.国際  投稿日:2014/8/14

[藤田正美]米軍がISISに空爆を開始したイラク、人道支援物資のトラック280台を入国拒否するウクライナ

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Japan In-Depth副編集長(国際・外交担当)

藤田正美(ジャーナリスト)

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イラクではアメリカ軍がISIS(イラクとシャームのイスラム国家)に対して空爆を開始、イギリス軍もトルネードを偵察用に派遣した。

名目的には北部の少数宗派を保護するなどとしているが、要はイラクに挙国一致体制ができるまでの「時間稼ぎ」ということだ。地上軍を送らずにどこまで時間を稼ぐことができるかがポイントだが、イラクのマリキ首相は今のところ退陣を拒否している。

ウクライナ情勢はますます不透明になっている。ロシアが「人道支援物資」を積んだトラックなど280台をウクライナとの国境に向かわせているのに対し、ウクライナ政府は入国を拒否する構えだ。

国際赤十字とEU、ウクライナ、ロシアは人道支援に関して合意しており、ロシアはその一環と主張している。今のところロシアは、強引に国境線を突破する構えは見せていない。

ウクライナ政府は、ロシアがもし赤十字のトラックに積み替えることを認めるなら、入国を許可するとしている。要するに、人道支援物資に親ロシア派武装集団へ渡すような武器が紛れ込んでいないかどうか確認しなければ入れないということだ。

それと同時に、この「人道支援部隊」が侵攻への口実になるのではないか、それを軍事同盟であるNATO(北大西洋条約機構)やアメリカは警戒している。すでにロシアの輸送隊が集結を始めたところでNATOは「警報」を出していた。国境線を強行突破することはないとしているロシアは、火曜日にこの輸送隊をウクライナ東部に向けて出発させた。

今週末にかけて280台の車両が国境線周辺に続々と到着することになるが、そこで何が起こるのかが次の焦点だ。ウクライナ政府は、積み荷を国際赤十字の車に積み替えることを要求している。ロシアは、ウクライナに入ったら赤十字に引き渡すとしているものの「積み替え」については何も言っていない。

ロシアとウクライナの国境線には、4万5000のロシア軍が集結しているとされ(いったん兵を退いたが、また緊張が高まるにつれ、再集結した)るだけに、「人道支援」の成り行きがどうなるか注目されるところだ。

実際のところ、プーチン大統領にも打つ手がないのかもしれない。もし親ロシア派武装組織に対して、武器を放棄して降伏するよう説得したときに、それが聞き入れられなければ国際的な権威は大幅に失墜する。

もしウクライナ東部での混乱がプーチンの努力によって鎮静化すれば、欧米のプーチンに対する評価は高まるかもしれないが、ナショナリズムが高揚しているロシア国内での支持率は低下するかもしれない。そうなったらプーチンの今後10年の計画に大きな齟齬が生じる可能性もある。

世界の株価は、イラクとウクライナの情勢を気にして、神経質な動きになっている。限定的なものであってもウクライナでロシアとウクライナの軍事衝突は、足元がまだ覚束ない世界経済にとっては大きな一撃になる可能性もある。

 

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