[仲本千津]<食料問題における日本とアフリカの関係>アフリカの食糧問題は、私たちのすぐ先の未来に直結しているという認識が必要
地平線の先の先まで続くトウモロコシ畑。一面みどり色のサトウキビ畑。ここがどこかと聞かれて、アフリカを思い浮かべる人は少ないと思う。しかし私が暮らすここウガンダでは、今の時期あちらこちらでこのような光景を目にすることができる。今は第一雨期が終わり、ちょうど収穫の時期。農家は朝早くから、農作業に精を出している。
3年前初めてアフリカ大陸に足を踏み入れた時、エチオピアの主食であるテフという穀物の、一面に広がる畑の収穫作業の様子を見て、ここはフランスかどこかの、大穀倉地帯なのではないかと自分の目を疑ったほどだ。
アフリカと聞くと、砂漠や紛争、貧困等、荒廃した環境のイメージが強いが、実際は違う(もちろんそういう場所もあるが全てがそうではない)。実は、世界中から農業のポテンシャルを期待されるほど、今アフリカ各国は農業開発に力を入れている。
ここウガンダでも、政府が打ち出した中長期計画Vision 2040の中で、農業政策は戦略的に重要な分野として掲げられている。特にウガンダの場合、労働人口の65.6%が農業関連従事者であり、GDPの21%は農業分野が占めている。
ではなぜアフリカの農業と日本が関係するのだろうか。実は、人口増加が関連している。国連が出す「世界の人口予測2012」によれば、2050年には、世界の人口の55%がアジア、そして25%がアフリカに集中する見込みだ。その他、アメリカ南北大陸に13%、ヨーロッパに7%。
実際ここウガンダでも、若年層の多さには驚く。それもそのはず、ウガンダは現在年率3.2%と、驚異的な早さで人口が増加している国の一つなのである。つまり2050年には、世界中で生産された食料の大半を、アジアとアフリカで消費する時代がやってくる、ということなのだ。
平野克己ジェトロ・アジア経済研究所地域研究センター上席主任調査研究員によれば、現在も「主に南北アメリカと欧州が穀物を供給して、それを東アジアとアフリカで買っている」というのが穀物国際市場の現状で、つまり穀物貿易においては「東アジアとアフリカの競合関係」が既に存在しているのだ。
仮に食料生産量が、需要に追いつかなくなったとすれば、私たちはアフリカ大陸と食料を奪い合うという現実に直面するかもしれない。そして困ったことに、アフリカの農業生産性はまだまだ低く、現時点で需要に見合った供給を確保できていない。
上述の平野上席研究員は、「農業人口が総労働力の6割もいて、わずか4割の都市人口を養えないところなど、世界でアフリカだけ」と指摘する。そして賄えない食料需要は、輸入という形で補填されているのである。すでにアフリカは世界最大の穀物輸入地域になっている。
今後アフリカ大陸の農業生産性が劇的に改善されなければ、2050年にアジアとアフリカとの間で、食料を巡る争いが起こるかもしれない。こうした事態を避けるため、アフリカの農業を支援し、彼らが自国内で需要に見合った量の食料を生産し、マーケットに供給できるようにすることが急務と言える。
そのためにもまずは、アフリカの食糧問題は、実は私たちのすぐ先の未来に直結しているという認識が必要だろう。
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【プロフィール】
1984年生まれ。大学院卒業後、邦銀にて法人営業を経験。
その後活動の場を国際NGOに移し、現在は内戦からの復興過程にあるウガンダ北部にて、農業バリューチェーン構築プロジェクトに従事している。ウガンダ・カンパラ在住。 頭の中を巡るテーマは、「紛争を経験した地域が、過去を乗り越え、幸せを生み出し続ける場になるには、どうすればいいか」ということ。
趣味はトレッキング。キリマンジャロ登頂が目標。