。たとえばドイツなどはポーランドよりも安い価格で買っている。購買同盟によってコストが安くなる保証があればともかく、高くなるのでは何のメリットもない。それに、ロシアではなく液化天然ガスを中東やアメリカから輸入するという選択肢もある。

そういう流れで見ると、プーチン大統領がここでいったん「軟化」したのは、あまりに強硬姿勢を続ければ、エネルギーで不利になることを避けるため、という見方もできるかもしれない。

 

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