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.政治  投稿日:2024/9/16

自民党総裁選、選挙の顔は小泉か高市か?


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・自民党総裁選、共同記者会見で高市氏と小泉氏はうまくアピール。

・小泉氏が答えやすい質問をする候補者も。連携を模索か?

・派閥が解散してから初めての総裁選、最後までもつれそう。

 

自民党総裁選、戦いの火蓋が切られた。連日、新聞もテレビもこのニュース一色だ。

9月14日には日本記者クラブ主催で9人の候補者による共同記者会見が行われた。世論調査では、石破茂元幹事長、小泉進次郎元環境相、高市早苗経済安全保障担当相の人気が高い。

とにかく自民党は「政治とカネ」、すなわち裏金問題で評判が地に落ちた。なんとか看板を掛け替えて、野党の体制が整わないうちに総選挙をやって出直したい、その一心だろう。岸田首相が早々に総裁選を諦めた時から、候補者が乱立することは予想ができた。9人とは予想していなかったが。総裁選がこれだけ面白くなったのだから、派閥解消は岸田首相の最大の功績かもしれない。

とは言ってもよくよくみてみると、唯一解散していない麻生派を始め、旧安倍派、二階派の議員が各候補者の推薦人にうまく散らばっており、明らかに決選投票の時、どう動くかを前提に振り分けられている。麻生氏、菅氏の権力闘争の影もちらつく。派閥が無くなったと言ってもそれは形式上の話。各議員から、派閥の色がまったく消え去ったわけではない。

▲写真 日本記者クラブ主催の共同記者会見で発言する小泉進次郎候補(2024年9月13日東京都千代田区)Takashi Aoyama/Getty Images

話を戻して、14日の日本記者クラブでの会見。私は、高市早苗氏と小泉進次郎氏が存在感を示したと思う。

世論調査で「次の自民党総裁」を問うと、常に上位にいる二人だが、小泉氏については、若さ故なのか、経験不足を指摘する声が多い。特に週刊誌やタブロイドは、やれ「進次郎構文」だの、妻の滝川クリステル氏の私生活だの、面白おかしく書き立ててせっせとPV稼ぎをやっている。わかっちゃいるが、まったくもって政治の本質論など関係ないその姿勢には失笑しかない。

その小泉氏は、最初から、政治改革と規制改革、働き方などの選択肢拡大の「3つの改革」を1年以内に実施すると訴えている。そして、自身が総裁選で勝利して首相になれば、早期に衆院解散・総選挙に踏み切ると明言している。

マスコミの論調は、「3つの改革」など、1年以内にできるわけがない、早期解散には大義がない、の2つに絞られている。ようは全否定なのだ。よほど小泉進次郎内閣にはしたくないらしい。

特に「早期解散」について。冷静に考えてもらいたい。自民党は新しい「選挙の顔」が欲しいのだ。それもこの逆風の中で「勝てる」顔だ。9人のうちだれが総裁になれば有権者は自民党に投票してくれるか。自民党の国会議員はその1点で投票する。かれらにとって死活問題なのだ。特に裏金議員はこのままではタダの人になる可能性が高い。その恐怖の中で、どの候補者に投票するのか、今、必死に考えているはずだ。選挙をするなら早期解散がいいに決まっている。じっくり新内閣が成果を出してから、などと悠長なことを言っている候補がいるが、成果なんてそんなすぐに出るわけがない。

危機管理の観点から見てみると、共同記者会見での小泉氏の回答はブリッジングがよく効いていた。意地悪な質問にも自分の主張を繰り返し、みている人に自分の主張を印象づけるのに成功していた。

また、候補者の中には小泉候補に塩を送っているように見えた人も。例えば高市早苗氏は、ライドシェアに対する懸念を小泉氏に質問した。これなど、小泉氏の得意中の得意分野、待ってましたとばかり、小泉氏は、ライドシェアのメリットを強調していた。私は、高市氏があえて小泉氏がアピールしたい質問を選んだように感じた。なぜなら、政策通の高市氏がライドシェアのメリットを知らないわけはないのだ。

▲写真 高市早苗候補(2024年9月14日東京都千代田区)出典:Takashi Aoyama/Getty Images 

茂木氏も政活費で小泉氏と足並みをそろえた。ほとんどの候補が小泉氏をコテンパンにやっつけようとしているようには到底見えなかった。唯一、石破氏が真っ向から早期解散に異を唱えていたが、他の自民党議員はどう思って聞いていたか。おそらく、全く響かなかったに違いない。

いずれにしても派閥のしばりが(ほとんど)無くなった今回の総裁選。混戦には違いない。マスコミお得意の「誰に総理になって欲しいですか」の世論調査の結果も日々更新される。長丁場の選挙故、思わぬ失言で失速する候補者もいよう。どうなるか最後の最後までわからない神経戦が続く。

トップ写真:日本記者クラブ主催の共同記者会見(2024年9月14日東京都・千代田区)出典:Takashi Aoyama/Getty Images




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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